小さな小さな 大冒険!218
「流石に10倍以上って・・・凄惨な戦争だったようね・・・」
「グルル・・・だが、中立を守っていたとされるシュッテンブルクはどうなんだ?」
「その戦争が余りにも凄惨だった事で魔導国家シュッテンブルクがレインベールに抗議した事が、きっかけだったそうです・・・ですが、文献にはシュッテンブルクが勢力拡大の為に反旗を翻したと書かれておりましたわね・・・」
「なるほどね・・・自分達の都合の良い様に書き記したって事ね・・・」
「そのシュッテンブルクとの戦争でさえ今から40年程前の事だそうですから・・・」
「そんな最近の話だったの?」
「ええ・・・文献には10年もの長きに渡って続いたと・・・」
「ふむ・・・戦が続いた事で逆に長引いたという事なのかも知れんな・・・」
そう言って何かを深く考える時の龍徳の癖で口元に手を当てて暫く何かを考え始めている。
「神谷部長どうされたのですか?」
「いや・・・やはり商人都市パドロネは最後にした方が良いと思ってな・・・」
「そう言えば・・・以前にもパドロネが最前線で戦っていたってアキが言っていた事がありましたもんね・・・」
「ああ・・・もし、敵が滅んだ国の生き残り・・・特に貴族や王族に連なる物であった場合、レインベールはもとよりパドロネも憎しみの対象となるだろうからな・・・」
「グルル・・・慎重に事を進めるのであれば、龍徳の言った通り調査していった方が、良いであろうな。」
「そうですわね・・・」
「まだ何の情報もないからな・・・だからこそ魔の森の出口から動いた方が、都合が良いはずだ。」
「分かりました!」
「そうですわね・・・」
「頼むぞ龍聖殿!」
「あい♪」
ってな事があったのだ。
「では、アルケミーを目指すとしましょう。」
そう言ってレイナが魔力探知を最大に広げながら草原を走り出す。
「龍聖君、次は私が肩車してあげますね♪」
「あい♪」
そう言ってレイナに肩車されている龍聖に声を掛けるナツも魔力探知を最大に広げたのだった。
「グルル・・・どうやらアルケミーには、古の魔物の気配はないようだな・・・」
「そうですわね・・・このまま一気にアルケミーを目指しましょう。」
「でも!魔力の消費は最小に抑えてよ!敵の魔力探知に引っ掛かるかも知れないから!」
これも、昨日の作戦会議で注意された事だ。
「グルル・・・ここからアルケミーまでは、ざっと80㎞と言ったところか・・・」
「以前の龍徳さんに計測して貰った走力だと・・・私が最大時速10㎞・・・小人状態で時速400㎞だから・・・平均で時速200㎞ってところかしら・・・」
「私は最大時速9㎞だから現在は時速360㎞・・・長距離を走るとなると・・・精々時速180㎞と言ったところですね・・・」
「グルル・・・なら、ナターシャ姫の速度に合わせて普通に進めば、30分程でアルケミーに着くな。」
「
「フフ・・・」
「どうしたのナツ?」
「私ったら不謹慎ですわね・・・でも・・・この私が、80㎞もの距離を身体強化も使わずに僅か30分で走破出来る様になったんだなぁ~って思ってしまいまして・・・以前なら考えもしなかったので・・・」
「あぁ~そう言えばそうよね・・・以前なら魔物も倒したからと言っても身体強化を使って2時間はかかったもんね・・・それを30分も掛からないって・・・確かに笑えるかも♪」
そう言ってレイナも笑い出した。
「クスクス♪ でも・・・15日前に龍徳様に言われた事が今ならハッキリと分かりますわ・・・確かにあの時の私ではハッキリ言って足手纏いでしかありませんわね・・・」
これは、以前のナツであれば、同じ場所からアルケミーまで身体強化を使用しないで向かうとなれば、5時間以上かかる事を意味していたのだ。
「確かにね♪ 以前のナツだったら時間が圧倒的に足らなかったかも・・・でも!今のナツなら・・・」
「ええ!必ず生き残っている民を救って見せます!」
「グルル・・・そろそろアルケミーが見えてきたぞ・・・このまま入国して良いのか?」
残り10㎞程はあるが、ドラゴンであるソーマの視力にはハッキリとアルケミーの砦が映っている。
「流石はソーマ様ですわね・・・」
「魔力探知には沢山の人々の反応があるわね・・・それに・・・この反応は何かしら?」
「私もそれが、気になっていました・・・距離が近づいたおかげでハッキリと反応が出たので・・・」
それは、アルケミーからレインベール城があった方へ続く小さく弱い反応が数多く現れたのだ。
「グルル・・・どうやらアルケミーの市民の反応で間違いないであろうな・・・」
「町の中にも少し大きな反応が・・・全部で5つ・・・」
「私達の様に魔力を抑えている可能性もありますから・・・否、強者であると考えた方が良いかも知れませんね」




