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理と異邦の剣士  作者: いろは
11/18

11.テンプレ

よろしくお願いします!

「おいおい!ここはいつからガキの遊び場になったんだっ!?」


(うわぁ、ここにもボーグみたいな奴がいんのかよ…)


 優は辟易しながら後ろに振り返り、声の主を確認した。

 筋骨隆々な大男が斧を背負いコチラを見ていた。

 男はお酒を飲んでいたのか、片手に酒瓶を持ち、真っ赤な顔でフラフラっと立ち上がりコッチに向かってきた。


「ブローガルさん、良い加減にしてください。ユウさんは規定上問題ありません。それに貴方は以前から行動に問題があります。これ以上はギルド側も黙ってはいられませんよ」


「うるせぇ!!俺に命令すんじゃねぇよ!!」


 アイリスの方からバギッと何かが折れる音がした。音をした方を見るとアイリスは表情を変えずに無表情で握っていた鉛筆をへし折った。


(無表情で折るとかこわっ)


 そんなアイリスに内心で少しビビりながらもブローガルと言われた男の方に視線を戻した。


(それにしてもこのブローガルって男、問題ばかり起こしてるのかよ…面倒な奴に絡まれたな。

 てかこの流れってあの漫画とかアニメで良くあるテンプレかよ…)


「俺が冒険者ギルドに登録するのは俺の勝手だろ」


「てめぇみたいなガキに何が出来るってんだ!!ガキはママのおっぱいでも吸っとけ!!

 こっちは命賭けてんだ!ガキが遊びで冒険者になるじゃねぇ!」


「命賭けてる割りに昼間からさけ…」


 ここまで言い掛かりにあって優は内心イライラして売り言葉に買い言葉で返そうとした時、アイリスがガタッと音を立てて立ち上がった。


「最近、クエストの失敗が続いてるからと言って新人に当たるのは場違いです。この様な事が続くなら、良くてランクの降格、悪くて冒険者登録を抹消されますよ」


 アイリスが目をスッと細めて忠告した。


「クソがッ!受付嬢のクセに冒険者様をバカにしてんじゃねえぇッ!!」


 酔って正常の判断が出来ないのか、ブローガルは片手に持っている酒瓶をアイリスに向けて振り下ろした。


「ッ!?」


 2人の間にいた優は酒瓶が完全に振り下ろされる前に手首を掴みそのまま足払いをして身体を押して尻餅を突かせた。


 気づいたら尻餅をついていたブローガルは呆けた様に優を見上げていた。


「アイリスさん、大丈夫でしたか?」


「は、はい。ありがとうございます…」


 アイリスもまた、その切れ長の目を見開いて驚いた表情で優を見つめていた。

 ブローガルは仮にも何年も冒険者を続けてきたDランクの冒険者、それを登録したばかりのまだ17の子供が完璧に対処した優の手際の良さに驚いていたのだ。

 優はいきなりこんな大男から酒瓶を振り回されたら、驚くよねというある種の普通の勘違いをしていた。


 冒険者ギルドは優の一連の流れに固まってたもののすぐに笑いに包まれた。


「ギャハハハ!」


「おいおい、ブローガルよぉ、ガキに尻突かれたんじゃねぇか!!」


「情けねぇなあ!」


「ッ!?クソッ!」


 ブローガルは顔が酒で元から赤かったが、さらに赤くなりいそいそと優を睨み上げて立ち上がり冒険者ギルドから出て行った。


 冒険者達はひとしきり笑ったあと興味が無くなったのか、他の話題を話す様になっていた。


 しかし、中には興味深そうに優を見る者も数名いた。その者達は優が瞬時に魔闘技と流魔を綺麗に纏ったのを見逃さなかった。

 ブローガルの事を笑っていたのはせいぜいDランク底辺止まりの冒険者で上を目指す事は諦めて惰性で続けてる冒険者だったが、興味深そうに見ていた者達はDランク上位やCランクの冒険者だった。アイリスもその数名の一部である。


「あの、すいません。冒険者同士の争いは禁止なんですよね…?」


「いえ、あれは完全にブローガルさんの言い掛かりでしたので大丈夫です。それにユウさんは武器を使用してないので」


「良かった…」


「それとこのあと模擬戦を受けられますか?」


「模擬戦?」


「はい、E、Fランクにも討伐系のクエストはありますが、ある程度の実績を積んでからでないと受けられないのですが、この模擬戦でギルド側から問題なしと判断が出れば実績を積まなくても最初から討伐系のクエストを受けられます」


「そうなんですか。ならお願いします」


「では案内をしますのでコチラに」


 優は案内されるがまま、アイリスについて行った。案内されたそこは小さな闘技場みたいな場所だった。

 そこで何人かが剣や槍など様々な武器を素振りしていたり、組手をしていた。


「ハームドさん、コチラです」


 アイリスと獣人族の男性が来た。


「おう、少年。話は聞いてるぜ。討伐クエストの許可だってな。俺に勝とうと思わないでいつも通りやってる事をやりな。俺に勝つ事が条件じゃねえからな」


「わかりました。ハームドさん」


「ハームド・ゴアだ。よろしくな、少年」


「ユウです。ユウ・ユズリハ」


「ハームドさんはBランクの冒険者ですが、あまり無茶はなさらず様に」


「じゃあ、ユウ。コッチでやろう。俺はこの刃を潰してある斧を使うがユウはその腰にさしてある剣を使ってもいいぜ」


「あ、えっと俺もそっちの剣を借りてもいいですか?」


「ん?ははは!安心しろ!お前の様な子供に怪我をさせられる程ヤワじゃねぇ」


 ハームドは早くしろとばかりにこっち向かって手をクイクイッと挑発してきた。


(はあ、そういう事じゃないのに…コッチは剣が折れて使い物にならないんだよなぁ)


 仕方無しに鞘に閉まったままで戦う事にした。


 魔闘技と流魔を使い剣を正眼に構えた。最初は剣を抜かずいた事から眉をひそめたが、その構えを見たハームドは感心した。


(ほう、見事な魔力コントロールだ。魔力を一切の無駄なく纏ってやがる。これだけでももう合格なんだがな)


 優は一息に距離を詰め剣を振り下ろした。ハームドはコレを上半身を逸らすだけで躱した。

 躱す事をわかっていたのか、攻撃を止めずに連続で攻撃繰り返した。


(コイツ…ユウと言ったか。狙ってくる攻撃が全部急所だ。本当に人族の子供か?それにまだ本気じゃなそうだ)


(ハームドさん、躱してばかりだけど攻撃してこないのかな。

 ………なーんか、モヤっとするな。ずっとニヤニヤしてるし、こう子供扱いされると意地でも手を出させたくなるな)


 魔闘技と流魔にさらに魔力を流して強化し突っ込んだ。

 ハームドは斧を使わないで極力躱すだけに徹していたが、優はどんどん魔力をつぎ込み剣速を早めていき、自分のリズムをつかませない様にした。


(コイツ明らかに戦い慣れやがる!段々スピードを上げるからリズムも掴みにくい!上等だ!!)


 コレほどの実力だと思いもよらず、コレは試験だど我慢していだが、獣人族の性か目の前の少年と闘いたいと我慢出来なくなっていた。


 ハームドは防御の為に斧を使っていたが、ここで初めて攻撃に斧を使った。


「ガハハッ!!次はコッチからも行くぞッ!!」


 重そうな斧を軽々と片手で振り回して来た。


 優は向かって来たハームドに向けて高速で胸、顔と2回連続で突きを繰り出した。

 高速の突きを物ともせず簡単に斧で弾き上げた。弾き上げてガラ空きになった優に向けて横薙ぎに斧を振った。

 優は横向けに前転して空中で身体を捻りながら下から顎に向けて剣を振り上げたが、ハームドは顔を上に向ける事でスレスレで躱した。

 優は避けられるとは思わなかった為わずかに硬直してしまい、そんな優にハームドは斧を振り下ろした。


「ハームドさん!やめて下さい!」


 いくら刃を潰しているとはいえ、武器である事は変わりはなく、当たれば怪我をする。

 アイリスに言われハームドはハッとして攻撃を止めようとしたが途中で攻撃を止める事が出来なかった。

 アイリスは攻撃を無理矢理止めようと詠唱を始めた。


 優は無意識に雷の理を使い身体に電気を一瞬だけ纏って雷によって反射神経が大幅に強化されてこの攻撃を躱して攻撃に移ろうとして剣を振ろうとしたが、ピクリとも動かなかった。


「ッ!?」


 地面と剣を繋ぐように氷で固められていた。


「ハア、2人とも熱くなりすぎです。コレは模擬戦ですよ…」


 アイリスに言われて2人はバツが悪そうに頬をかいた。


「いやぁ、悪い悪い!案外ユウが強くてなついつい本気になるところだった!」


「すいません…」


(この人やっぱりまだ本気じゃなかったんだ)


 優はハームドに本気を出させる事が出来なくて少し落ち込んだ。


「アイリス!コレは文句無しの合格だな!むしろ、Fランクってのが無理があるな!」


「そうですね、本気じゃないとはいえBランクのハームドさんと渡り合ったのですからね。でも規定は規定ですので仕方ありません」


「ガハハ!そうだな!面白かったぞ、ユウ!またいつかやろう!!」


 そう言ってハームドは出口の方に向かって行った。


「はあ、あの人は…ユウさん、貴方は強いですがコレでいきなりランクが上がる事はないので地道に頑張って下さいね。討伐クエストの方は合格ですので、討伐クエストを受けても大丈夫です」


「ありがとうございます!」


「これからどうされますか?簡単な依頼でも受けてみますか?」


「依頼は明日から受けます。アイリスさんここら辺でおすすめの宿屋と武器屋ってありますか?」


 アイリスにおすすめの宿屋と武器屋を教えてもらい、その日は依頼を受けずにおすすめの宿屋に向かった。

 冒険者ギルドから出る時にブローガルのやり取りから模擬戦までずっと優を見ていた者がいた。


「おー、凄い人族もいたもんだ!よし、決めた!!」


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