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踊り場の鏡

作者: 都築

 皆さんの学校の階段には階段の途中で少し広くなっている踊り場というスペースが存在するだろう。ある中学校の踊り場には昔大きな鏡が立てかけてあった。  

 不思議な事に、その学校ではその鏡の前を通った生徒が怪我をしてしまうという事故が多発していた。ある時、鏡の前で転倒して怪我をした生徒が、転ぶ直前に「おいで」という声を聞いたそうだ。鏡の中に連れ込もうとでも言うのだろうか。そんな鏡の存在に生徒たちは興味を示し、彼らの間では学校の七不思議の1つだ、と噂されていた。そんな中、ある日そこの階段を通った1人の女子生徒が階段を踏み外し、転んだ拍子に頭を打って鏡の前で亡くなってしまったという。

 先生達はこの鏡に何かあるのではないかと思い、1階の突き当たりにある物置部屋にパイプ椅子や長机などと一緒に鏡をしまったそうだ。

 



「おい!やることないなら長机持ってきてくれ。」

少年は体育祭の準備におわれていた。この中学校では、部活ごとにそれぞれの担当の場所の準備をするという決まりだった。顧問の先生に頼まれ、少年は長机が置いてある物置部屋に来た。事前に先生が開けておいたのだろう。その部屋に鍵は掛かっていなかった。少年は部屋に入ると、入口付近に積まれていた長机を一台持ち上げ、さっさと部屋を出ようとした。その時、少年はふと部屋の奥にある大きな何かに気がついた。

「なんだあれ。」

少年は机を降ろし、部屋の奥まで行くとそれに被さっていた布をめくった。それは大きな鏡だった。

「なんでこんな所に鏡が置いてあるんだ。」

少年は不思議に思ったが、先生に机を持ってくるよう頼まれていたことを思い出し、部屋の入口に向かった。そこで、少年は違和感を感じた。

「あれ、閉めたっけ。」

入口の扉が閉まっていた。少年は扉に手をかけ、横にスライドさせようとして気づく。鍵が掛かっている。少年は少し焦った。部屋の内側からは鍵を開けることは出来ない。外から鍵を掛けるにしても誰が。さっきの先生か?いや、先生がなんでこんな事するんだ。

そもそも鍵はすぐに職員室に戻す決まりのはずだ。では、職員室にいた先生が僕に気づかずに鍵を掛けてしまったのだろうか。少年の頭の中で一瞬のうちに色々な想像が駆け回った。が、真相は分からない。少年はどうしたものかと部屋の中を見渡す。

「ん?」

 少年は戸惑った。鏡に被さっていた布が床に落ちている。先程少年はを 中のものを確認するために布を少しめくっただけだった。

「なんで落ちてるんだ。」




 「おせぇーな。」

先生は痺れを切らして、物置部屋に向かった。

「あれ、鍵掛かってる。」

先生は少年がもう部屋を出て、鍵を閉めたのだろうと思った。しかし、ならなぜ戻ってこないんだ。近くに長机は置かれていない。学校によく置いてある会議用の長机は、中学生が1人で持ちながら校舎を歩き回れる程軽くはない。

 先生は職員室から物置部屋の鍵を持ってきて、部屋の鍵を開けた。やはりそこにはだれもいなかった。先生は部屋の中を少し見渡し、部屋の奥に置いてある大きな鏡に目が止まった。鏡に掛けてあったのだろうこれまた大きな布が床の上で何かに被さっている。直そうと布を手に取り、先生は驚いた。

長机を取りに行ったはずの少年が布の下で倒れていた。

「おいっ!どうした、大丈夫かっ!」

先生は手に持っていた鍵を投げ捨て、少年の体を揺さぶった。返事がない。

救急車を呼ぼうと、急いで職員室に戻ろうとして入口の扉に手を掛けた。開かない。鍵を閉めた覚えはない先生は戸惑いつつも、鍵を取りに戻ろうと少年の方を向いた。そこでまた大きな鏡が目に入った。さっき見た時となんとなく違う佇まいを感じた。その時、先生は囁くような声を聞いた気がした。

「おいで」

このお話は、私が通っていた中学校で実際にあった七不思議の一つを元にして作りました。私はその話を兄から聞きました。その後、友達に話してみるとその話を知っている人は誰もいなかったので結構古い話なのかもしれません。

ちなみにその話は踊り場の鏡の前で事故がよく起きていて、その鏡が今も準備室に置いてあるという話でした。

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