第十一話 ロボット出現
洞窟を抜けると、その先には平原が広がっていた。
ストーンヘンジが不規則に並べられ、二本のピラーが立っている。中央にはピラミッドのような建物が置かれていた。
「ここがその遺跡か」
「そう、ここがまぎれもなく、我々が調査していた場所」
よく見ると、手前に大きなクレーターがあるのが見えた。
以前、エリザがマナバーンで作ったクレータに非常によく似ている。
「このクレーターのようなものは何だ?」
隊長は真剣な表情で答えた。
「よくぞ聞いてくれた。このクレーターは最近できたものだ。本当はこの場所にもピラーが立っていたのだが、何らかの爆発によって吹っ飛んでしまった。これはその時の爆発によるものだ」
「まさか、そのピラーが爆発でもしたのか?」
「その調査をしていたのだが、その区域に入るとロボットが現れて攻撃してくるんだ。おかげで調査が進まないのだよ」
「なるほど……じゃあ、この先へ行けば、そのロボットが出現するんだな」
「そういうことだ。なので私はここで君たちの戦いを見ていることにする。私が案内できるのはここまでだ。もしロボットを倒したら呼んでくれ。健闘を祈る!」
そう言うと、ヒロシイ隊長は洞窟へと避難した。
「そういえば、この場所、見たことありますわ」
エリザは悩むようなしぐさでつぶやく。
「それは本当か?」
「ええ。以前、力の放出場所を探して歩きまわっていたら、意識もうろうと何かに引き寄せられるようにここへ来てしまいましたの。正気に戻った時には、すでにマナバーンが始まっていましたわ。多分このクレーターは私が作ってしまったものかもしれませんわね」
なんとなく、そんな予感はしていたが……エリザが原因だったとは……。
「じゃあ、エリザさん。ここへ来るのに密林や洞窟を抜けてきたんですか?」
「いいえ、意識はもうろうとしていましたが、道は覚えていますわ。別に普通に山の中の小道を通っただけですわ。それが何か……」
「じゃあ、さっきの密林と洞窟は……」
「気にするな。多分あのヒロシイ隊長の演出だ」
エミリアは、それを聞いた途端、緊張した表情を崩し、恥ずかしそうな顔で怒る。
「え……演出だったんですね……そ、そんな……無駄に怖かったじゃないですかぁ……」
「なるほど、そうだったのですね。私たちを楽しませるために……」
エリザも納得したようだ。
「それより、おそらくここにあったピラーが破壊されたことによって何らかの封印が解けたのだと私は推測する。それで出現するようになったのが、彼らの言うロボットに違いない」
「じゃあ、それを壊せばクエスト達成ですわね」
「そういうことだ」
「じゃあ、わたしも古代魔法を思う存分に使えますわ」
「ああ、そうしてくれ。私がおとりになる。攻撃は任せた!」
私は、クレーターの中央めがけて走った。
すると、突然地鳴りが聞こえ始め、小さな爆発音が発生し、辺り一面砂埃が舞った。
「なんだ……前が見えない……」
しばらくして、地鳴りと砂ぼこりが収まる。
すると我々の目の前に、20メートルぐらいの巨大なロボットが現れた。
ロボットは人型。ボディーは銀色に輝き、丸みを帯びていた。
ゴーレムと比較すると、断然こちらのほうが美しい。
両腕に装備したドリルが機械音を立ててゆっくりと回転している。
そして、目を赤く光らせ、私たちを威嚇する。
『警告……ここから立ち去れ! さもなければ、死、あるのみだ』
低い声のマシンボイスが、辺りに響き渡る。
「あああ……あのドリル……すごく……力強そう……」
私は、その立派なドリルを見て思わず挑発してしまった。
「おい、ロボット! そ……そのちんけなドリルは使えるのか!」
『なん……だと……貴様……この私の大事なドリルを侮辱したな……許さんぞ……』
どうやら、挑発はピンポイントで成功したようだ。
ロボットは、ドリルを高速回転させて腕を振りかざす。
「お……怒らせてどうするんですか……」
エミリアは、足をガクガク震えさせながら杖を構えて嘆いている。
「心配するな、それより、相手の攻撃をよく見るんだ。必ず隙ができるはずだ」
「は……はい……そういうことなら……」
エミリアは納得したようだ。これで思う存分…………。
「私もやりますわよ……早く魔法を使わないと、マナバーンしてしまいますわ……」
その間、エリザは詠唱を始める。
「ロボットのドリルとエリザの召喚魔法……ハァハァ……ああっ! 興奮が止まらない!」
私は本能の赴くまま、巨大ロボめがけて突進した。




