8.トーラムへ
優はトーラムの街へ向かう為、森を出てレント村まで来ていた。
朝早くに来たからか、まだ村人が家から出てきてなかった。見つかると面倒だと思っていた優には好都合だった。
そのまま目的地である冒険者ギルドに一直線に向かった。
ドアには鍵が掛かっていたが、電熱で無理矢理溶かしてギルドマスターがいる場所まで迷わず行き、寝ているところを叩き起こした。
「起きろ」
「グベッ!何だ、いきなり!」
ギルドマスターはいきなり自分が起こされた原因を探り目の前に立ってる優に気付いた。
「お前は!?何故ここにいる!?」
「何だ?俺が死んだと思ってたのか」
「アイツらにいら……ッ!?」
優の服にべっとりと血が付いてることに気づいた。そしてそれを見てギルドマスターは何があったのかを察した。
「俺が死んでなくて残念だったな」
「わ、私をどうするつもりだ…?」
「あの害獣共が直接手を出してトルネラおばあちゃんを死に追いやったその原因を作ったのはお前だから、今すぐ殺してやりたいが、お前にやってもらう事がいくつかある」
「な、何だ?」
「今まで俺の報酬から奪ったお金と服とトーラムまで行く地図、数日分の食料を持ってこい。俺から奪った報酬のお金で買えるはずだ。そしたらお前は殺さないでやる」
自分ではボーグの取り巻きにも勝てない自分がその3人を倒した優に勝てないと、考えて素直に頷いた。
「わかった、すぐに持ってくる…」
そう言って、ギルドマスターは言われた物を調達する為に冒険者ギルドから出て行った。
「これで全部だ。これでいいんだろう!?」
「ああ」
言われた物を見て優がこの村から出る事を察したのか、ギルドマスターは悪態をついた。
「くそっ!お前なんて早くこの村から出て行ってしまえッ!」
「アンタに言われなくても今すぐこの村から出て行くさ
それと冒険者が居なくなったこの村で誰が魔物を間引きするんだろうな?高いお金を払ってアンタ達が嫌いなよそ者を連れてくるだな」
「!?…!!………!…、……!!」
優は最後にそう言い、後ろで何やら喚いてるギルドマスターを無視して冒険者ギルドから出て、村人達から見つからないうちにレント村を出た。
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(確か、トーラムの街まで馬車で2日かかるってトルネラおばあちゃんが言ってたな)
「となると、歩いて確実に1週間くらいはかかりそうだなぁ…」
トーラムの街へと向かって数時間、優はトーラムの街へと続く街道に出る事が出来た。この街道に出るまでの間、何度かゴブリンやウッドウルフの襲撃があったがこの街道に出たら、めっきり魔物の襲撃が無くなった。なので、優は探知の精度を高める為に魔力糸を使った周囲の警戒を探知できる範囲ギリギリまで伸ばして歩いていた。
(…ん?)
すると優の探知にバルバラ大森林の方から人と馬車が引っかかった。
魔物に襲われているのか、馬車は森を進んでるのもあり、そのスピードはとてつもなく遅かった。
(…)
優は無言で来た道を戻り、魔闘技と流魔を使って街道を駆けた。
魔闘技と流魔を使ったお陰かすぐに馬車へと見つける事が事が出来た。
馬車の護衛が2人いて、すでに魔物にやられていて3人が倒れていた。
優は探知であらかじめ護衛が5人と馬車の中に3人いる事が分かっていた。
馬車を襲っていたのはゴブリン達で連携して護衛を追い詰めていた。
そして馬車の方にもゴブリンが2匹向かって行った。
(ゴブリン達が連携して攻撃してる?しかも見た事がないゴブリン達だ)
そう考えてる間にも体格が大きいゴブリンが護衛の1人を棍棒で吹っ飛ばして膝を突かせてその護衛に向かって剣を振り下ろそうとしたいた。
全力で魔闘技と流魔に魔力を流してゴブリンと護衛の間に割って入り、その棍棒を折れた剣で受け止めた。
「ギギッ!?」
「ッ!」
ゴブリンの棍棒を受け止めながらチラッと目線だけ護衛の方に向けて、叫んだ。
「助太刀だ!!早く貴方は馬車の方へ!!」
もう1人が膝をついてる人に手を貸し引き起こした。
「行くよッ!早く馬車の方を守るよ!」
「あ、待て!ソイツらはただのゴブリンじゃ…」
護衛が優にゴブリンの事を伝えようとして、振り向いたが優が戦ってる様に段々と声が尻すぼみになっていった。
「グギィッ!!」
敵じゃない事を伝え、目線を目の前のゴブリンに戻した。
ゴブリンは子供に受け止めた事に気に入らないのかさらに強く棍棒を押し付けてきた。
優は棍棒の勢いに抗う事なく、滑らすように剣をして棍棒の軌道を逸らした。勢いよく振り下ろされた棍棒は地面にめり込み、簡単に抜けなくなった。
棍棒が抜ける前にゴブリンの首を素早く切断した。そして、
「ギギィッ!」
「ガアァァッ!!」
威嚇しながらコチラにウッドウルフに乗ったゴブリンが飛び掛かってきた。
向かい打とうと剣を構えた瞬間、さらにそのゴブリンの後ろから火の玉がコチラに飛んで来ていることが見えた。
「魔法ッ!?くそッ」
身体を捻るように回転してウッドウルフに乗ったゴブリンの攻撃を躱して火の玉は足の魔闘技と流魔に重点的に魔力を注いでそこから転がるように躱してウッドウルフに乗ったゴブリンに素早く掌を向け雷撃を放ち焼き殺した。
そして、火の玉を放ったゴブリンの場所を確認した。
そのゴブリンを守る様に4匹のゴブリンがいた。
「グギイィ!」
魔法を使うゴブリンに向かて駆け出した。ゴブリン達は優を向かい打つようにそれぞれの獲物を構え、後ろのゴブリンは魔法を放つ為に詠唱をした。
先程の戦いを見たウッドウルフに乗ったゴブリンは優が上にジャンプ出来ないように高く飛び上がってコチラに突撃してきた。
優は足を止めてしゃがんで回避して下から救い上げる様に剣を振るって狼の首を切断して投げ出されたゴブリンに回し蹴りを放ち地面に叩きつけた。素早く地面に横たわったゴブリンの首を斬って殺した。
そこにまたもゴブリンが魔法を唱え、火の玉をコチラに放って来た。
優はそれなり量の魔力を練ってゴブリンの集団に向かって魔法を唱えた。
「雷轟」
雷は火の玉ごと呑み込み、幾つもの雷が暴れまわり一瞬のうちに5匹いたゴブリンを雷が蹂躙した。雷が収まったそこには焦げて炭化したゴブリン達の死体しかなかった。
「ふぅ」
優は息を吐き、辺りを魔力糸でこれ以上魔物がいない事を確認して剣を鞘に戻した。
馬車の方を見るとソチラもゴブリンを倒し終わってトドメを刺していた。
優の視線に気づいた護衛達はコチラに礼を言った。
「ありがとう!君のお陰で助かったよ!」
「すいません、もっと早く僕が気づいていれば他の人は…」
「いいんだ!この仕事をしてれば命の保証は無い、君が謝る事じゃ無いよ」
護衛達と話しているとそこに馬車から人が出てきて、話しかけてきた。
「おお、魔物は退治出来たのか…?君達よくやったね」
「いえ、この少年がいなければ我々だけで退治する事は出来ませんでした。申し訳ない」
「君が?」
子供が倒した事に驚いたが、他の護衛が倒れているのを見てすぐに今の状況を理解したのか提案してきた。
「すまないが、トーラムまで護衛してくれないか?勿論、報酬も出す。街道に出たら、馬車に乗ってくれても構わない。どうだろうか」
願ったりもない提案でふたつ返事で了解した。優はこうしてトーラムの街まで護衛する事になった。
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