小さな小さな 大冒険!247
同日の朝。
ナツ達は、解放に成功した武器の町アルマの住民達を龍聖の転移ゲートで一気に魔の森に作った拠点へと転移を繰り返していた。
「うむ・・・これ程の広さを・・・末恐ろしいな・・・」
「そう・・・ですわね・・・」
100メートル以上もある街並みが次から次へと穴の中へと消えていく光景を見てナツとソーマが目を丸くする。
「アハハ・・・私は見慣れているから慣れたけどね・・・」
それは、世界を旅してまわっていた時の事。
最初はレイナも驚いてばかりいたが、今となっては懐かしい思い出なのだろう。
「ナッちゃん終わったよぉ~♪」
汗一つかかずアルマの町を僅か5分程で転移させた龍聖が可愛い顔で声を掛けた。
「あ・ありがとう龍聖君♪ 本当に龍聖君は凄いわね♪」
「エヘヘ♪ ナッちゃんに褒められたぁ~♪」
「じゃ~次は古代都市ミステーロね・・・」
「グルル・・・だが、流石にこの街からだと一直線で向かうのはリスクが高いな。」
「そうね・・・最短距離でも200㎞程離れているから迂回したら280㎞位あるかしら・・・」
「あっ!でも龍聖君の転移でアルケミーを中継すれば良いんだわ!」
「グルル・・・そうであったな!」
「さすがはレイナ♪ では、龍聖君お願いしますわね♪」
「あい♪」
どうやら誰かに頼まれる事が嬉しいのだろう。
ニコニコと楽しそうに目の前にゲートを展開させていく。
そして、城壁を残して新地の状態となったアルケミーの地に足を踏み入れるとナツとソーマ、そしてレイナの3人が思わず乾いた笑いを上げてしまう。
「「「ハハハ・・・」」」
周囲を覆う城壁以外何もない。
既に見た光景であっても違和感しかないのだ。
「さ・さてと! ここからなら古代都市ミステーロまで、170㎞ってところかしら?」
「どっちが良いのかしら・・・ここから一直線に目指した方が良いのか・・・それとも強敵がいると予想される商人都市パドロネを大きく迂回するべきか・・・」
「グルル・・・確かにな・・・二つの町からレインベール城の方へと住民が連れて行かれた事を考えると一直線では、敵と遭遇する可能性が高いであろうよ」
「そうよね・・・だったらパドロネを迂回する?」
「そうですね・・・でも・・・昨晩龍徳様が仰った言葉が気になりますわね・・・」
「確かに・・・シュッテンブルク王国の話でしょう?」
「ええ・・・」
それは、昨晩の続き・・・
「なるほどな・・・レインベール城の方に住民が連れて行かれているか・・・単純にレインベール城が残っていて修復工事に人が足りないのか・・・それとも別の用途で連れ去られているのか・・・」
「残る、ミステーロとパドロネからも同じ様に住民が連れ去られているんでしょうね・・・」
「ふむ・・・それに関しては、ちょっと嫌な予感もするんだがな・・・」
「嫌な予感ですか? それはどう言う事なのでしょうか?」
「いや・・・先程の数十年前に滅んだシュッテンブルク王国の王子の話を聞いてしまったからな・・・」
「どう言う事ですか?」
「う~ん・・・ナツには悪いけど詳細を聞くまでは、住民の大半は強制労働か死んでいる可能性の方が、高いと思っていたんだ・・・だが、実際には、そこまでに至っていない・・・そこに違和感があってね・・・」
「違和感?・・・ですか?」
「ああ・・・シュナイダーがシュッテンブルク王子であったと言う事は、レインベールに想像を絶する恨みを持っているのは間違いない・・・だからこそ国民の大半を殺していると思ったんだ・・・だが、話を聞くに殆ど無事だろう?そうすると何かしらの理由がある訳だが・・・」
「100万人近くいる住人を殺すのが、大変だったんじゃないですか?」
「う~ん・・・それはないかな・・・何故なら古の魔物を100体以上復活させて攻め込んで来たんだぞ? そんな敵に襲われれば、どの町も一溜りもないはずなんだ・・・それが無事って事は全面降伏させるだけの何かがあったって事になる・・・」
「グルル・・・確かにな」
「そうなると最初から別の目的がある訳だが・・・」
「以前、龍徳さんが言っていたように巨人の世界へ進出する為ではないですか?」
「ふむ・・・それもない訳ではないだろうね。でも一般市民全てに巨大化の魔道具を用意するのも難しいだろうし、ナツなら分かるだろうけど小人の状態から巨大化すると最初はまともに動けなかっただろう?」
「確かに・・・そうですわね・・・」
「って事は、小人の国で何かを建てさせる為か何かを発掘させる為の人員確保と考えた方が良いだろうな。」
「「「なるほど・・・」」」
「建物を建てさせているのであれば問題ないが、もし、何かを発掘させているとなると・・・」
「グルル・・・そうまでして必要な何かがある・・・と言う事か・・・ふむ・・・レインベールは神が守った最初の地・・・何か秘密があるのやも知れんな・・・」




