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ハニカムウォーカー、また夜を往く  作者: 高橋 白蔵主
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「ルールとマナー」(3)

聞いてほしいのは、わたしのことさ。

メアリさんメアリさんってみんなわたしのことを呼ぶ。壁耳のメアリ、って呼ぶ人はもうこの世にはあんまり居ないけど、それでもそんな二つ名のことを忘れてしまうくらい、それこそ女給を呼ぶみたいに気軽に、わたしのことを呼ぶ人たちに囲まれているんだ。


だからこそかな。わたしはさ、時々思うんだよ。

わたしは、「いい人ではないよな」ってね。


ンフ。

そんな顔をしないでほしい。そういう意味じゃないんだ。例えばさ、君。君は十分、自覚して生きてるだろ?

掃除屋が、自分の部屋に夜に忍び込んできたら十中八九、自分の悪行がバレたと思うタイプ。わたしは君がしでかした悪どいことの記録も持ってる。つまりその自己認識は、まあ、正しい。つまりこれは善悪とかの関連しない関係ってことだとわたしは思う。


ただ、あのアパートに住んでると時々思うんだ。

あの子たちが巻き込まれた揉め事を解決してやるなんてのは、大したことじゃない。わたしにはコレがあるし、今更、コレを振るうのも息をするようなものだ。


でも、それを指して「いい人」ってのはちょっと違うよなと思うのだよね。客観的にみたらわたしは、ゴロツキを殺してドブに放り込んでいるだけだよ。決して褒められた話じゃない。


掃除に例えるなら、テーブルの上のものが何かを確認せず、ざあっと均すようにゴミ箱に放り込んで片付けをするみたいなものかなと思う。そこにあるのは、誰かが丹念に作ったミニチュア模型みたいなものだったかもしれないと思うと、少し心が痛む。


それにね、わたしは、「好きでやってる」んだ。

掃除も、殺しも、好きでやってるんだよ。


わたしはさ、たぶん生まれつきある程度強く生まれたと思ってる。どんな風にすれば相手に見つからずに近づけるかとか、躊躇わないで刺すほうが最終的にはお互いのためになるってことも早くに気付けた。たぶん、もともと暴力と相性がいいんだろうね。


だけど、別になんでも暴力で片付けるのが何よりだって考えてるわけじゃない。いくら好きでも、得意でも、毎日毎晩カンナ肉のスープが飲みたいって訳じゃないだろ?


だからわたしは考えてるんだ。

わたしは、暴力が得意だけど、別にそれが好きって訳じゃない。

じゃあ、わたしは一体何が「好き」なんだろう?


人助け?……ノン。別に誰かを贔屓してあげたいとは思わない。なるようになるのか一番だと思ってるタイプさ。

実利?……ノン。お金はあって困らないけど、必要以上にあっても使いきれない。

考えていくとさ、わたしは、そうだね。


 『人の驚いた顔』が好きなんだよ。

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― 新着の感想 ―
[一言] この作品の文章が結構好きです! 山程積ん読していなければ、もっと読めるのですが・・・ まあ、そのうちまた読みます!
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