表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/31

第三十話 宇宙(そら)

 私は思う。どうして私はいつも、私利私欲で動いてしまうのだろうか。

 今にもはちきれんばかりの魔力が蓄えれた砲撃用の巨大なクリスタルを、私はあえて破壊せず、しがみついてしまったのだ。


「主~それはだめです。帰ってこれなくなります!」

「一回! 一回だけ! エリザだって一回受けたのだから、私も一回受けるううう!」


 翼になって私の背中に張り付いているシグルドの声がうるさい。でも、私は……絶対に引かない!


「エリザはああいう体質なんですよ。いくらこの鎧が最強クラスでも、これをまともに食らったら……」

「エリザのマナバーンでも平気だったのだから、このぐらい……」

「マナ酔いでどうにかなっちゃいますよぉ! それどころか、力の変換なしにマナが放出されれば、次元干渉が起こりますよぉ」

「マナ酔い? 次元干渉?」


 いったいどういうことだ? このクリスタルは砲撃用だから、粉々になるとか、焼け死ぬとか、そんな反応があっていいはず……じゃあ、このクリスタルはいったい……。


「この砲台は、砲身で魔力を破壊力に変える仕組みになってるんですよ! だから、魔力のない主がこれを受けたら……」

「そ……そうだったのか……」


 私は勘違いをしていたようだ。ならば……。

「なら、なおさら受けてみたい! こんな大量の濃縮マナを体に受けたら……未知の領域を味わえ……」

「だから……本当に未知の領域に……」


──ブワアアアッ!──


 クリスタルが激しい輝きを放った。私はその光に包まれ……


 ……気が付くと……見渡す限り、上も下も右も左も満点の星空だった。


「なあ、シグルド……ここはどこだ……」

「多分、宇宙だと思われ……」

「宇宙……そういえば……どこかの科学者がそんなことを言っていたな……本当にあったのか……そういえば、あの大きな丸いのはなんだ?」


 私は、その不思議な青く輝く大きな丸い塊を指差した。


「主たちが住む惑星です」

「惑星? そうか……私はあの惑星というところに住んでいたのか……おお、私の持っている地図と同じような地形の陸地が見える。しかも、国境線がないぞ」

「そうですね」

「私たちは、こんな大きい惑星に住んでいるのに、あんな小さな大陸の中でつまらない争いをしているんだな」

「主……」

「なんだか、胸が苦しい。感動しすぎたのかもしれないな……ちょっと……眠くなってきた……」

「主! ここは酸素が……早く……元居た場所に……」



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 済んだ樹木の香りがする。すごく懐かしい匂いだ。

 体のあちこちが痛い。でも、それをふんわりとした何かが和らげてくれている。

 これは……多分私はベッドの中にいる。


 目をゆっくり開ける。そこは、見覚えのある部屋だった。でも……思い出せない。

 一人の少年が、私の側で何かを話していた。


「……主……主…………主! 気が付かれましたか!」

「主? それは、私のことか?」

「え、私ですよ。シグルドです……まさか主……記憶が……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ