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プロローグ~口の悪い男~
とてもだらしのない男がいた。
墓に納めたかったが指がどこにも見つからなかった。
頭はベッドの下の奥の方にころがされていた。
手足は部屋のあちらこちらに散らかっていた。
ーマザー・グース『とてもだらしのない男』ー
男は口が悪かった。
思ったことを何でも口にし、人々を困らせ傷つけた。
ある時男は、傷つけてはいけない人を傷つけてしまった。
すぐに謝ったが許してもらえず、償いとして色を失い、
人を傷つけると身体がばらけるようにされたのだった。
色のない世界、ばらける自分の身体。
男は身体がばらばらになるたんびに拾い集めた。
ばらけるたんびに拾い集める自分の身体。
男は指がひとつ足りないことに気がつく。
ただ、その時には遅くて探し回れど見つからなかった。
男は色のない城で自分の身体を集めることを諦めて、
人の寿命を越えて長い年月を抜け殻のように過ごした。
命の輝きがひとつ訪れるまでは……。