小さな小さな 大冒険!168
まだまだ、龍徳の方が強いとは言え、瞬間で莫大な魔力を放つ事が出来るソーマのドラゴンブレスは、龍徳には出来ない芸当だ。
同じ威力の魔法を放つのであれば、魔力を溜めるのに何倍もの時間がかかってしまう。
だからこそ、接近戦では大魔法が使えないのだが、ソーマはその弱点が無いのだ。
これは、魔力が生命力に直結する限り、人外の生命力を持つドラゴンの特徴の一つなのだろう。
正確には、龍徳も一瞬でソーマのレベルで魔力を放つ事が可能だが、それを行えば体の負担がかかり過ぎて動けなくなってしまう。
戦闘中にそんなリスクを負ってまで使用する事など出来るはずもないのだ。
「それにしても・・・何故龍徳様は、気が付かれたのですか?」
っとごもっともな意見をナツがつぶやいた。
「あれ?ナツも知っていると思ったんだが・・・」
そう言われて神書を思い出す。
「旧約聖書にそんな文章ありましたっけ?」
「あったぞ? 簡単に言うのであれば・・・」
っと一文を抜き取って語りだす。
≪力とは目に見えるものが全てではない。己の内に答えがあると心得よ。≫
「って書かれている一文が、あの後出て来るんだ。」
そう言われてナツは、龍徳と試練について調べ終わったと最後まで読まなかった事を恥ずかしがっていた。
『私は馬鹿だ・・・これ位しか役に立てないのに・・・龍徳様は・・・』
「そんなに落ち込む必要はないよ♪ そもそもナツが教えてくれなかったら俺だって分からなかっただろうからな・・・だから、俯くなナツ♪」
そう言って笑いかけられるが、ナツとしては複雑な心境であった。
その後、知識の試練に挑む事になるのだが、ここでもあっと言う間に龍聖はクリアしていた。
この試練は、冷静さを失った時にどれだけ現状を把握して打破する事が出来るかの試練であった。
因みに龍聖に出された内容は
「お主の大好きな2人の人間が今まさに命の灯が消えようとしている。
片方は助けられるが、片方を救えばもう片方は死んでしまう。
お主はこの状況をどうするか行動で示せ!」
っと問われた瞬間、龍聖の記憶を読み取ったのか龍聖の目の前に龍徳と祖父の姿が現れた。
2人共切り立った崖に片手だけで捕まり今にも落ちそうであった。
その瞬間、龍聖は一切の躊躇なく祖父の方を救ったのだった。
「これでお主の父は死んだ。何故、祖父を助けたのだ。」
っと問われあっけらかんと出した龍聖の答えは・・・
「だって♪パパならそんな状況下でも死なないもん♪」
そう答えた瞬間、映し出されていた龍徳はヒョイっと片手で身体を持ち上げ事なきを得ていた。
「なっ・・・み・見事・・・」
っと龍聖の周囲を覆っていた結界が無くなったのだった。
普通、どちらか一人しか助からないと言われれば悩むものだが、龍聖にとって龍徳は絶対的な存在なのだ。
そんな父が、あの程度で死ぬわけがないと単純に思っただけなのだが、これは正しい答えであった。
そして、2番目にクリアしたのはレイナであった。
試練の内容は同じなのだが、何故かレイナの前には龍徳一人しかいない。
余りにもイレギュラーに知識の試練の声もおかしくなってしまう。
「ちょっと待て!! 何故一人しかおらんのだ!! 大事な人が2人と言っておるであろうが!!」
「だって・・・1番大事な人と2番目に大事な人では差があるんですもの♪」
っと顔を赤らめて手で頬を抑える。
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