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平凡男子の無茶ブリ無双伝  作者: おもちさん
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第34話  世界で起きていること

「たっだいまー、レインくん元気……オッフゥ」

「ミリィ、急に止まるなんて何かあった……エッフゥ」



グスタフとミリィが拠点に帰ってきた。

そして、僕の姿を見た第一声がこれである。

無理もないとは思うけど、決して傷つかない訳じゃない。



「エルザにキッチリ鍛えられたようだな。立派だぞ!」

「なんていう神々しさなの! いっそ彫刻にして飾っておきたいくらいだわ!」

「おかえりなさい。とりあえず、立派とだけは言わないでね」



何が嬉しいのか2人は大興奮だ。

ため息なんかよりはマシだけど、恥ずかしいから騒がないでほしい。



「じゃあ早速で悪いけど、外の話を聞かせてくれる?」

「おっと、まずは報告からだな。あとでゆっくり特訓の話を聞かせてくれ!」

「昼はエルザを、夜はオリヴィエを槍で突いたのかしら?」

「ミリィもゲスな顔してないで座ってよ」



前のめりになっている2人を席に座らせた。

久々に5人が揃ったのだけど、まずはお互いの情報の擦り合わせからだ。

僕が特に知りたいのは、各地で報告されているという悪い噂。

ほとんど拠点に籠りきりだったから、外の状況について知りたかった。



「まずは空の異変についてだ。多少値が張ったが、ちゃんとした筋から情報が得られたぞ」



数週間前からだろうか。

東の方の空が、一部分だけ赤紫色に染まるようになったのだ。

最初は遠くで山火事が起きてるのかと思ったけど、どうやら違うらしい。

村の人たちも「悪いことの前触れだ」と口を揃えて言う。



その光はどこか不快で、心をざわつかせる。

眺めていると、何とも言えない焦りや不安に苛まれるのだ。



「あの光のもとは、中央大陸で間違いない。発信源はイスタの街周辺のようだ」

「イスタ……」

「実際に王国から調査隊が出された。一戦も覚悟の一団だったが、現地では何事も起きておらずに日常そのものだったらしい」

「それは確かなの?」

「金で買った情報だ。噂話よりはずっと信用できるぞ」



中央大陸の東部にあるイスタの街は、僕が2番目に利用した所だった。

顔馴染みと言えば武器屋のおじさんくらいしか居ないけど、無事なようでひと安心だ。

あんな気の良い人に何かあったとしたら、相当に落ち込むと思う。



「今のところ事件らしい事件もないから、街の住民に対しては注意喚起に留めているようだ。いつでも逃げる準備を促しているとか」



何も起きていないのであれば、住み慣れた家を離れたりはしないだろう。

誰にだって仕事や繋がりがあるんだから。

逃げ出すとしたら、命の危険を感じ始めた頃にだろうか。

手遅れにならないうちには動き出してほしい、そう願うばかりだ。




「もうひとつは、大神殿の異変。神聖視されていた湧き水が枯れたことについてだ」

「信心深い人は特に騒いでたよね。実際はどうなの?」

「まだ自分の目で見ちゃいないが、どうやら本当らしい。多くの目撃証言が得られた」

「レインさん。実際に確かめに行く事は難しいでしょうか?」

「やっぱりオリヴィエとしては、キチンと確かめたいのかな?」

「はい。もしかすると、何かお手伝いができるかもしれませんし」



真剣な顔でオリヴィエが言った。

今まで口には出してなかったけど、心中は穏やかじゃなかったみたいだ。

僕の特訓が終わるのを律儀に待っていてくれたんだろうか。



「じゃあ行ってみようか。場所は遠いの?」

「大神殿はこの大陸の南方にあるぞ。行くなら案内をしよう」

「よろしくね。じゃあ、今度はこっちの話をする?」

「おっし、待ってました! 一体どんなシゴキだったんだ?」



ひたすら素振り、そして実践訓練。

その話を多少マイルドにして話したつもりだけど、ミリィにとっては衝撃だったらしく、口を大きく開けている。

それとは対照的に、グスタフは納得したように頷く。



「何よそれ! ただの暴力じゃない!」

「いやいや、マシな方だろう。指導者次第ではさらに目隠しをしたり、両足を縛ったり」

「えぇ……。前衛職ってそんな事するわけ? 魔術師で本当によかったぁ」

「魔法系の人ってどんな訓練をするの?」

「基本的に詠唱や書見よ。あとは先生と問答ね。『人々は風を認識するが、それが何処からやってきて、何処へ去るかは知らない。なぜか?』なんて質問に答えたり……」

「僕はそっちの方が嫌だなぁ。体を動かしてる方がまだ気が楽だよ」



いずれにせよ、相応の苦労が必要ということだ。

寝転がりながら成長なんてできないのだから。


それからは他愛の無い話で夜を明かした。

グスタフが少年詐欺師に騙されかけた話やら、ミリィが人喰いアリの巣に嵌まりかけた話など、聞き応えのあるものばかりだった。



「ところでレイン神」

「なに、ミリィ。神もやめて」

「オリヴィエもエルザさんも槍で突かれたのよね? 私だけまだなんだけど」

「当たり前じゃない。やる理由がないもの」

「そうよね。本物の槍なんか危険よね。じゃあ槍っぽいものでお願いね」

「何言ってるかわかんないよ」

「ほら、もう一本あるでしょ? 出し惜しみしてないでさ。そっちの修練も大切で……」

「じゃあ明日も早いし、そろそろ寝ようかー」



僕は強引に切り上げた。

ミリィが『オモチャを取り上げられた犬』みたいな顔してるけど、当然の帰結だと思う。

彼女の見た目からは想像できないほどのセクハラ気質、これもエルザさんに頼んで矯正してもらおうかな?

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