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ハニカムウォーカー、また夜を往く  作者: 高橋 白蔵主
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「ルールとマナー」(2)

わたしが住んでいるアパートの界隈で、メアリさん、と呼ばれている話はしただろうか。

当たり前に聞こえるだろう?でも、よくよく考えるとこれって信じられない話だと思うんだ。


わたしがただ近所に住んでいるだけの他人に、自分の名前を明かしているのも、そもそも近所付き合いをしているというのも極めて珍しい。これは不思議なことだよ。亜人窟はどの国にもあるけど、こんなに多種多様な亜人がバラバラに、適度な距離感を持って暮らしている国は初めてだよ。


他人に興味がないのかなと思ったけどそうでもないみたいじゃないか。勿論みんな、目も見えているし幻術の類でもない。

君たちの住んでいるこの宮廷も、市街と同じかい?

わたしはドラゴニュートと火喰い鬼が同じテーブルに並んで喋っているなんて、この目で見るまでは信じられなかったよ。


しかしまあ、種族がどうのというより、大事なのは今世で何を為したか、だよね。

単に情報がなくて、例えばギルドの手配書なんかがこの国に入ってこないだけなのかなと思ったらそうでもない。ちゃんと連絡所みたいなのも設置してあるし、アブないやつの情報はある程度共有されてるみたいだというのは驚きだった。


でも、だとすると、つまりさ。

この国の人たちは割と、その、なんていうのかな。いざとなったら「自分でなんとかする」って考えてる人が多いみたいだね。


フフ。

わたしがこの国に来た晩、流れ者のオーガがその辺の女の子に絡んで、返り討ちでぶちのめされているのを見たよ。凄んだ挙句、片角をへし折られてさ。痛快だったなあ。


ええと、そうだね。

なんの話だっけか。

わたしが掃除屋をしている話はもう、したんだっけね。


ああ、そうだよ。君が思っている通り、必要と依頼があれば殺しもやる。でも、それだけじゃない。わたしは本当に片づけやら掃除やらが好きなんだ。これは比喩じゃない。散らかった服を洗濯したり、畳んだりするのは楽しいんだよ。君も、機会があれば召使いだけにやらせるんじゃなくて、自分でもやってみるといい。

それは実に、実に気持ちがいいことさ。


生きるってことは、少しずつ手を汚し、汚した手をきれいに洗う。その繰り返しだと、わたしは思うんだよなあ。

うん?

ああ、これは比喩の話さ。


わたしは仕事をしにここに来たんだ。

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