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ベルがやってきてから1週間が過ぎた。
初めは警戒していたタリスもすっかりベルの味方となっている。
今では、あまり後宮にやってこないウィルバードに対して小言を言うくらいだ。
そんなタリスの変化に、さすがのウィルバードも苦笑を隠せない。
「ベル姫がやってくる前はタリスも警戒していたであろう。まだ結婚はしていないのだし、仕事が忙しいのだ。片付いたら顔を出すからそう心配するな。」
「何をおっしゃいます。初めて故郷を離れ、供もおらずお一人で過ごされるベル姫様はどれほど心細い思いをしていらっしゃるか。それを支えるのは夫となる陛下の役割では?お仕事も大切ですが、今はもっと大事なことがあるはずです。」
「分かった。今日は夕食を共に取ることにする。ちょうど姫の歓迎の宴についても話さねばと思っていたところだ。」
「分かりました。ベル様にお伝えいたします。必ずご出席を。」
タリスはウィルバードのもと乳母であり、幼い頃の教育係だった。最近では女官長としてウィルバードの命にしたがうばかりだったため、小言を言われたのはずいぶん久しぶりのことだった。少しの懐かしさを覚えながら、いつも通り仕事を再開した。