第八話 戦いの後で
エリザが放出したのは激しい熱と閃光。爆風と轟音だった。
血肉が沸騰して内臓がえぐれて脳みそが蒸発しそうな、そんな快楽が私を襲った。
それでも、私の鍛え抜かれた耐久力はその攻撃をもろともしなかった。
「さ……最高だ……」
ロッジは森林は破壊され、辺り一面に大きなクレーターができていた。
これは、いわゆる「マナバーン」という現象だ。
行き場のなくなったマナの力は圧縮を始め、力を溜め続ける。
だが、許容量を超えた圧縮マナは、やがて崩壊し、力を解放する。
その時に、マナは大爆発を起こすのだ。
エリザは、最高に幸せそうな笑顔を見せる。
「ああ……スッキリしましたわ……それにしても……死なないなんて……あなた、タフですわね」
「思ったより、最高の攻撃だった……礼を言うぞ。まだ顎がガクガクいってる」
思わず、初めての経験をさせてくれたエリザに、礼を言ってしまった。
「あら……褒められたのは初めてですわ。もしよければ、毎日やって差し上げてもいいのですけど」
「毎日、できるのか?(まずい……よだれが……)」
「正確には、一日一回放出しないとだめな体質なのですわ。私は特異体質でマナを異常に吸収してしまうのです。だから、常に何かの形でマナを放出しないといけないのです」
「それは……体質だったのか……じゃあ、いろいろと苦労したのだろう」
「いえ、気になさらないで。それにしても……あなた……異常ですわよ。普通なら死んでしまいますのに、あの爆発をそんな飾り物の鎧だけで受け止めて無事だなんて……」
「いや……無事というわけではないがな…………相手の攻撃は受けて耐えるのが……私の騎士道だ。だから、このぐらいでは死なない」
「それがあなたの騎士道なのですわね。感心しましたわ。もしよかったら、私をあなたのパーティーに加えていただけるかしら」
「な……なんだとっ!」
エリザがパーティーに加われば、いつでもあの快楽を味わうことができる。
「それと、一日4回ほどでしたら、強力な古代の召喚魔法を使用できますわ。どんな敵にも通用する物理攻撃をいたしますわ」
「ほ、本当かそれは!」
強力な攻撃を4回も……じゃなくて……古代の召喚士だったとは!
これは、ぜひパーティーに欲しいところだ。
「ハァハァ……ならば、ぜひ私のパーティーに入ってはもらえないだろうか」
「もちろん、喜んで加入いたしますわ……今後ともよろしくお願いすます……オホホホホ……」
こうしてエリザが私のパーティーに加わることとなった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
始めはエリザをドMだと思っていた。だが、明らかに違う。
──彼女は……ドSだ!──
確かに魔法攻撃にわざと辺りに行く様は、どMそのものだ。
だが、彼女の本質は違う! どちらかというと、ドS寄りだ!
盗賊団に攻撃をさせて、なお相手を疲弊させて喜んでいたのがその証拠だ。
後で聞いた話だが、彼女は魔法使いだが、古代の召喚魔法しか使えない。
しかも、回数制限があり、一日一種類につき一回だそうだ。
なので、その魔法を使ってしまうと、マナを消費することができなくなり、最後にマナバーンを起こすのだという。
それともう一つ、受けた魔法攻撃を自分のマナで相殺してしまう体質があるそうだ。
盗賊団の魔法をくらっていたのは、自分のマナの上昇を抑える実験だったようだ。
私は、とても恐ろしい人材を見つけてしまったのかもしれない……。
「お……終わったんですかぁ……」
クレーターの岩陰から声がした。
すると、そこから服をボロボロにしたエミリアが、這い出てきた。
「エミリア……無事だったか!」
「はい教官! もう、生きた心地しませんでしたよ……何層にもシールドを張ったのに……全部シールドがはがれて……永続回復魔法のタイムヒールを重ねがけしちゃいましたよ……おかげでもう、マナがスッカラカンです~トホホ……」
エミリアは、やり切った笑顔でそう言った。少々無理をさせてしまったようだ。
「エミリア、これからは彼女も私のパーティーメンバーだ。よろしく頼むぞ」
「えええええ! いつの間にそんな話に……はうううう……」
「そこのかわいい銀髪エフルさん。面倒かけますけど、よろしく頼みますわね……」
「は……はいいいい……トホホ……」
エミリアは浮かない様子で返事をするのだった。