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平凡男子の無茶ブリ無双伝  作者: おもちさん
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第11話  芸人枠

王都に着いた僕たちはしばらく呆けてしまった。

見渡す限り人、人、人! だった。

大通りは家がすっぽり収まりそうな程の幅があるのに、人々はお互いの体を擦りながら歩いている。

あの中を目的地まで移動するのは至難の技だろう。


オリヴィエと僕は『せっかくだから街中を観光しよう』なんて言ってたけど、これは無理だ。

グスタフの『いいじゃねぇか、出来たらだがな』なんて含みのある言葉がようやく理解できた。


意を決して人波に足を踏み入れる。

中はすごい熱気だ、小競り合いでも起きてるのか怒鳴り声も聞こえるし。

王都に住む人はよく生活出来るよなぁ。



「今は大会期間だからな。普段はここまで混まねぇだが、会期中は毎度こんなもんだ」

「そうなんだ、よほど人気があるんだね。大人も子供も集まるなんてさ」

「まぁお祭りだ。観戦目的じゃなく来るヤツも多いぞ」

「お祭りはいいですね。そしてこれだけ人が多いと、私たちの風体も目立たないですね」

「……目立ってない訳じゃなさそうだよ、オリヴィエさん」



みんな体をぶつけるようにして歩いているのに、僕たちの回りはうっすら隙間が出来ている。

前後左右の人が避けているからだ。

ドサクサに紛れることすら叶わない自分の身の上を呪いたかった。



「え、団体戦やってないんですか?」

「そうなんですよ。今年は大闘技場の改修がありまして、会期に間に合わなかったのが理由ですねー」



なんとか闘技場受付にたどり着いた僕たちは、早速出鼻を挫かれてしまった。

今回は個人戦はこれから開催みたいだけど、どうしたもんかな。



「リーダー、腕試しに出てみたらどうだ?」

「え、僕が? きっとすぐ負けちゃうよ」

「そのマイナス思考を矯正するためにも出た方がいい。勝っても負けても人生の財産になるぞ?」

「大丈夫です。レインさんが敗けそうになったら、相手に天罰を落としますので」

「オリヴィエさん、シレッと不正を口にするのはやめよう」



特に反対する理由もなかったので、渋々ながらも出場する事に。

そのとき受付の人からこんな事を聞かれた。



「所属チーム名はどうしますか? 別に無くても構いませんが」



チーム名ってあれだよね、赤竜の牙とか銀羽の鷹とか、かっこいい名前のヤツだよね。

言われてみれば、うちらにはそんなもの無かったな。


「チーム名か。何でもいいんだが名前負けしない様な、ほどほどのモンがいいぞ。笑い者になっちまうからな」

「それって難しいなぁ。疾風のナントカ、ナンチャラの彗星とか?」

「うーん、別に『速さ』をウリにしてる訳じゃないしな。実態から離れすぎても良くない」

「えぇーっと……どうしようかなぁ」

「レインさん、私に良い考えがありますよ」



こうして僕たちはオリヴィエの案を採用したけど、これ大丈夫かな?

今からすごく不安なんだけど。


それから僕は控え室に、オリヴィエたちは観覧席の方に回った。

久々の単独行動は妙に心細く感じる。

少し前までは独りきりだったのにね。


通された部屋はルーキーリーグの控え室で、中には何人かの出場者が待機していた。

メジャーやベテランリーグの部屋も一瞬見えたけど、あっちはおっかない。

視線が合っただけで殺されそうだった。

ちなみにレベルが15未満はルーキー、25未満はメジャー、それ以上はベテランになる。

レベル12になっている僕は当然ルーキーだ。

周りの人もそんなに強そうじゃないし、ひょっとしたら善戦できるかもしれない。

御前試合らしいし、頑張ってみようかな?



しばらくして、闘技会場に呼び出された。

いよいよ出番らしいけど、ききき緊張する。

会場からは観客の大歓声と、進行役のアナウンスが聞こえてきた。

自分の名前が呼ばれたら入場する段取りだけど、すごく不安だなぁ。


『チーム……より、…………さん!』

ワァァァァー!


前の人が呼ばれた、次は僕の番か。

注目されるのは苦手なんだけどなぁ。



『最後に……グフッ。チーム生真面目さん、よりチームリーダーのレインさーん!』


ドワッハッハッハ!


観客はまずチーム名を聞いて笑い、そして僕の姿を見てさらに大きく笑った。

そりゃこの見た目で生真面目さんとか言われてもね、冗談にしか聞こえないよね。

オリヴィエの言い分は『私たちの真面目さを全面に押し出しましょう』って言ってたけど、強く反対をするべきだったと今は思う。



『それでは出場者のみなさん、中央に置かれた武器を手に取ってください!』



あ、そうだ。

これから戦うんだった。

僕は慌てて武器を取りに行った。


こうして、僕の力試しは始まったのだ。

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