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理と異邦の剣士  作者: いろは
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7.別れ

 トルネラの小屋へと着いて目に入ったのは雨が降ってるのに関わらず勢いよく燃え盛っている小屋と優が盗賊から奪った装備(運んでる時に見られたのだろう)とお金をいじつてるボーグ達がいた。

 そして、少し離れたところにトルネラが大量の血を流してピクリとも動かず倒れていた。


 この時、優の中で何かが壊れた。


「…」


「ギャハハッ!」


(ああ、この世界はあの世界と違う。人の命なんて余りにも軽いんだ…

 魔物や盗賊がいるんだ、当たり前だ)


「スゲェな!あのババア、こんなに溜め込んでたぜ!」


(だけど、コイツらは魔物でもなければ盗賊でもない…)


「こりゃ、暫くは遊んで暮らせるな!」


(コイツらは人じゃない、人の皮を被った獣だ…)


「んー?おっ、カラスじゃねぇか!」


(だから、殺したって罪悪感なんて感じない…)


「たくっ、おせぇじゃねぇか!」


(害獣は駆除しないと…)


 優はボーグ達を無視してトルネラのところまで走った。


「おばあちゃん。トルネラおばあちゃん…」


 優は血で汚れるのも躊躇わずにトルネラを抱き起こした。


「ああ…ユウかい?ごめんね、冒険者さん達を止められなくて…」


「…」


「小屋まで燃えちゃって…」


「今度は2人で小屋を作ろう。大っきな家で畑もあってゆっくり出来る家を。きっと今よりもっと幸せで楽しいからさ」


「そうだねぇ…そ…れは、楽し……そう…だねぇ…」


 最後にあの微笑みを浮かべてそれからトルネラは動かなくなった。


「ギャハハッ!お別れは済んだかよ!俺らもよ殺しなんてしたかねぇけどよ、これも依頼なんだわ。

 だからよ、お前もあのババアも仲良く死んでくれや」


「そうそう、あのババアも寂しくねぇように今すぐお前もぶっ殺してやるからな!」


 そう言ってボーグの取り巻きの1人がコチラに近づいてきた。


「…してやる。」


「あ?何だって?」


「殺してやる…」


 近づいてきた取り巻きを振り向きざまに剣を抜き武器を持ってる腕を斬り落とし、そのまま躊躇いなく返す刀で首を斬った。


「ギャアアアァァッ!!腕がッ!!俺のうで…が…」


「なっ!?」


「このガキ!?」


「来いよ、害獣共…俺が駆除してやる」


「不意打ちでガズの奴を倒したからって調子に乗ってんじゃねぇッ!」


 もう1人の取り巻きは槍を構えながら突っ込んできた。


 突き出された槍を躱し、槍を引き戻す動作に合わせて、優は踏み込と同時に魔闘技と流魔で全身を強化しつつ、さらにより腕に魔力を回して強化し、剣をレイピアの様に高速で胸と顔目掛けて2回突き出した。

 もう1人の取り巻きは慌てて腰に刺した短剣で何とか胸の突きは弾いたが、顔の方には全く反応できずに顔を貫かれて即死したが、骨などの硬い物を先程から無理やり叩っ斬ったからか、剣が折れてしまった。


 取り巻き2人が一瞬のうちにやられた事にボーグは理解したくないのか、驚きの表情のまま固まっていた。

 そんなボーグに構わず優は折れた剣を持ちながら、ゆっくり歩いて行った。


「待て、待て!!無理矢理だったんだ!この依頼を受けないとギルドの登録を抹消するってアイツに脅されたんだ!!」


「…」


「だから、命だけは見逃してくれ!」


 優はただ無表情の視線をこの日、初めてボーグに向けた。


(何だ!?コイツの眼は!?)


 その視線から逃れられないと察したのか、がむしゃらに持っていた斧を振り回してコチラに向かってきた。


「チクショウがああぁッ!!何なんだよ、その眼は!その()()()は!!」


 向かってくるボーグの斧を躱しながら、大振りになった攻撃を選んで折れた剣で力任せに斧を弾き飛ばしてそのまま横っ腹に剣を刺し、より痛みを与えるためグリグリっと剣を回した。


「グギャアアアァァッ!いだい!!いでえぇ!!!」


「…」


「頼むうぅッ!見逃してくれ!まだ死にたくないぃッ!!」


 その言葉を聞いて優はギリッと歯を食いしばり、イラついた表情ので蹲ってるボーグに掌を向けて雷撃を放つ準備をした。


「お前達はトルネラおばあちゃん殺した!トルネラおばあちゃんが殺さないでって言ってたらお前達は殺さなかったのか!!」


「そうだ!ころさ「うるさい。これ以上、害獣の鳴き声なんて聞きたくないよ」


 最後に雷撃を放ち、ボーグは焼き焦げて死んだ。


「…」


 人を初めて殺したが、優は何も感じなかった。

 殺されて当然の事をした奴等だったからと優は結論づけた。


(そう言えば、アイツ俺の眼が紅いとか言ってたな)


 雨で水溜りになっている場所に眼を向けて見ると、ボーグが言っていた様に優の左眼が紅く輝いていた。


(これは)


 この眼を見た途端、いつも慌てたり感情が昂ぶると無理矢理抑え込むかの様に冷静になり、その場を切り抜ける為に最善の答えを出している自分に気づき、その眼の事を直感的に理解した。


 するとスゥーっと紅く輝いて眼がいつもの黒目に戻った。


(眼の色が元に戻った。あの紅い眼になれるのは一定時間みたい…)


(これからどうしよう…あ、おばあちゃんがこの森を抜けたところに大きな街があるって言ってたな)


 優はトルネラからバルバラ大森林を抜けるとトーラムという大きな街がある事を聞いていた事を思い出した。


(トルネラおばあちゃんが居ないら、こんな村にいても意味が無い。なら冒険者になってこの世界を周ろう)


 その日は寝ずにトルネラのお墓を作ってトルネラと別れを済ませた。


「それじゃ、トルネラおばあちゃん。冒険者になってこの世界を見てくるよ」


 お墓に向かって手を振り、トーラムへ向かう為、優はこのバルバラ大森林を抜ける為に歩き出した。


 

モチベーションになるので、良かったらブクマ・評価よろしくお願いします。

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