小さな小さな 大冒険!172
その3000年が、神谷龍徳と言う存在によって一瞬にして崩れ去ったのだ。
強敵と書いて友と読むとはよく言ったものだとソーマは思った。
生まれ出でて初めての友は、最弱だと思っていた人間であった。
「グルル・・・矮小の・・・否・・・人間は我が友であるな・・・良かろう!その願い吾が聞き届けよう!!」
っとソーマが声を発した瞬間ソーマの景色は命の試練の場所へと戻っていた。
すると、先程の声が響き渡った。
≪汝の慈愛と命の在り方見事であった。これにて命の試練を終了とする。≫
「グルル・・・これが試練・・・ふむ・・・簡単であったな。」
そして、周囲を見渡すと龍聖の姿が見えたので、直ぐに近寄って行った。
「龍聖殿!もう終わっておったのか?」
「ソーマ君♪ う~ん・・・何か簡単に終わっちゃった♪」
っとアッサリと言うがソーマも同じ。
「そうであるな・・・正直拍子抜けな試練だな。」
「ねぇ~♪ みんな早く終わらないかなぁ~♪」
この試練は純粋な龍聖にとっては何の意味もない試練だったのだ。
片親とはいえ、龍徳の愛情を一心に受けた龍聖にとって見返りを求めない愛は当たり前のものなのだ。
その為、始まって数秒で試練が終わったのだった。
そもそも!この試練は子供が受けられる程、簡単なものではないのだ。
っと言うかそもそも、子供が辿り着ける場所でさえない。
それどころか、大人であっても辿り着ける場所でさえない。
限られた極一部の否、天才と呼ばれるような者達の中でも、ほんの一握りの人材が苦労の末、辿り着く場所なのだ。
要は、純粋とは何か・・・慈愛とは何か・・・それを持つ者もしくは思い出す事が出来るものだけがクリアできる試練であるのだから龍聖にとって最初から必要のないものだった。
3番目にクリアしたのはレイナだ。
レイナに見えた光景は、決して自分に振り向く事がない龍徳に次々に言い寄る女性たちの光景。
その中の一人と付き合い始めた龍徳が、その女性と結婚してしまうと言った内容であった。
苦しくて・・・胸が締め付けられレイナは泣き続けた。
それと同時にレイナの周りには、沢山の男性がプロポーズする。
龍徳が目の前で他の女性と幸せそうに過ごす中、レイナは全てのプロポーズを断り続けた。
目の前で何度も何度も最愛の龍徳が他の女性にしか向けない微笑みを見ては、涙が落ちる。
切なく苦しい時間が過ぎレイナの心はボロボロになっていく。
そんな中、龍徳から届いた一通の手紙が披露宴の招待状であった。
「うぅ・・龍徳さん・・・やだ・・・ウエ~ン・・・辛いよぉ~ウエ~ン・・・寂しいよぉ~・・・」
披露宴の席上で、妻となる女性に向けて幸せそうな笑顔を向ける龍徳を最悪な気分で見つめるレイナ。
そして、レイナの席に龍徳がキャンドルサービスにやって来た時だった。
「神谷部長・・・」
今にも消え入りそうな声で呟くと
「今日は良く来てくれたね。」
っと以前自分に向けられていた微笑みを久しぶりに見た。
「神谷部長・・・幸せになって下さいね♪」
自分の愛した男性の結婚式。
とてもじゃないが、まともな精神状態ではいられない。
龍徳の顔を近くで見たら大声で泣いてしまうと思っていた。
だが、実際には本気で愛したからこそ龍徳の幸せを願ってしまったのだ。
その瞬間、景色が元に戻っていた。
「今の・・・試練だったんだ・・・」
ホッとしたのか試練が終わった後のレイナは安堵からか龍聖達がやって来てからも暫くの間、泣き続けたのであった。
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