小さな小さな 大冒険!195
「お主・・・ドルオーラを使えたのに記憶が戻らんのか?」
「どう言う事でしょうか?」
龍徳のセリフに神が訝しげに龍徳を見つめた。
「ふむ・・・お主・・・記憶を封印されておるな・・・」
「記憶を封印?・・・何の事だ・・・何の事ですか?」
「ええ~い!面倒臭い奴め! 普通に話して構わんと言っておるであろうが! 兎に角! お主の記憶が戻らんように何者かによって呪いがかかっておると言う事だ!」
そう言われてもピンとこない
「生まれてからの記憶は全部覚えている・・・何かの勘違いじゃないのですか?」
「馬鹿者!私の言いたい事は、お主のメシアとしての記憶の事だ!」
「メシアの記憶?・・・なんだそれ・・・」
「ぱぱぁ~?メシアってなぁ~にぃ~?」
「ふむ・・・これは面白い・・・どうやらお主の子にも力が宿っておるようだな・・・」
「ねえねえ~! ターキリスちゃん教えてよぉ~! メシアってなぁ~にぃ~?」
「ふむ・・・メシア・・・要するに人知の及ばぬ危機を退ける為に存在する救世主と呼ばれる存在の事だ。」
「難しくて分かんない・・・」
「ふむ・・・簡単に言えば人間の危機を救う為の存在だ。」
「ほぇ~♪ パパカッコいい~♪」
「ちょっと待て・・・今・・・龍聖にもって言ったよな?」
「ほぅ~ようやくお主らしい喋り方になって来たではないか♪」
「クッ・・・そんな事よりどう言う事だ?教えてくれ!」
「うむ。本来では有り得ん事だが・・・間違いなくお主の息子にメシアの力が宿っておるな。」
「やったぁ~♪ じゃ~ボクもパパみたいに金色のオーラ出せるようになるかなぁ~?」
「それは分からん・・・が・・・可能性はあるかも知れん。」
「ケチ~!!」
「そう言う問題ではないのだが・・・本来メシアは、時代に一人と決まっておる・・・ふむ・・・これもお主の記憶が封じられている事と何かしらの因果があるようだな・・・」
「話が全く見えないのだが・・・」
「ふむ・・・記憶が戻っておらんのだから無理はないな・・・では少々長くなるが昔話をしてやるとするか・・・」
そう言ってターキリスが話を始めて行く。
先ずは、この世界の人間の価値について話をしよう・・・
今より約15万年前の事、人間の世界は一度滅んだのだ。
今のこの世界と比べ人間の数こそ少ないが、科学と魔法が融合した素晴らしい世界であった。
その頃の地球の姿は3つの大陸で出来ていたのだ。
ところが、巨大隕石が地球に落ちた事で、生態系が劇的に変化してしまった。
巨大隕石と言っても直径100~500メートル程度の隕石だが、何十と言う隕石が降り注いだことで、1万年は暗黒の時代となってしまった。
ある者は魔法で、大地に身を隠し、ある者は海の中へと身を隠した。
地上でも運良く隕石による爆発の被害や高波や洪水による被害から難を逃れた者達もいたが、食べるものがなければ生物は生きていけない。
そして、この隕石の中に眠っていた未知のウィルスによって生き延びた人間が徐々に変異し始めて行ってしまった。
今の様に発展した世界であれば神の存在は理によって介入する事が出来なくなってしまうが、その頃の私は頻繁に人間を救おうとしていたのだ。
だが、神と言っても広大な世界の人間を全員救える程、全能ではないのだ。
そして、何万年もの時間を掛けて新たに人間を想像する事に成功してのだが、その世界はそれ以前の生態系とは大きく異なっていた。
大昔の恐竜と呼ばれるような大きさの生物が闊歩する時代。
いくら魔法が使えると言っても絶対数に差があり過ぎたのだ。
その為、人類を護る存在として新たに生み出したのがドラゴンと呼ばれる種族だ。
これが、今から10万年も昔の話だ。
数千年間は人間とドラゴンとの間に良い関係が築かれていたのだが、年月と共に知恵を付けて行く両者の間に溝が出来始めた。
その間に人類の数も10万人以上に増えたのだが、それでも隕石によって変異した怪物となった生物たちは圧倒的に強過ぎたのだ。
しかも交配によってどんどん新たな生物が産み落とされてしまい、いつしかドラゴンの数も10体程となったのだが、人類も命を育み守る為に生活の場所を自分達で変えて行くようになっていった。
その為、少数民族となった場所を護る程のドラゴンを用意する事は出来ないと判断した私は、人間に当たらな知恵を授ける事にした。




