小さな小さな 大冒険!240
ただでさえ、ギリギリの状態で身体を支えているのに支えとなる崖に指が掛かっていないのだ。
当然、振り子のように自分の身体が大きく傾き、もう片方の身体を支えている指が離れてしまう。
「クッ・・・マズい・・・このままでは・・・と・止まれ~~!!!」
絶壁に指を触れて少しでも引っ掛かる様に慌てて壁を触るが、ズザザザザァァァ~っと落ちていく。
「引っ掛かる部分が少な過ぎる・・・止まってくれ・・・・」
そして、100メートル程落ちて辛うじて身体が止まった。
ドキドキするなんてものではない。
いくら強くなったとは言え、魔法を使えない状況で1000メートルもの高さから落ちてしまえば無事で済むはずが無いのだ。
「はぁぁぁ~・・・・マジで焦った・・・」
そして、気を取り直して再び登り始めるが、流石に体力がきつくなっていく。
「最低でも後4時間は登り続ける事を考えると・・・かなり厳しいな・・・下の方は楽だったんだがな・・・まさか上が此処まで絶壁だとは思わなかったぞ・・・」
そうなのだ。下の部分は意外と手足が引っ掛かる部分もあったのだ。
それが、登れば登る程無くなって行き400メートル程登ると指を掛けられる場所しかなくなっていたのだ。
それでも、600メートル位までは、真上に登れていたのだが、そこからが厳しかったのだ。
なので、100メートルも落ちた事は、流石に龍徳を苦しめた。
「はぁはぁはぁ・・・キツイな・・・」
モクモクと登り続けやっと先程の場所まで戻って来たが、同じ場所を通過するかどうかを悩んでしまう。
『それにしてもツイてない・・・ここまで頑丈な岩が簡単に崩れるとは・・・ん?・・・簡単に?』
っとここで、ある可能性が浮かび上がった。
「もしかして・・・この部分だけ違う素材なのか?」
そう思うと試さない訳にはいかない。
最初はそぉ~っと突き出た部分に指をかけユックリとユックリと力を掛けていく
すると、またしてもパキンっと砕け散ったのだった。
「オッと・・・」
最初から可能性を考えているのだから体勢を崩す事はない。
「やはりな・・・さて・・・どうするかな・・・」
そして、腰袋から短剣を取り出すと色の違う部分に突き刺す。
「良し!これならいける!」
ガッ!ガッ!ガッ!っと何度も同じ部分に短剣を突き刺して次々に岩を砕くと
「意外と深く惚れそうだな・・・」
その作業を繰り返し、固い部分と脆い部分がハッキリ浮かび上がる様に何度も穴を掘り続けると
「良かった・・・頑丈な壁の方に出っ張りがある・・・」
掘り続けた部分に手を突っ込んで確認をしては、また掘ってを繰り返していたら下の頑丈な岩の部分にシッカリと指を引っかける窪みがあったのだ。
グッ!グッ!っと何度も力を入れては問題ない事を確認すると両足を崖に突っ張り右拳を変色した崖へと叩き込む。
ドゴン!っと言う音と共に大きく崖に穴が開いた。
「予想通りだ!この崖なら俺の拳の方が硬い!」
そして、ガトリングの様な拳の弾幕を放つと凄まじい勢いで崖に穴が開いて行った。
そして、両手がかかる事を確認すると今度は蹴りを放って盛大に穴を開けて行く。
さらに大きく穴が開くと左手で身体を支えながら、片足を崖の上に乗せて右腕で強引に崖を持ち上げた。
「ふぬぬぬぬ・・・おりゃぁぁ~~!!!」
ベキベキベキっと壁に亀裂が入り大き目の岩がボロボロ崩れて行く。
「良し!良し!!良し!!!」
崩れた岩によって穴が塞がったが、それを片手でドンドン落としていくとかなり大きめな穴を開ける事に成功したのだった。
「はぁ~疲れた~・・・これは舐めてたな・・・」
バタンっと横になっても大丈夫な程の穴が掘れたので、暫し休憩を取る。
想像以上に限界だったのか良く見ると龍徳の腕がピクピクと痙攣している事が分かる。
身体能力だけで登るのだとしてもある程度突起のある絶壁であれば、1時間とかからず登り切る事が出来たのだろうが、流石に指先だけしか掛けられないとなれば話が違う。
場所によっては、1㎝程の突起を指で摘まんで登らざるを得ない場所もあったのだ。
確かに今の龍徳の身体能力は、人間離れしている。
ここで、龍徳の身体能力の一部を開示する。
走力85㎞、 パワー、480㎏、握力260㎏、パンチ力1350㎏
これが、小人状態だと走力56㎞、パワー320㎏、握力174㎏、パンチ力900㎏である。
この数値は、巨人状態でも異常な数値だと言えるだろう。
1年前の戦いの時でさえ、身体強化を使用して時速30㎞だった事を考えるとすさまじい成長と言えるだろう。
修行の結果、巨人状態の3分の2程度まで力を発揮出来るようになった事で、小人の世界であれば体感的に40倍の数値になる事を考えれば、どれだけ凄まじい身体能力かが伺い知れる。




