表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/31

第二十七話 幻想的な輝き

 ボスオークを倒すと、周囲にいた雑魚オークは後退を始めた。分隊長であるボスオークを倒したことにより、士気が下がったようだ。


「クッコ! いきますわよ!」


 黄金に光る女体像からエリザの声がした。

 やはり、あのデカ物はエリザの仕業か……どうやら、中に乗っているようだな。

 となると、おそらくさっきの光線をまた発射するつもりなのだろう。

 もちろん、意図的に私を巻き込む予定の攻撃に違いない。


「こい! エリザ! 受け止めてやる」


 黄金の女体像の口から光線が横一閃に発射された。光線に巻き込まれたオークは、塵と化してゆく。

 そんな光線が今、私の体に触れた。


「(ああ……体が焼ける……熱い……ああああ……熱さが……こそばゆい……はああああ……まるで……これは……昔東方の地で夜泣きの治療で受けた時の……お灸というものに似ている……あああ……ピンポイントに体中が焼けて……はちきれそうだぁ!)」


 もし、このメイデンアーマーがなかったら……もし、耐久力がなかったら……私もオークと同じように塵と化していただろう。

 そんなやばい攻撃だった。


「さすがはクッコさんですわ。この攻撃をもしのぐだなんて……今最高に気分がいいですわ……だって……こんな攻撃うけたら、死んじゃうかも……でも、ちょっとだけならって……ああ、背徳感が心地よすぎてつい……あっ、また魔力を吸い取られる……あひぃっ! はううっ! ら……らめぇ~っ!」


 エリザは私を称賛した後、絶叫していた。中で何が行われているかはわからないが、エリザの乗っている女体像は、また膝をついて倒れた。あれだけの攻撃力だ。魔力の消費も激しいはずだ。また力を溜めるのに時間が必要なのだろう。


 私の陰になって助かったオークが、私を指差し、何やらつぶやいている。


「トイナジューラミ……トイナジューラミ……」


 とっさに、自分の体を確認する。すると、鎧が変色していた。まるで幻想的な輝きを放っている。

 そういえば、その熱のおかげで体が重力が感じられないぐらい軽い。


 私は軽く腕を振った。


──ブォン──


 その瞬間、空気を切り裂く激しい音とともに、かまいたちのような衝撃波が生まれた。

 衝撃波は、目の前にいたオークを一瞬にして切り裂き、モザイク状態にする。


 どうやら私は、この鎧の新たな使い方を見出してしまったようだ。痛みの他に熱が加わることによって、さらに人体の機能が亢進される。

 私は、この鎧の曖昧な輝きにちなんで、これをこう名付けた。


──メイデンアーマー・ミラージュモード──



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 形勢は逆転した。一見不利かと思われた我々の戦力は、私たちの力のみでひっくり返った。これが本当の少数精鋭というやつだろう。

 こちらはほとんど犠牲を出さず、オークの軍勢一万をモザイクの山へと変貌させた。


「これで……オークは壊滅……次は……クッ……自国兵か……」


 後方に控えた約5万の自国兵。そのほとんどは若い兵士たちばかりだ。裏切ったとはいえ、指揮系統のせいで上官に逆らえない者たちばかりだ。おそらく、部隊長たちはユダ・ブルータス側についていると思って間違いない。

 だが、万が一これを殲滅してしまえば、おそらく、背後に控えたエムジー国の奴らの思う壺だ。ユダ・ブルータスはおそらくそれに気づいていない。

 同軍同士で削りあい、兵が疲弊した時点で味方のふりをしていたエムジー国が裏切り、疲弊した残りの全兵力を殲滅しにくるだろう。それが奴らのやり口だ。


 どちらにしても、このままでは自国兵の犠牲はやむを得ない状況だ。

 それを避けるためには、犠牲が出る前にユダ・ブルータスを直接仕留めて兵の指揮権を取り戻すしか方法はない。

 奴の居場所さえつかめれば……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ