Reload(再装填)
「おめでとうございます。・・・さてあなたたちは何を願いますか?」
妖精のようなものが俺たちに尋ねる。
「俺の・・・」
仲間の顔を見ると彼女は静かにうなずいた。
「俺たちの願いは・・・!」
「待て!俺も・・・」
第一話『Reload(再装填)』
「よし・・・。ネロー、薪割り終わったよー!」
僕の声を聞いてドアの修理をしていたネロがこちらを向く。
「おお、ご苦労!こっちもあと少しだ。これが終わったら昼飯にするか!」
「これが終わったら昼飯に、って・・・作るのは私なんですけど!!」
修理しかけのドアを開けながらルーシーが言う。
「おいおい!せっかくあと少しだったのに!!」
「ドアなんて壊れててもいいじゃない。ここは平和な場所よ・・・。」
「お二人さんの夫婦漫才はもう見飽きたんですがねぇ。」
猟から帰ってきたフィルが二人のやりとりを見て冷やかしながらいう。
「今日も平和だね。」
僕の言葉を聞いて三人は感慨深そうな表情をした。
「仕方ないわね、お昼ご飯にしましょうか!」
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僕がここに来てもうすぐ3年が経つ。
僕と出会う前、彼らは長い間旅をしていたらしい。どんな旅だったのかは教えてくれないが、この平和な世界での旅なのだからきっと深い意味はない、そのままの意味の旅だったのだろう。まぁそんなことはさておき、彼らは旅の途中僕を拾ってくれた。僕は小さいころ家族を亡くしてからずっと一人だった。一人でいることに慣れていて最初は彼らにも心を開くことができなかった。でも彼らと暮らしていくうちに少しずつ心を開くことができるようになった。
「そういえば旅はまだ再開しなくていいの?」
僕の質問を聞いて三人は目配せをした。
「もう旅は終わった。」
ネロが答える。
「それって僕のせい?」
「お前のおかげだよ。」
よくはわからなかったが深く尋ねようとは思わなかった。
「まぁお前が旅したいっていうならそのうちしてもいいぜ。」
フィルが笑いながら言う。
「そうね。次はきっと楽しいたびになるんじゃないかな?」
旅か・・・。僕ももっと多くの世界を見てみたいとは思っている。
「約束だよ?」
「ああ、約束だ。」
ネロが笑顔で答える。
『ドォーン!!』
そのとき遠くで大きな音がした。
「なにごとだ!?」
ネロがそういうと三人は家の外に走っていった。
「ちょっ、ちょっと待ってよ!!」
僕もあわてて外へ向かう。外に出ると遠くの村の方に火が見えた。
「おい、あれ見ろ!!」
フィルが村の上空を指差して言う。
フィルの指差す方をみると空から小さい何かが村に向かって降下しているのが見えた。
「とにかく行くぞ!」
そう言って走り出したネロに僕たちはついていった。
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村に着くと建物が燃えていた。
村の中では村人が傷ついて倒れていたりしていた。僕は目の前の惨劇にただ呆然とするしかなかった。
「何があったんですか!?」
ルーシーが怪我をして倒れている村人に聞いた。
「何かが空から降ってきて・・・村が・・・あぁ!」
恐怖に怯える村人が指をさすを見る。
『シュー・・・シュー・・・』
そこにはガスマスクのようなものをつけた人型のものが数体立っていた。
「ルーシー、お前はみんなの回復を頼む。フィル、行くぞ!」
「わかった!」
「おいおい、戦いはもうないんじゃねーのかよ!?」
三人の会話の後、ネロとフィルはガスマスクのほうに走っていった。
「ねぇ、ルーシー!何が起きてるの!?」
「説明は後!」
そういうとルーシーは村人の傷口に手を当てた。
「いま直しますから!」
ルーシーの手が緑色に光る。するとだんだん村人の顔から苦痛の表情が消えていった。
「な、何が・・・。ともかくありがとう!」
「いえ、ではほかの人のところへ。一緒に行くよ!」
そういうとルーシーはあっけにとられている僕の腕を引っ張って走り出した。
「ルーシー!今のなんなの!?」
「説明は後!」
ルーシーは答えてくれなかった。
「おらぁ!!」
少し離れたところからネロの声がする。
「ネロっ・・・!?」
声のする方を見るとネロとフィルがガスマスクたちと戦っていた。しかも不思議な力を使って・・・。
「あーまったく。力を使うのは何年ぶりだぁ?少しなまってんなぁ・・・。」
もう何がなんだかわからない。僕はただルーシーについていくことしかできなかった。
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しばらくの間僕はただ呆然としていた。どうやらその間にひと段落着いたようだった。
「戦いなんてもう無いと思っていたんだがな。」
ネロが服を調えながら言う。
「全くだぁ・・・まぁ俺は戦いが嫌いなわけじゃあないがな。」
「もう全部終わったと思ってたのに・・・」
フィルとルーシーは近くの井戸に座った。
「どうやら俺たちは勘違いしていたらしい・・・」
ネロは思いつめた顔をしながら村人たちの方へ向かった。
「みなさん、大丈夫ですか?とりあえず今のところは落ち着いたようです。」
「あぁ、なんとお礼を申したらいいか・・・。それにしても不思議なものを使われるのですね?」
村人の言葉にネロは右手を左手でさすった。
「えぇ、昔いろいろありましてね・・・。」
ネロの言葉にフィルとルーシーも暗い顔をした。彼らは何か僕に隠し事をしているのだろう。僕はどうしたものか、と頭をひねっているとどこからか声がした。
『ここなら簡単に征服できると思ったのですが・・・どうやらそうでもなかったようですね・・・。』
落ち着いてはいるが同時に冷たさを持つような声だった。
「お前たちは何者だ!?」
珍しくネロが声を荒らげた。
『あなたたち、どこかで見たことがあるような・・・、まぁいいでしょう。私たちはここではないどこかからやってきたものです。いわば・・・”侵略者”でしょうか?』
侵略者?なんでこんなところに?
「私たちはさまざまな場所をめぐってきました。しかし多くの場所には私たちの侵略の障害となる強大な力がすでにありました。私たちはどうしても侵略を成功させたい・・・それには平和な場所が一番でした。そして今回はここにたどり着いた、ということです。」
「だぁが、ここには俺たちがいる。さっさと立ち去れ!」
フィルが空に向かって怒鳴った。
『残念ですがそれはできない。もう私たちは移動できないのです。・・・それにここには絶対的な支配者がいるわけではありません。大丈夫です。侵略できます。』
「せっかく・・・せっかくここまで来たのに!」
ルーシーは悔しそうに泣いている。
『では、また来ます。』
その言葉を最後に謎の声は聞こえなくなった。
「いったい・・・何が起きているんだ・・・。」
その日世界は一変した。