小さな小さな 大冒険!207
「えっと・・・これで宜しいでしょうか・・・龍徳様・・・いらっしゃいますか?」
「今度はナツか♪どうした?」
「龍徳様・・・この特訓・・・観察力であっていますか?」
「ほぅ~どうしてそう思ったんだ?」
「階層が刻まれている事に気が付いたからです。」
「クスクス♪・・・で?ナツは今何階層なんだい?」
「って事は・・・やっぱり!既に地上にいらっしゃるんですね!」
「さぁ~どうだろうな? 悪いがノーヒントだ♪」
「やっぱり・・・私は現在819艘です・・・それを考えると・・・これは、第一の試練と同じって事だと思いますが如何でしょうか!」
「何でそう思ったんだ?」
「簡単です!私は、全部で100階層しか階段を上っていませんので・・・」
「なるほど・・・ふむ・・・ナツなら期限内に辿り着けそうだね♪」
「そうであれば良いのですが・・・今日は・・・もう限界なので休みます・・・」
『なるほど・・・身体強化だけじゃなく結界も最大にして登って来たんだな・・・』
「クスクス・・・ナツなら分かるかもな♪ 頑張れよ!」
「はい!頑張ります!」
そう言って無線を切ると少ししてソーマから連絡が入って来た
「ヌォォォォ~!! どうなっておるのだ~このダンジョン!!」
「うるせえ! 何がだ!」
「既に170階近く登ったのだがいつまで続くのだ!!」
「どうだろうな? それよりもレイナとナツは抜けたのか?」
「うむ!2人はスタートして1時間位で追い抜いてやったわ!!」
「で?お前はまだ休憩しないのか?」
「当然であろうが!!」
「そうか♪ じゃ~頑張れよ♪」
「ちょっと待て!お主・・・もう休憩しておるのか?」
「ん?・・・」
チラッと時計を見ると時刻は19時30分。
「そうだな・・・1時間以上前から休憩しているな♪」
「グルル・・・グッフッフ・・・今回は吾の勝ちのようだな! お主には絶対に負けん~!!」
そう言って無線が切れた。
「やれやれ・・・アイツ・・・力押しで昇ってきそうだな・・・まぁ~良いか♪」
そう言ってキッチンに行くと料理を作り始めた。
「今日は龍聖の好きなものを作るか♪」
そう言って手際よく料理を作っていると龍聖が戻って来た。
「パパァ~お腹減ったぁ~」
「もうすぐ出来るから手洗いとうがいをしておいで♪」
「あい!」
その後、久しぶりの親子水入らずの時間を過ごす。
2人で食事をして2人でお風呂に入り、歯磨きを終えると布団に入って龍聖に本を読み聞かせて寝かしつけた。
「やっと寝たか・・・パパの宝物・・・」
そう言って慈しむように我が子の頭を撫でる。
「幸せだなぁ~・・・龍聖・・・愛してるよ・・・」
そう言って龍聖のおでこにキスをして、そぉ~っと布団から出るとリビングに戻り久しぶりに缶ビールを取り出すと玄関を出てウッドデッキで飲み始めた。
「プハァ~♪ 旨い♪ ふぅ~・・・」
水の魔法でリクライニングソファーの様な物を作って横渡りながら何かを思い出す。
「ナツミ・・・やっぱりお前は特別だったんだな・・・逢いてぇ・・・フッ・・・俺も大概に女々しいな・・・」
『ダメだな・・・この戦いが終わったところで・・・レイナ君を選ぶ事はないな・・・期待を持たせるような事を言ってしまったな・・・悪い事をした・・・』
試練で見て、龍聖の話を聞き、神から運命を教えてもらったのだ・・・
出会うべくして出会った女性。
7年の歳月がナツミの記憶を徐々に薄れさせていたからこそレイナの想いに応えようと思い始めていたのだが、今も尚、ナツミの事を愛している事に気が付いてしまった。
龍徳がいくら優れていようが、心は普通の人間なのだ。
最愛の女性と愛し合った記憶・・・その女性を守り切れなかった記憶・・・
それをハッキリと思い出してしまった。
ナツミを看取って7年。
龍聖は自分の命より大切だ。
それと同じくらい大切だった女性・・・
子を持つ親であれば気持ちは痛いほどわかるだろう・・・
時には、子供以外の温もりを求めてしまう。
『参った・・・流石は試練っと言うだけの事はあるな・・・これは・・・キツイや・・・』
灯りに照らされた自分の顔を手で覆っているが、その頬には一滴の涙が零れていた。




