表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡男子の無茶ブリ無双伝  作者: おもちさん
32/51

第27話  お兄ちゃん判断

森の中に住もう。

言うのは簡単だけど、実行するとなると大変だ。

木を伐り倒し、切り株を退けて、水源を探し出し、家具を用意して、田畑も作り、毎日の食料の用意魔物の撃退オリヴィエとミリィの空中戦争奪戦……。


もう、目眩がする程の忙しさだ。

おかげで落ち込んでる暇すら無くなったけど、同時に体を休める時間も無くなってしまった。

人生とはなんとも歪なものだとつくづく思う。


そんな日々の中、慣れない作業には怪我がつきまとった。



「痛いッ!」

「レインさん、大丈夫ですか?」

「いてて。金槌で手を……」



ちょっとボンヤリした時に、手を思いっきり叩いてしまった。

手の甲が紫に変色しはじめる。



「これは大変。すぐに対処しますね」

「お願いするよ……って何してんの?」

「硬いもので挟んでしまったなら、次は柔らかいもので挟まないと」



そういってオリヴィエは僕の手を胸元に導こうとする。

こんな時は、今までだったら僕が一言返して終わるんだけど、最近はそうはいかない。

ミリィが横からちょっかいを出すからだ。



「ちょっと待った。胸の大きさ、柔らかさにかけては私の方が断然上よ!」

「いやいや、今のはそんな話じゃないんだよ」

「そうですよ。大小はどうでも良くて、『誰のおっぱいであるか』が重要なのです」

「それも違うからね?!」



こんな風にどんどん話がこじれていくのだ。

こっちは手が痛いって言うのに、形がどうの、色がどうとか白熱の議論が繰り広げられる。

そして『変な意味じゃなくて』揉み合いが起きた頃、女神様が話しかけてきた。

それが混乱に拍車をかけたのだ。


なにせ邪神の復活に備えろとか言うのだから、僕はもうすっかりパニックだ。

手は痛いし、オリヴィエたちは言い争いを再開するし、邪神に備えろと言ったっきり女神様は消えちゃうし。

グスタフがここに戻ってくるまで、僕たちは混沌の極みにあった。



「邪神……ねぇ。神託とやらをリーダー以外に聴いてないんなら、信憑性が薄いかもしれんぞ」



現場を見ていないグスタフは懐疑的だ。

確かに突然『悪い神が復活します』なんて言われても、普通は信じないだろう。



「うーん。以前は女神様の言葉を頻繁に聞いてた訳だから、これも空耳とかじゃないと思うよ?」

「勘違い、聞き間違いってセンもあるだろう。オリヴィエあたりも聴いてたんなら、すり合わせが出来るんだがな」



僕らの兄貴的存在グスタフ。

粗暴なようで実は理知的、良心的なグスタフ。

その彼が言うのだから、一理あるんだろう。



「他に何か言ってたか? 例えば邪神復活の阻止についてとか、撃退法とか」

「ううん、何も。レベル上げとけ、としか」

「じゃあ気にするだけ無駄だな。情報が何もないんじゃ動きようがない」

「そりゃそうだけど……どうにも不安でさ」



僕の思い違いだったら良いけど、もし本当だとしたら?

そう思うと安心できなかった。

ボンヤリ過ごしていたら、取り返しのつかないことになりそうで。



「だったら当面の目標をレベル上げにしたら良いさ。ひとまず上級職を目指すってのはどうだ?」

「上級職?」

「レベル30になるとワンランク上の役職が与えられるようになるし、基礎ステータスも上がるんだ。大神殿に行く必要があるから面倒だがな」



グスタフの提案はシンプルだった。

不安なら強くなれ。

そして上級職を目指せ、と言う。

確かにそれは理に叶っているし、ゴールもわかりやすい。

気を病んだままで居るよりはずっと建設的だった。



「レベル30ってのは遠いけど、みんなで頑張って上級職を目指そう!」

「わかりました。私も頑張りますね」

「経験値稼ぎならアタシに任せて。魔法で倒してガッポリだからね」



そこで僕は気づいてしまう。

気づかなきゃ幸せなのに。

そして言わなきゃ良いのに、口をうっかり滑らせてしまう。



「変態の上級って、なんだろうね?」



辺りは水を打ったように静かになった。

疑問への答えはもちろん、慰めの言葉も聞こえてこない。

これは、完全に僕が悪いと思う。

もし逆の立場だったとしたら、何て言ってあげればいいかわからないもの。



「ともかく、家を建ててしまおう。今後の事は拠点が形になってから考えれば良い」

「うんうん、そうしようか」



沈黙を破ったのは、仕切り直しにピッタリの言葉だった。

本当にグスタフは頼りになる。

戦闘でも日常でもお世話になってしまって、本当に申し訳ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ