第3話 閑古鳥は忘れている
雨が降っていた。
しんしんと……。その雨は外の気温を下げ室内に水気を含ませた。
書斎
この城の主人は紙の本をとても大切にしていて、雨の降る日は本を気にして落ち着か
なくなる為、念入りに掃除をしている。
城内はとても静かだ。
もう数十年前に自分以外の使用人は立ち去ってしまったから誰もいないのだ。
雨の降る音。
自分の呼吸音。
めくってはしみや文字のかすれを確認
する、本の紙が擦れる音……。
耳鳴りがしそうなほど静かで退屈になるほどに長い時間が流れていた。
―にゃーん―
と、どこからか聞こえるはずのない鳴き声がした。
この城に猫を招き入れた覚えはない。
ーにゃーんー
もう一度聞こえた。空耳などではないようだ。
足元を見渡してみると、なにもいなかった。
「ずっと、ずっとだ……。私がいる所だけ、静かで寂しい。この城はもうずっと
白と黒のまま! 何処を見ても癒されないし、楽しくない。気持ちはますます沈むばかり……。白と黒ではつまらない!! 」
額を押さえ、身の内に溜まった毒を言葉にして吐いてみるが現実は変わらない。
「……頭が割れそうだ。耳鳴りもする……何故だ! 」
叫んでもなにも変わらず、誰の返事も無い。
代わりに空から降る雫の数だけ雨粒の音がした。
……閑古鳥が啼いた……。
小さくて黒い猫は蝋燭の火のように、光る目をゆらりとさせて走り去る。
お待たせしました。
作者は天ぷらが食べたくて仕方がないです。
雨は霧雨または土砂降りが好きです。