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第二十五話 無双の戦闘機械 (シグルド視点)

 主は、メイデンアーマと呼ばれる銀色の鎧を着ると、颯爽とオークの群れに突っ込んでいきました。


「あえてくらおう! その攻撃を!」


 そう叫ぶと、オークの群れに取り囲まれた主は、棒立ちのままオークの攻撃を受けるのでした。

 オークたちは叫びます。


「トイナーバルシ! トイナーバルシ! セオタ! セオタ!」


「ぬるい! ぬるいぞ! そのような攻撃なぞ、この鎧の前には無力!」


 主は軽く体に力を入れるだけで、オークの群れを吹き飛ばします。もう、無敵です。主はこの戦いを楽しんでいます。私が援護する必要もないでしょう。


 エミリアは、王宮騎士団への回復と補助に行ったようです。ついでにエリザは、使用回数制限のある召喚魔法を全て消費し、途方に暮れていました。


「ああ、おかしいですわ……遺跡でロボットを討伐してから、なぜか、もう一つ、召喚魔法が使える気がしてなりませんのよ……でも……スペルが出てこないですわ……」

「スペル? いったいどんなスペルでしょうか」

 この方の魔法は、古代魔法。情報さえそろえば、助言することができるかもしれません。


「ええと、召喚するのは『エクス・デス・マキナ』の体のパーツですわ」

「『エクス・デス・マキナ』……もしかして……」


 私のメモリに登録されていました。それは、古代ロボットの初期頃に作られた『エクス・デス・マキナ』シリーズで間違いありません。召喚されたパーツの形状から分析しますと、魔神ゴーレムを管理するために作られたロボットと回答が出ました。正式名称は……『L・D・マキナ・南大陸初号機』です。


「そ……そのような名前でしたのね……じゃあ、さっそく試してみますわ」

「異次元世界に宿りし眠る素体の神よ、時空の壁を越え、この領域に顕現せよ。『L・D・マキナ・南大陸初号機』!」


 空に暗雲の渦が発生。激しい稲妻とともに、黄金に光り輝く巨大な女性の姿をしたロボットがゆっくりと出現しました。


「結構魔力を持っていかれましたわ……それにしても、これはいったい……」

「今まで出現していたパーツの本体といったところでしょうか」


 黄金のロボットは、地面に着地すると、口に光を溜め、それを一気に放射しました。それは、全てを焼き払わんとする光線でした。

 それに触れたオークは蒸発していきます。やばい攻撃です。


 けれども、その攻撃を放った黄金のロボットは、膝をついたように倒れ、攻撃をやめてしまいました。おそらく、魔力が尽きたのでしょう。


「これで……終わり……ですの?」

「待ってください。ちょっと、そのロボットを分析します…………完了。ただの魔力切れです。補充が必要なわけですが……」

「供給? いったいどうすればいいのかしら」


「このタイプの仕様は頭の中に入っています。なので、簡単に説明します。まず、ロボットの頭部に触れてください。所有者が触れればハッチが開きます。開いたら、中に入ってください。中にはいると勝手にデバイスが装着されます。あとは、魔力供給の意思を伝えるだけで大丈夫なはずです」


「細かいことはわかりませんが、後頭部に触れればいいのですわね」


 エリザは、そういうと持ち前の俊敏な足でしゃがんでいるロボットを駆け上がり、後頭部へと到達。ハッチを開き、中へと潜り込みました。


「な……なんなのですぅ~これはぁ~! 私まだ……ピーですわ! こんなの、駄目ですわ~」


 何やら大きな声で騒いでいますが、きっと初めてのデバイス装着にびっくりしているのでしょう。とにかくロボットとの合体に成功したようです。あとは、放っておいても何とかなるでしょう。それにしても、さすがは主です。このような過去の遺物を召喚してしまえる方を仲間にしているとは……。


 ロボットは、魔力のチャージ中、敵の大砲の的にされてしまいました。ですが、大砲の攻撃程度で壊れることはありません。さらに、大砲の攻撃がロボットに集中してくれたおかげで他の場所が安全になったようです。


 私もこうしてはいられません。戦列に加わりたいと思います。

 ひとまず、魔剣グラムを振り回し、オークを切り刻んでみました。


「ギャアアアアア」


 普通に倒せますが、数が多すぎて一匹一匹倒すのは面倒です。

 それと、剣のスキルは、単体用のものしかありません。雑魚相手に使うのもなんだか気が引けます。

 なので、別な攻撃手段を使いたいと思います。


 主には、緊急時以外コートを脱ぐなと厳しく言われていたのですが、この状況を緊急時と判断し、自主規制を解除しました。

 私は、身を包むコートを大きく広げ、股間から筒状のバレルを伸ばし、攻撃します。


「『ジュニアスナイプ』!」


──パァン!──


 筒状のバレルが激しい音を立てて火を噴きます。

 使用している弾丸は白銀の弾丸。目の前にいるオークを一直線に貫通し、5体ほど打ち抜きました。


「イタンヘ! イタンヘ!」


 オークは、叫びながらじりじりと後退し、盾を構えてこちらの様子をうかがっています。さすがにこの爆発音と殺傷力を目にしたら、警戒せざるを得ないでしょう。


 ですが、この武器は一発づつしか攻撃できません。リロードにも時間がかかります。なので、こういった対複数戦では思うように戦えません。

 しょうがないので、一度、形態を変えてシグルコに変身します。


──ガシャッ……シャカシャカジャキーン──


 男子も喜ぶ女形モード『シグルコ』に換装しました。

 その形態を見るや否や、オークは嬉しそうに私に近寄り始めます。


「ダナンオ! ダナンオ! グヘヘ!」


 先ほど痛い目を見ているのに、この姿になった瞬間、不用意に近づいてくるとは、なんと愚かなる魔物でしょうか。


 私は今、回転式の機銃を装備した乳房パーツを装着しています。威力は、ジュニアスナイプには劣りますが、連射が可能です。

 愚かな魔物に痛い目を見てもらいましょう。


「どうやら、あなたたちには躾が必要ですね……『チェストバルカン』!」


──ドルルルルルルゥ……──


 私は、コートを広げたまま、乳房パーツを回転させます。すると胸は、連続した爆発音を放ち、複数の銃口から銃弾を放射状にぶちまけます。私の持っている武器の中で、唯一、対複数戦に特化した武器です。


「リパッヤ! イタンヘ! ロゲニ! ロゲニ! ギャアアアア!」


 オークは銃弾でハチの巣にされ、モザイクの山と化していきます。

 この程度の敵ならば、何匹いようが、所詮、私の敵ではありません。


 私は、醜い彼らに対し、コートを目一杯広げてこの美しい体を見せつけ、挑発しました。

 ここから彼らは、本当の地獄を味わうでしょう。


「変態オークのみなさん! この美しい姿を見て、悶え狂いなさい。そして、豚は豚らしくミンチになってください!」


 さあ、パーティーの始まりです。



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