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第一話 追放

 私は、クッコ・ローゼ。姫騎士という立場にありながら、冒険者ギルドのトップランカーパーティーに所属していたのだが……。


──ギルド酒場──


 私は、今回のクエストの反省会で怒鳴られていた。

 怒鳴っているのは、パーティーリーダである戦士のザックだ。


「おい、クッコ! おまえなぜクリスタルドラゴンのヘイトを受けまくったんだ! おかげでこっちまで死にかけたぞ!」

「そ、そんな! 私はただ……クリスタルドラゴンの気をそらして、その間に……」


 言い訳をしようとした。だが、そのとたんにザックの口調が今まで以上に荒くなる。


「何を言う! おまえ、死にかけてたじゃないか! おかげで回復に入ったアリスまで、死にかけたぞ! おかげで変なトラウマがついちまった」

「そんな……死にかけるのはいつものこと……いつも私が前線に立って、ヘイトを受けてるじゃないか!」

「今回は目的が違うんだ! クリスタルの盃の奪取任務だったんだ。あんな面倒な奴を相手にする必要はなかったんだ。それにお前は毎回厄介事を引き寄せてくる……俺たちに何か恨みでもあるのか」

「それは……その……(こ……こんなこと言えない……前線に立って敵になぶられるのが好きだなんて……)」

「お前はこのパーティーから追放だ! 一度、ソロに戻って反省しろ!」

「そ……そんな……私は……」


 どうやら私の弁明は聞き入れてはもらえそうになかった。パーティーメンバーの証である書状をリーダーのザックは私の目の前で破り捨てた。


「これでお前は野良だ! 私のパーティーとはもう、関係ない。どことなりとも消え失せろ!」


 こうして私は、パーティーを追われることとなった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 私は一人だ。

 もう、仲間と熱く語り合うこともできない。

 それもこれも、私の性癖のせいだ。これさえなければ私は……。


 そんなことを考えていると、目の前に、最弱のスライムが現れた。

 私は思わず…………。


「クッ! 殺せ!」


 と、大の字に地面に寝そべった。

 もちろん、今の私のレベルでは殺されることはない。

 ただ、どうなってもいい。そんな気分だった。


『ジュルルルル』


 スライムは、ゆっくりと私の体をなぶる。


「あれ、なんだこれ……気持ちがいい……」


 いつも戦っていたころは、一撃で倒してしまう敵だった。攻撃を受けたことなど一度もない。けれども、いざ攻撃を受けてみると…………。


「ああっ! なんてヌルヌルなんだ! そうか、お前はそんな攻撃をするのか! よし、いいぞ! もっとやれ」


『ジュルルルル』


「もっと! もっとだ!」


『ジュルル……』


「さあ!」


『ジュルル……』


 癖になる快感だ! ただ、体にまとわりつかれているだけなのに、そのヌルヌルからは怪しい刺激がくる。さらには、服を溶かして私を辱める。


「こんな快感があったなんて……」


 だが、私がもだえ動くたびにスライムはダメージを受け、しばらくすると消失してしまった。

 幸せな時間は長くは続かなかった。

 やはりスライムは弱い。レベルの差というのはこんなにも残酷だ。


 今までパーティーに属していたせいで、リーダーに言われるがまま攻撃してきた敵たちだ。なので、攻撃を受けたことは、ほぼないといっていい。

 だが、この雑魚モンスターたちは、実はものすごい快感をくれるのではないか。

 そう思い始めた。


 もしかすると、パーティーを抜けてよかったのかもしれない。

 リーダーの目を気にすることなく、敵になぶられていいのだから。


 ならば、答えは一つだ!


 さあ、行こう。

 今まで味わったことのないモンスターの攻撃を感じるために!


 そういうわけで、私のなぶられ旅が始まるのだった。



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