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プロローグ [記憶という名の悪夢]
つたない文章ですが、楽しんでいただけると幸いです。
これは夢だ。これは夢なんだ。
「お前なんかいなくなってしまえ」
「早く死んじゃえよ」
「お前のせいだ。お前さえいなければ。」
耳にこびりついて離れない、悪意の塊のような罵声。蔑み、馬鹿にしたような態度。不当な暴力。いつの間にか枯れてしまった涙、何も感じなくなっていった心。
人の心を壊し、人間が嫌いになるには十分な仕打ちだった。いつしか自分の名前すらわからなくなった。
瑠奈は飛び起きた。
「夢……」
自分に言い聞かせるようにそうつぶやいた。
今でも夢に見る、あの世界の出来事。
* * * * *
今日もいつも通り、罵倒され、軽蔑した目で見られ、暴力を振るわれて、やっと帰ってこれた家。誰もいない静かで寂しい家の中。家具も少なく殺風景な部屋。寝起きするだけの家なのだから。ベッドに身を投げ泥のように眠る。いつも通りの日常。明日目が覚めたらまた同じことの繰り返しだと、そうなると思っていた。