小さな小さな 大冒険!174
「この女共を余の前で殺せ! そうすれば、貴様の妻を助けてやろうではないか!」
「グッ・・・き・きさま・・・」
「クックック・・・何を迷っておる・・・簡単な事であろう?」
ナツミは龍徳が愛し救えなかった妻。
一方ナツは、龍徳の夢を叶えてくれた恩人だ。
そして、レイナは現在、龍徳の心を動かし始めた女性。
例え幻覚だと分かっていても殺せるはずがない。
奇しくもナツと龍徳の試練の内容は、最愛の者やお世話になった者達だったからこそ、2人共難航してしまったのだ。
レイナもクリアするまでに1時間近く要したが、ナツと龍徳は既に2時間が経過していた。
「龍徳さんが、クリアできない試練・・・ナツも心配だけど・・・・」
「グルル・・・恐らく、守る者が多い程苦しむのかも知れんな・・・」
「パパ・・・がんばれぇ~!」
「これは余程の事なのかも・・・意味がないかも知れないけど・・・応援しましょう!」
「うむ・・・龍徳には世話になっておるからな・・・」
「ボク・・・パパのところに行って来るね!」
っと龍聖が龍徳のところに駆け出すと
「そうね・・・だったら私はナツのところに行くからソーマは龍徳さんをお願い!」
「うむ。了解した!」
そして、ナツは糸口の見えない逃亡を続ける。
「この状況で・・・どうやって慈愛の心を・・・」
『龍徳様・・・私はどうしたら良いのですか・・・』
だが当然、龍徳の声は聞こえない。
「レイナ・・・貴方だったらどうするの・・・」
ナツとレイナの性格は正反対の様に思えるが、2人も根底にあるものは同じなのだ。
だからこそ、互いに認め合い友となった。
レイナであったらこの状況で何と言うか・・・
その時、ナツの耳にレイナの声が聞こえた気がした。
『あんた何やってんのよ!何があったか知らないけど・・・ナツには守るべきものがハッキリしているでしょうが!! 何を悩む必要があるのよ!! 逃げるんじゃないわよ!! あんたは龍徳さんが認めた女性の一人なんだからね!!』
「フフ・・・そうでしたわね・・・こんな私でも龍徳様は褒めて下さいました・・・逃げ回る私に立ち向かう力と勇気を与えてくれた人・・・こんな私に期待してくれるお方・・・ええ・・・そうですわね・・・これ以上・・・龍徳様を裏切れませんわね・・・」
その瞬間、凛としたナツの魔力が、吹き荒れた。
「我が名は!ナターシャ! ナターシャ・ディナスティー・レインベール!! 皆の悲しみを背負い!民を救う為に戦う王としての責務がある!! だからこそ!憎しみに愛を持って戦う!!」
≪お主の命の在り方見事なり!≫
っと景色が元に戻って行く。
「ナツ!良かったぁ~・・・」
っとレイナは安堵の表情を浮かべた。
「ご心配おかけしましたね♪ でも・・・もう大丈夫です♪」
「別に!心配なんかしてないし!」
照れ隠しなのか、どうやらライバルだと思っているナツには知られたくないらしい
「クスクス♪ そうですね・・・でも・・・ありがとうレイナ♪」
そして龍徳は・・・
「殺せないのであれば、余が2人共殺してやろう!!」
「龍徳様・・・私を殺して下さいませ・・・」
「馬鹿な事を言うな・・・」
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