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第十三話 黄金の桃

 ロボットは、エリザの召喚魔法でダメージを受けていた。

 私も同じく、エリザの召喚魔法でダメージを受けた。


 召喚魔法の攻撃を受けた感想は、激しいの一言だ。

 体が押しつぶされる感覚は、なんとも言い難い屈辱感だ。

 踏みつぶされた蟻の気持ちがわかった気がする。


「今の、腕は……我々の世界の……」


 ロボットが何か言い始めた。だが、そんな雑談をする余裕は与えない!


「お前のドリル! ちっとも効かないぞ! 今の腕のほうが何倍も強かったぞ!」

「ぐぬぬ……おのれ……人間め……」


 ロボットは、火花を散らしながら、目を真っ赤に光らせる。

 まるで怒っているようだ。どうやら、ロボットでも感情はあるらしい。


「『エクス・デス・マキナ・レッグ』!」

 そんなくだらないやり取りの間に、エリザの二度目の召喚魔法が放たれた。

 暗雲と稲妻の中から、黄金に輝く巨大な足が勢いよく降下する。


「よし、これももらった!」

 私は、ここぞとばかりに落下地点に飛び込む。

 もちろん、ロボットの巻き添えをくらうような形で攻撃をくらう。


「ぐおおおおお!」

「はうううううっ!」


 私とロボットは、黄金の足の下敷きになる。ロボットは足のつま先の部分。私は踵の部分で踏まれた。

 威力はもちろん、私のほうが上。ロボットには悪いが、おいしいところは横取りだ。


 ロボットは悔しそうにつぶやく。

「な……なぜその力をお前たちが……」


 ロボットのダメージは大きい。破損個所が増え、動きが鈍くなってる。

 あと、一撃ぐらいで破壊できそうだ。


「お願いですから回復してください!」


 後方からエミリアのか細い叫び声が聞こえた。そういえば、私もあの召喚魔法の攻撃を受けている。

 気づけばかなりのダメージだ。

 肋骨はもう5~6本逝っている。さらに左肩は外れ、右足は明後日の方向を向いてる。

 その甲斐あってか、断続的にくる激痛が気持ちいい……いや、もし次同じようなのを食らえば、死ねるかもしれない状況だ。

 もちろん、こんなところでは死ねない。


「わかった。今もどる!」


 ロボットの動きを封じ、役目を終えた私は、一度前線を離れてエミリアに回復を受けることにした。


「次で終わりにしますわよ。異次元世界に宿りし眠る破壊の神よ、時空の壁を越え、この領域に顕現せよ。『エクス・デス・マキナ・ヘッド』!」

 エリザの三度目の召喚魔法が発動した。

 暗雲と稲妻の中から、黄金に輝く巨大な頭が勢いよく降下する。


「ぐわああああ!」

 ロボットは、その頭突きの攻撃で、腕や足を砕かれた。

 だが、まだ各々のパーツは元気に動いていた。体のコードを伸ばし、バラバラになったボディーをつないで修復を始めようとしている。


「しぶといですわね。本当にこれが最後の攻撃ですわ。この攻撃は少々威力があるので、離れでくださいまし」

「わかった。エミリア、一度引くぞ」

「はい、教官!」


 私は、エミリアを連れて後方へと下がった。


 それを確認したエリザは、無慈悲な召喚魔法を放つ。

「異次元世界に宿りし眠る破壊の神よ、時空の壁を越え、この領域に顕現せよ。最大最強の力をもって、我が敵を打ち滅ぼせ! 『エスク・デス・マキナ・ビハインド』!」


 巨大な暗雲。激しい稲妻。空間断裂。

 避けた空間から、今度は黄金に輝く巨大な桃が出現した。


 黄金の桃はロボットに向かって勢いよく降下を始める。


「ああ、あれこそは……まさか人間どもが、あの方を従えるとは……こうなれば……」

 ロボットは、その黄金の桃を見た瞬間、自らをバラバラにした。


 不思議なものを見る目でエリザがつぶやく。

「まさか、自滅したのでしょうか?」

「いや、よく見ろ! パーツが一か所に集まっていく」


 バラバラになったパーツは、磁石で吸い寄せられ、パズルのように合体し、積み重なっていく。


「やつはいったい、何をするつもりだ!」

「わかりませんわ……ただの悪あがきならよいのですが……」


 ロボットは、歓喜の声を上げた。

「エクス・デス・マキナ様! この私をどうか、あなたの力の一部に! はああああ!」

 その後、ロボットは言葉では表現できないほど美しい塔の形を形成する。

 塔の先端は、激しい光を発し、形状を見ることはできなかった。

「この体、あなたに捧げます。『フラグメント・プラグイン』!」


 すると今度は、黄金の桃が落下の速度を落とした。

 次の瞬間、黄金の桃の下部に大きな穴が開いた。


 塔は、その穴にゆっくりと自らを挿入していく。まるで合体しているかのようだ。

 塔のすべてが黄金の桃の中に収まると、桃は穴から錆びたオイルのようなものを噴射した。


 どうやら、ことが済んだようだ。

 黄金の桃は虹色の輝きを放ちながら、次元の裂け目へと帰還していった。


「この光景はいったい……なぜか涙が……」

「まるで、黄金の奇跡を見ているようですわ……」

「ちょっと卑わいですう……」


 この神々しい光景を見た私は不思議な感動を覚えた。

 なぜか、生きている喜びを感じずにはいられない。

 きっと彼らは、生命の神秘を教えてくれたのだろう。


「よし。これで、クエスト完了だ!」

「私たちの勝利ですわ」

「やったぁ~!」


 私たちは、歓喜の声を上げた。



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