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第十二話 エリザの思い(エリザ視点)

 私、エリザ・イレイザは侯爵家の娘でした。

 イレイザ家は代々と続く魔導士の家系。ですが、私は小さいころ、魔力を持っていなかったのです。

 原因は、マナを吸収するための器が全くなかったとか。


 そのおかげで侯爵家では、何の権限もないばかりか、「飾り姫」と嘲笑される始末。

 ただ、力がない……それだけの理由で……。


 12歳の頃、私は山で落石事故にあいました。

 お父様の狩猟の付き添いで、私は荷物持ちをしていました。


 切り立った山肌の側を歩いていた時、落石がおきました。

 なぜか、私だけが気づきます。

 大声で叫んだのですが、お父様は私の言うことを聞きません。付き添いの執事も笑いながら父と話すばかり。

 私だけでも逃げようとしましたが、荷物が重くてすぐには逃げられませんでした。


 落石はそのまま私たちを直撃します。もちろん、詠唱する暇はないので、お父様でもこれを止めることはできませんでした。もちろん、石の下敷きになります。


 お父様と執事は落石につぶされてしましました。ですが、私は……黄金の輝きに包まれ、無事だったのです。


──その後──

 お父様は盛大に見送られました。


 それから私は、古代魔法の力に目覚めたことに気づきました。

 原因は、落石の時の黄金の輝きが関係しているとかしないとか。

 その力は召喚魔法限定ですが、一撃必殺と言ってもいいでしょう。


 けれども、それだけの力を有しても私の立場は変わりません。それどころか、父と執事が死んでしまったことで、「死神姫」と呼ばれる始末。

 お母さまから勘当を言い渡されるのも時間の問題でした。


 その後私は、その力を使うのをやめ、放浪の旅に……。


 ギルドにも入りました。

 ですが、その頃から力の変化が起こり、マナの吸収量が激しくなりました。

 そのせいでマナバーンを起こし、パーティーは全滅。 

「死神姫」という名は、私の二つ名として定着してしまいました。


 もはや、体質となってしまったマナバーンを克服するため、一人で試行錯誤の毎日。

 そんな時、クッコ・ローゼに出会ったのです。


 彼女は、私のマナバーンを食らって死なないばかりか、パーティー申請にも快く応じてくれました。

 私は直感しました。これは、神が与えてくれた奇跡の出会いだと……。


 だから私は、今こうしてクッコ・ローゼと行動を共にしているのです。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 クッコは勇敢にロボットに立ち向かいます。


「あえてくらおう! その攻撃を!」

 クッコは、そう叫ぶと、相手の攻撃を誘うように体を無防備にして動きを止めました。

 巨大なドリルがクッコを何度も襲います。ですがクッコは笑みを浮かべながら耐えています。


 こうしてはいられません。

 隙を作るために、自らがおとりになってくれているのです。

 その間、私は詠唱を始めます。


「異次元世界に宿りし眠る破壊の神よ、時空の壁を越え、この領域に顕現せよ。『エクス・デス・マキナ・アーム』!」


 空に暗雲が発生します。そして、雷とともに、空間が裂け、そこから黄金に輝く巨大な腕が出現しました。

 その腕は、拳を握りしめ、そのままロボットへと勢いよく向かっていきます。


「さあ、食らいなさい! 必殺の一撃を!」


 ですが、この時とばかりにクッコはロボットに向かって突っ込みます。


「だ、駄目ですわ! 離れてください!」


 私の声は届きません。これでは……。


「こ……この力は……まさかぁ!」

 ロボットは、私の攻撃に気づき、叫びます。


 その間、クッコはロボットに張り付き、離れません。

 ですが、無情にも必殺の一撃は振り下ろされます。


 一撃はロボットを直撃、そして、クッコもロボットと腕に挟まれるような形で巻き添えになってしまいました。


 ですが…………。


「ハァハァ……いい攻撃だ! 一瞬だけ天使が見えたぞ! 引き続き、頼む!」

 と、クッコは、すがすがしい笑顔で無事を知らせてくれました。


 でも、そんな彼女を姿を見て思うのです。

 彼女は、私の攻撃に耐えてくれる。攻撃したことを許してくれる。

 じゃあ、次の攻撃も…………。


 なぜか、想像しただけで、興奮してきました。

 もっと滅茶苦茶にしてあげたい。もっと、激しく、もっと強く。

 それでもクッコはきっと、無事な姿を見せてくれる。

 

 こんな感情になったのは初めてでした。

 最高に気持ちがいいです。


 だから私は、次の詠唱を始めます。


「クッコさん! 次、行きますわよ~!」

「ま、任せろぉ~!」


 私は、クッコのために詠唱します。



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