小さな小さな 大冒険!197
だが、この世界には相克と言う仕組みがある。
要するにメシアが現れる時は必ず悪の意志を持つ者が現れると言う事だ。
これは、隕石によって突然変異してしまった人類が生き延び独自の文明を築いた事で、人間でありながら人非ざる存在として今も尚、生き続けているようだ。
お主は記憶が封じ込められているせいか思い出せんようだが、恐らくアストゥーと言う者は、今までお主が退治した魔の者であろう。
残念な事に一度私の手から離れて独自に進化した生物は私にも把握出来ん・・・
だが・・・凡そ1000年単位で大きな事象が起きていた事を考えると・・・恐らく今回も何かを企んでいる可能性は高いであろうな・・・。
こうして、数千年をかけてお主と私は語らい続け、この場所を結界で覆ったのは今から3300年前の話だ。
当時、この場所には200人程度の集落があったのだ。
幸いにも富士は霊峰と呼ばれるに値する力を持つ神山へと成長してくれた為、古くからドラゴンと人類の調和が保たれていた場所の一つだった。
その為、古竜だけではなく当時の族長に新たな力を与える事にしたのだ。
それが、精霊だ。
これによって通常の人間では有り得ない魔法を使用する事が出来るようになっていったが、私の予想通りこの村の民たちは人々を守る為に魔法を使い続けてくれた。
この集落に集う人間達は慈愛の心を持った民が多く、この世界で数少ない私が姿を現す事が出来た場所だ。
その民を守る為に私は族長に授けた大精霊に力を与え、村を守る四方守護陣の結界を張る事にした。
だが、ある時何者かが霊峰富士にアマテラスを投げ込んだのだ。
それによって富士は活火山溶かし大噴火を起こし次々に周囲の山でも大噴火が巻き起こってしまった。
この時の魔の者を倒したのもお主なのだがな・・・
何にしても結界のお陰で、この場所の民だけは守られたが、所詮400メートル四方の集落だ。
周囲が焦土と化し毒ガスが蔓延する場所で、そう長く生きていられるはずもないと新たに風の大精霊を与え、この集落を完全な亜空間とする結界を新たに付け加えたのだ。
これによって、この空間だけ40倍の広さとなった事で、村の人間達は独自に成長し続けてくれた。
だが、元から小さな川が流れていたが、亜空間となったせいで川の水が流れなくなってしまったのだ。
その為、巨大な岩盤を隆起させて東の結界より水が流れ落ちる仕組みを追加したのだ。
それが、現在、死の大地と呼ばれる場所だ。
この場所に動物がいる事で、生態系が維持される事になった。
だが、それを維持する為に守護竜であったドラゴンの力を使う事となったのだ。
古竜とは言え通常の10倍以上の速度で弱体化してしまう事を受け入れたドラゴンは眠りについた。
だが、ドラゴンの魔素が溢れ出す事で、森は生い茂り土壌豊かな大地が出来上がったのだ。
これによって水不足や食糧問題が解決されたと思っていたのだが・・・
それから数百年後に新たな危機が起こってしまった。
ある意味、他の世界と根絶してしまった事で、人口が増えすぎてしまったのだ。
大精霊を使役できる優秀な者だけが、試練の洞窟の資格を得る事が出来るのだが、本来一度しか挑戦できなかった試練の洞窟も結界の中に組み込んだ事で、中に住む民たちだけは、何度でも挑戦する事が出来てしまったのだ。
その為、聖女と呼ばれる様になる者達が、どの時代にも必ず一人は現れる様になった。
その存在によって、この村の中だけは病気と無縁の場所となってしまった事も人口爆発の切っ掛けとなったようだ。
僅か200年程で、200名だった人口が10万人を超えてしまい16㎞四方の土地では食糧問題が起きてしまったのだ。
この頃には、下界となった周囲の場所も溶岩が固まり安全と判断した私とお主は、結界の一部から外の世界へと出られる仕組みを追加する事にしたのだ。
これによって、半数の民が外の世界へと旅立ったのだが、周囲は険しく結界の外で野畑が作れるような場所は存在しなかった。
その為、一度は外の世界へと出向いた者達も、国となった現在のレイベールへと戻って来てしまった。
かと言っても食糧問題が解決された訳ではない。
そして、悲しい事にこの場所でも争いが始まってしまった。
これを解決させる方法が、小人化だった。
これは、お主と私の間で再三話し合ったのだが・・・何せ争いが始まってしまった事で時間があまりなかったからな・・・中途半端な大きさだと意味がないと当初は人間の10分の1程度のサイズを考えていたが、そこまで小さくするとなると他の生物とは戦えないのでは、と言う問題が出てきてしまった。
そこで、お主が私の代弁者となってレインベールの民たちと話し合い弱体化する代わりに魔法のプロテクトを解除する事を条件にしたのだ。
だが、昔の教訓から10分の1のサイズでは、プロテクトを解除する事を良しとしなかった私が出した条件が人間の40分の1とする事であった。




