小さな小さな 大冒険!238
「今度はこちらの攻撃を喰らうが良い!! ライオネットフレア!!」
その瞬間、真っ赤な鬣が灼熱の炎と化してカッ!っと光った瞬間、炎を纏った光線が、ソーマを襲った。
「ウイングシールド!」
バサッと自分の翼で身をくるむと通常の防御結界とは別に翼が光り輝きソーマを護る。
ゴォォォ~~っと凄まじい威力があるであろう光線がソーマに当たると大爆発を起こした。
「どうだ!一溜りもなかろう!!」
モクモクっと煙が立ち込めるが、突如竜巻に吸い込まれるかの如く煙が消えた。
「グルル・・・なるほど・・・この防御は使えるな・・・」
「馬鹿な・・・あの高熱で無傷だと!?・・・有り得ん・・・有り得んぞ!!」
「グルル・・・龍徳が言っていた通りであったな・・・貴様・・・もう少し吾の練習に付き合ってもらうぞ・・・」
「ふざけた事を・・・死ね!キングオブティアー!!」
今度は前足を掲げて打ち下ろすと爪先から凄まじい真空波がソーマを襲う。
「フン!」
ソーマが自分の前で両手をクロスさせて打ち下ろすと同じ様な真空の刃が発生してガビルと真空波とぶつかり合い消滅した。
「馬鹿な・・・」
「悪いが、もう一発だ!ドラゴンバレット!」
そして、今度は直径16メートルもの巨大な弾丸が放たれた。
「グアッ・・・」
ドスドスドスっと貫通する程ではないが、かなり深く突き刺さっている。
「こんなもの・・・何ともないわぁ~!!!」
カァッ!っと身体全体からオーラが吹き上がるとソーマの放った魔法が消え去った。
「はぁはぁはぁ・・・魔法では分が悪いようだな・・・お前達は知らないだろうが・・・この姿の俺の力は結界の影響を受けんのだ・・・ガルルルル・・・純粋なパワーの前に死ぬが良い!!
その会話が聞こえていたナツがハッとする。
『なるほど・・・ソーマ様を例に挙げれば獣化より獣人化の方が強いのにガビルが獣化を選んだ理由・・・レイナさんが戦った敵もそうでしたが・・・巨大化すれば結界の影響を受けないんだわ・・・』
その瞬間、ガビルが地面を蹴ると大地に大きなクレーターを残し一瞬でソーマの眼前に姿があった。
「速い!! クッ・・・グハッ・・・」
「ソーマ様!!」
凶悪な牙から逃れるもこれだけの巨体によるタックルを回避出来ずに鼻先に押し潰される様にそのまま洞窟内の壁へと突進される。
ここで、ガビルの身体能力を見て見よう。
先程、ナタリーが言っていた獣人族のパワーとはあくまでも獣人化した状態の話。
獣化では、精々5倍なのだ。
獣化は魔物本来のパワーが基本的な能力である為、細かい魔力のコントロールは出来ない。
だが、東の結界の封印が解かれている為、巨大化する事で、本来の能力を損なう事がないのだ。
形を変えてみれば、何もせずとも身体能力が40倍になると言う事。
そして、現在のガビルの速度は時速250㎞。
これは、小人状態で時速10000㎞を指す。
体感速度マッハ8もの速度でタックルされてしまえば、流石のソーマと言えど回避しようがなかったのだ。
『知覚認識速度100倍!』
ガビルのタックルを喰らった瞬間ソーマもナツと同じ様に魔法を発動させた。
『流石にこの質量と速度の攻撃では大ダメージを負ってしまうな・・・チッ!油断した・・・もう少し練習したかったのだが・・・仕方がない・・・』
「死ね!ドラゴンブレイド!!」
ソーマが両手を広げると左右共に5本の指先から50メートル以上はある光の剣が現れ、ガビルの鼻先で交差させる様に腕を振った。
「?・・・」
「終わりだ・・・」
「何を言って・・・はぁ?・・・な・何だ・・・し・視界がズレて・・・」
余りの切れ味に自分が切られた事さえ気が付かなかったようだ。
自分の突進速度の風圧によって徐々にガビルの身体がズレて行く。
「はれ・・・なんで・・・ギャァァァ~!!!」
ブシュゥ~っと大量の血を噴き出し細切れにされ絶命したのだった。
「勿体ない事をした・・・」
バサバサっと地面へと降りて行くソーマの元にナツが駆け寄ってくる姿が見える。
「お疲れ様でした。」
「グルル・・・もう少し練習した方のだが・・・」
「今の場合は仕方がありませんわね・・・ですが、獣化のパワーが侮れない事は分かって良かったかと・・・」
「ふむ・・・予想はしておったが、全力とは程遠いドラゴンブレイドであそこ迄とはな・・・」




