第九話 遺跡探検隊
今回は3人パーティーでの初クエスト。
受けたクエストは、遺跡調査、及び、ロボットの破壊だ。
最近、遺跡付近で「ロボット」が暴れているとの報告があった。
ロボットとは、からくり人形の名称で、研究者の間でそう呼ばれている。
遺跡中心部に近づくと、ロボットがその場所を守るかのように現れ、攻撃してくる。遭遇した調査隊はほぼ壊滅とのこと。
明らかに危険な存在だ。見過ごすわけにはいかない。
今回のクエストには、調査隊生き残りの隊長が道案内のため同行することになった。
隊長は、作業着を着た少し古風な男だ。
「私は、遺跡調査隊隊長の、ヒロシイだ。私が案内できるのは、ロボットの出現地点まで。そこから先はあなたたちにお願いすることになる。よろしいか」
「ああ、構わない。それを倒すのが私たちの仕事だ」
「おお、頼もしい限りだ。じゃあ、早速参ろうか。お嬢ちゃん、これを持ってくれないか?」
隊長は、大きなリュックをエミリアに渡した。
「ええ、私、荷物持ちですか」
「荷物持ちは一番大事な仕事だ。その中には探検七つ道具が入っている。大事に扱え」
「は、はいいいい」
「楽しみですわ。遺跡だなんて……ロマンがありますわ……」
エリザは、目をキラキラと輝かせている。
「そうだ。秘境にはロマンがある。だが、そこまで行くには様々な難関が待ち受けている。決して油断はするな。探検隊になった気持ちで挑め!」
「わかりましたわ! ヒロシイ隊長!」
このヒロシイという男、ただものではない。おそらく歴戦の探検家なのだろう。
彼がいれば、このパーティーはおそらく安心だ。
我々、遺跡探検隊は準備を終えると、すぐに現地へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
密林の中を進む。ジメジメした空気と暑さ。生物の腐敗した臭いが鼻を突く。
突然、後方を歩いていたヒロシイ隊長が叫ぶ。
「気をつけろ! 罠だ!」
「罠……だと……」
突然私の右足に何かが挟まった。その瞬間、物凄い激痛が走る。とても気持ちがいい。
「これは一体……」
それは、鋭いギザギザの歯のついたトラバサミだった。
原始的な罠だ。だが、明らかに人間を狙って仕掛けられている。
「おそらく、この辺の部族の仕掛けた罠だ。他にもたくさんあるかもしれない。注意して進むんだ」
「うむ……了解した……」
「じゃあ、私がトラップサーチの魔法で……」
エミリアが魔法を使おうとした。すると……。
「だめだ! そんなことをすれば魔法を探知され、部族の攻撃を受ける! 奴等は弱いが、俺たちの目的は部族討伐ではない。そのことを忘れるな! 余計な争いは避けろ!」
「は……はいいいい、隊長!」
その後も罠は続いた。
竹やり付きの落とし穴。ロープの吊り輪。飛び出す弓矢。その他、いろいろ。
罠は、避けようとすればもっと深みにハマるように配置されている。
このトラップを仕掛けた奴は、凄腕のトラッパーだ。
だが私は、避けることなくその罠全てを堪能した。
こんなプロのトラップを味わえるチャンスは滅多にない。
エミリアが心配そうに話しかける。
「だ、大丈夫ですかぁ……教官……」
「ああ、大丈夫だ。それより、これが罠の仕掛け方だ。よく観察しておけ」
「は、はいっ! 教官!」
隊長は驚いた様子で声を上げる。
「あれだけの罠を全て一人で受け切ったのか……さすがだ! あえて罠を自分で受け、その脅威を仲間に身をもって教えるとは……」
どうやら、隊長は私の行動を見て、なぜか感銘を受けたようだ。
「こんな罠なら……毎日でも……いやいや、毎日の鍛錬があってこそ、耐えられる」
気を抜くと、つい余計なことを喋りそうになる。
「さすがです、教官! 私ももっといっぱい修行して、教官みたいに強くなりたいです!」
と、エミリアが称賛する。この娘は本当に頑張り屋だ。
「大丈夫だ。エミリアならきっとなれる。もう私の弟子も同然だからな」
「弟子だなんて……ありがとうございます!」
エミリアは嬉しそうに笑った。
「何という師弟愛ですの……素敵ですわ……」
エリザは羨ましそうに、指をくわえる。
そんなこんなで、私たちは恐怖の密林を抜け、小さな平原に出た。
爽やかな風と瑞々しい空気。私たちはそこで一息つくことができた。
だが、その先には、新たな難関が待ち受けていた。
先へ進むと、切り立った岩山に囲まれた、怪しい場所にたどり着く。
すると、隊長は檄を飛ばす。
「次は、あの洞窟だ。あの洞窟を抜ければ、遺跡エリアにたどり着く。もうひと踏ん張りだ」
そう言って隊長は指を差した。
指を差した先に見えたのは、まるですべてを飲み込まんばかりに口を開けている洞窟だった。