3 (アラン視点)
「う…」
まぶしい。
ここはどこだろ?
あったかくて、ふわふわして、きもちいい。
「アラン?」
知らないおへやだ。
「…フィア」
いとこのソフィアの、まるい目がもっとまるくなった。
ぼくはベットの上にいた。
「あなた大丈夫なの?いきなり倒れたけど」
元気がないソフィアが、ぼくの顔をじっとみている。
ぼくは、ソフィアがいきなり走って、びっくりしておいかけた。
ソフィアはとても足がはやくて、ぼくはすごくがんばっておいかけた。そしたらソフィアにぶつかってしまった。
「…めんなさい」
いたいことをして、ごめんなさいをいわないといけない。
ちゃんとごめんなさいといおうと思ったのに、ぼくのこえはとても小さい。
ソフィアはおこってるか、わらってるかわかりにくい。けど、いまは、ぼくがなにを言ったのかわからないという顔にみえた。
もういっかい、いわないと。
しんぞうがドキドキしている。ソフィアは、ぼくがしゃべっても、きっとこわいかおを、しないできいてくれる。ぼくがうまくありがとうをいえなかったときも、まってくれた。
ソフィアは、ぼくの目をみても、きもちわるいとか、きれいとか、モノみたいにいわない。ぼくがだまっててもこわいかおをしない。
「あの、ソフィア、ごめん、なさい」
さっきより大きいこえがでた。ソフィアは、目をパチパチした。
「…別に謝ることじゃないわ。私が止まったから、ぶつかったんでしょ。あと、これは貴方の大事なものなんでしょ。ちゃんと自分で持っていた方がいいわ」
ソフィアが、ベットのよこにおいてある、ぼくが作った氷をぼくにくれた。
これは、ちがう。ぼくは、ソフィアにあげようと思って作った。
ぼくはちがう、ちがう、と首をうごかした。
ソフィアにあげる。
ソフィアは、じっとぼくのことを見ている。
「…私にくれるってこと?」
わかってくれた。
ぼくは2回、うん、と首をうごかした。
「ソフィア、あり、がとう」
「えっと、なに、が?」
ソフィアはいつも話すのがとても上手なのに、いまはぼくみたいに下手だ。
「私はあなたにお礼を言われるようなことをしてない」
したよ。
ぼくは、はじめてソフィアにあった日から、ずっとありがとうといいたくて、その氷を作って、ずっとポケットに入れてもってた。
ぼくは、おじさんのへやで、じっとしてたとき、ソフィアがとびらをあけた。ぼくはおこられるとおもったけど、ソフィアはおこらなかった。
べつの時には、ソフィアはなにもいわずに、本のところに、へやのすみっこにあったはしごをもってきて、どうやって本をとればいいのかおしえてくれた。ぼくはソフィアのマネをして、なんとなく、好きな本をえらんだ。
ぼくが本をえらんで、近くにすわっても、なにもいわなかった。なんとなくえらんだ中に、きれいな石のえがたくさんかいてある本があった。
とてもきれいで、ぼくはすごくたのしくなった。きづいたら、ソフィアはいない。
へやの外もまっくらだった。ぼくはこわくなったけど、へやはくらくないってきづいた。ソフィアが、へやをでる前に、机の上にあった、あかりのまじゅつどうぐを、ぼくのそばにおいてくれていたからだ。
ぼくのためにあかりをつけてくれた。
「ありがとう」
ぼくはぜんぶを上手にしゃべることができないとおもう。
もういっかい、ありがとうだけいった。
「…アランはほとんど喋らないくせに頑固なのね」
「がんこ?」
「私がなにを言っても、アランの気持ちが変わらないってことよ。私はお礼なんていらないっていってるのに、アランは絶対にありがとうって言うでしょ?
そう言うのを頑固って言うの」
ぼくのことを「がんこ」というソフィアはあまりうれしそうじゃない。
でも、ソフィアは、ぼくの作った氷をポケットに入れてくれた。
ぼくはしゃべるのが下手だけど、ソフィアはおこらないできいてくれた。
とてもうれしくなった。