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ハニカムウォーカー、また夜を往く  作者: 高橋 白蔵主
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「ルールとマナー」(5)

わたしがアサシンギルドで仕事をしていた頃、ああ、もちろんこの国ではないけど、とにかく、昔の話さ。

ギルドの人たちは、予定通りに行かないのをとても嫌がる。

彼らが嫌うのは「殺す予定じゃない相手を殺す」のと「殺す予定の相手を殺さない」のと、どっちだと思う?


不思議なことにさ、アサシンギルドって殺すのが仕事の癖にさ、殺す予定じゃない相手を殺すのをすごく嫌うんだ。

まあ確かに、論理的に考えればギルドメンバーにだって腕の良し悪しがある。殺す予定の相手を仕留め損なうことだってあるよね。仮に誰かが失敗しても、最終的に別の誰かが仕事の穴埋めをすれば、辻褄は合う。仕事には納期がある。

失敗することに非寛容になってしまっては仕事自体が成立しないだろ。

でも、殺す予定にない相手を殺すのは、色々とまずいんだよね。つまり、例えばさ、依頼のついでに、ムカつくやつだったからって依頼主まで殺すのは許されないんだ。


これを逆手にとるとさ、アサシンギルドに狙われないためには、依頼主になっちゃえばいいんだ。こういうの、ライフハックって言うんだろ。そういうものかなと思うけど、不思議なものだね。

人が仕組みを作り、人が作った仕組みがある以上、ヘンテコなことがいつも起こる。ルールはシンプルじゃないといけない。幾つもルールが噛み合うと、いつも何か直感的に間違ったことが起こるんだ。


ちなみにわたしは、ギルドの人たちが嫌うことをどっちもやった。

殺す予定の相手を殺さなかったこともあるし、殺してはいけない相手を殺したこともある。

ンフフ。

そうそう。わたしはもともと組織に向かないタイプだったんだろうね。まあ、だったら何に向いてるんだって話だけど。


とにかく、わたしは故郷のアサシンギルドからは追われる身なんだ。なんでも、わたしを生かしておくと色々と組織の根幹が揺らぐんだって。別にわたしはギルドを壊滅させたいわけではないんだから、国を出たわたしのことは「他所の国で跡形もなく刻んで殺した」ということにしておけばいいのにね。


なんの話だっけか。

そうそう。君に確認したい話があるんだった。質問するって話だったね。

ん?

そうだよ。今回の仕事は、ギルド経由じゃあない。


まあともあれ質問の話だ。

最初は、イエスかノーで答えられる質問にしようか。

ちゃんとわたしたちのコミュニケーションが成立しているかどうか、確認してから猿轡を取りたい。それはお互いのためだと思うんだよ。


君の名前は、グラスホーン・パトリックノーマンマクヘネシー。ちゃんと合ってるかな?


ふむ。

よかった。万が一人違いだったらわたしは引退しなきゃならないところだったよ。

それと、まあ、名前についてからかうつもりは全くないんだけど、エルフ族はファミリーネームは長い方が格式が高いっていうのは本当なのかい?

ああ、ごめん、イエスかノーで答えられない質問だったね。今猿轡を取るよ。

気をつけてね。浅く、短く息をするのがコツさ。不本意かも知れないけど、犬の真似をするのが一番だ。ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。そう。こうやるんだ。わたしは別にそれを笑ったりしないよ。生きるのに必死になるというのはとても美しいことさ。それは、わたしが責任を持って、誰にもバカにさせやしない。


いいかい、そら。取るよ。


やあ、改めましてこんばんは。

わたしの名前はメアリ。メアリ・ハニカムウォーカーだ。

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