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ハニカムウォーカー、また夜を往く  作者: 高橋 白蔵主
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被監禁日誌(3)

彼女のことも残しておこう。

これは、主観的には弁護に近い。もっとも彼女のしたこと自体については、単純に言って弁解の余地はないだろうとは思う。

しかし、彼女は僕と話をするまで、壁を破ろうと思えばいつでも破れるのにそうしていなかった。

これはひとつの善良さの証として受け取ってもいいように思う。


それを何と呼ぶべきか、もっと上手な言い方があるとは思うし厳密には語弊があるとは思うが、僕と話した結果「スイッチが入ってしまった」としか言えないのではないだろうか。

現に、その後の彼女は言葉も少なく、脱獄してしまった罪悪感に落ち込んだ様子に見える。


では何が彼女の回路を繋げてしまうのか、これに関しては「無実の罪」というのがひとつのキーワードだと考えている。

彼女は、彼女を陥れた人物として鉄仮面の魔女、グラジット・ミームマルゴー氏の名を挙げた。宮廷会議の階位二位の人物の名前だ。

詳しい事情を聞いている訳ではないし、無条件に彼女を信じている訳ではないが、無実の罪を着せられたのだという言葉に、何らかの真実は含まれていると思う。


一方、僕が地下牢に放り込まれたのも、宮廷会議内の、納得のいかない論理が下敷きになっている。僕たち二人の投獄に関連はないが、僕と彼女はひとつの同じ疑念を抱いている。


この記録を借りて主張するというのも変な話だが、本当に宮廷会議は「正しく機能している」と呼べるのだろうか?


第一席であるレディ・マルスクエアの義体は最近では定時連絡すらままならないと聞く。列席による、職務と呼んでいいのかわからない奇妙な私物化の話もある。先だっては宮廷内で死人まで出ているうえ、僕の部屋にも賊が押し入っている。僕は、決して地下牢に入れられるような咎を負ってはいない。

そこでは何かが起こっているはずだ。

投獄は僕の保護だという名目上の説明は受けたが、眼鏡だって取り上げられたままだし、どう見たって保護の扱いからは遠い扱いだ。事情があって尋問の場では話せなかったが、僕を襲った賊は、宮廷会議自体の手引きで忍び込んだ疑いさえある。


これは彼女からの受け売りも含まれた意見だが、宮廷会議の内紛は、民の方を見ていないだけではない。もはや龍の方を向いてすらいないのではないだろうか。


この日記があなたがたの目に触れているということは、そのまま彼女が再び捕まってしまったことを意味する。僕はそれを歓迎する立場にはない。


だから、どうにかして「それ以外の方法」で、意見を述べるために行動しようとは思う。だが、しかし、万が一にも不本意な結果になったことを考えながら…これを記録している。

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