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ハニカムウォーカー、また夜を往く  作者: 高橋 白蔵主
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「ルールとマナー」(9)

ああ、ごめんよ。


話が逸れてしまったね。

話を戻そう。わたしの依頼人であるリィンお嬢様に、君は一体何をしたのか。


へ?

心当たりがない?

いや、そんなことはないだろ。

だって彼女は君のケツに…いや失礼、下品な言葉遣いだけど、君のその部分にあんな執着を見せるんだぜ。少なくとも、君の屈辱や苦痛は、彼女にとって大きな価値を持っている。

彼女が望んでいるのは、誰かへの見せしめじゃないだろうな。わたしが頼まれたのは、君を「死ぬほどこわい目」に遭わせることだ。実行したところで君がそれを周囲に吹聴するとは思えない。もし実際にわたしが君の、その、尻にさ、この棒を突っ込んで火傷させたとしたら、君はその事実を必死で隠すだろ。

男の人たちは、デリケートだよね。

まあつまり、いかなる場合にもそれは、君を含む「誰か」への威嚇にはなりようがないんだ。それに、見せしめにしたいならちゃんと「警告になるよう、惨たらしく殺してほしい」って頼むだろ。料金は割増になるけどね。


とにかく、わたしの依頼人、あの高慢なお嬢様に対して君がどんなひっどいことをしたのか、あるいは彼女の鼻をバッキリへし折るだけのポテンシャルを君がどこに隠し持っているのかというのは、今のわたしにとって物凄く興味のある話なんだよ。


心当たりがないでは済まされない。

ただ息を吸って、吐いて、飯を食ってるだけであのクソ女の神経を逆撫でするスキルがあるっていうんだとしたら、君には是非とも明日からはもっと盛大にスーハー呼吸をして、モリモリご飯を食べてもらいたいと……あ、ごめん。


君に、明日は来ないんだっけね。

我ながらデリカシーのない発言だったよ。ごめん。本気で謝る。


ああ、悪かったってば。そんな顔しないでほしい。君がリィンお嬢様に自覚的に何かをした覚えがないのは分かったよ。わたしが彼女にいい感情を持っていないのを知っても、君はちっとも嬉しそうな顔にならなかったからね。


暗殺者を遣すくらいに彼女が君を嫌っていることは認識していて、でもその具体的な理由には心当たりがない。


……ということはつまりさ、心当たりがありすぎて見当がつかないか、ただ単に「あのお嬢様の性根がドブみたい」だってことを知っているだけか。どちらかだろうな。

そして、もうひとつ聞きたいんだけどね。


過日の『少年騎士殺し』に関して、君は、何か関わっているのかな?


……。

そんなきょとんとした顔をするなよ。


ンフフ。わたしは嘘を見破るのが下手っていうのは、嘘さ。わたしには便利な能力があってね。

そのお陰でこういう仕事を得意にしているんだけど、つまりさ。嘘の反応と、本当の反応を見分けることができるんだ。


君が、リィンお嬢様に恨まれる覚えがないと答えた時の反応と、少年騎士殺しに関わっているか聞かれた時の反応は同じだった。

少なくとも同じとわたしは判断したよ。


これは便利な能力だが、万能ではない。嘘と本当の違いを見分けるだけで、どっちが嘘でどっちが本当かまでは分からないんだ。あくまでも、本当と嘘の「反応」の違いを見分けるだけ。


だから、今のわたしには「君がリィンお嬢様にしたことも覚えていて、少年騎士殺しにも関わっている」のか「本当に心当たりもなくて、少年騎士殺しにも関わっていない」のか、そのどちらかだろうということしかわからない。


わたしが「君がリィンお嬢様にしたこと」を知っていれば、少年騎士殺しについての君の関わり方もはっきりするだろうね。

でも残念ながらわたしはそれを知らされていないんだ。


まあいいよ。

長かったけれども本題に入ることにしようか。

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