ブラッディ・バースト
『対象となるプレイヤーの【鑑定】を始めます。私をあの女性にかざしてください』
「お、おうわかった」
俺はその指示に慌てて対応した。
【鑑定開始】
また画面から閃光でも出てくるかと思い俺は咄嗟に目を隠した。
「………あれ?」
『12%…23%…40%、鑑定完了まで残り60%』
が、閃光などは無く、スマホは黙々とパーセンテージを読みあげる。
残り60%…40%までの進み具合から考えるとあと1分ほどで鑑定が終わるだろう。
それまで俺がするのは…あの子に自分の存在を悟られない事、息を殺してジッとこの場で待機している事だ。
幸い、あの子は俺よりも手練れとの事だ。助けに行かずともなんとでもなるのだろう。
「さて…俺より上の上位ランカーの実力とやらを見せてもらおうか」
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「イヤァァァァ!! 何よコイツら超キモいんですけど!! なんかネバネバするし生臭いしもう最悪!! 」
あのJKが言っている事はごもっともである。
そして、さらに問題なのはあの舌だろう。
伸縮自在でまるで鳥もちのようにベタベタとくっついてくる。さらに唾液には物を溶解させる物質が多く含まれているようで衣類などが溶かされてしまう。
一対一なら問題なく避けられたがあの多勢に無勢だ…果たしてどうするJKよ、このままでは衣服を溶かされヌルヌルドロドロの触手プレイの餌食になっちまうぜ。
おっといかんいかん、俺の下衆い部分が垣間見えたしまった、自重しなければ。
ほんの少し、金髪碧眼JKが触手プレイでヌルヌルドロドロになるところを妄想してしまったが、その妄想がなんとも儚い夢物語であったのだと、その後の彼女の戦闘を見て思い知らされる。
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「ああもうイヤ!! あんたらキモいし臭いし汚いのよ!! 3Kなのよサ・ン・ケ・イ!!そんな盛ってこられても女子はドン引きだってのよ!!」
3K…なんだか心をえぐられるような感覚があるのだが…自分の為にも気にしないでおこう。
「あんたらの相手はもうたくさん!! 大人しく消し飛んでちょうだい!!」
そう言ってJKは、手に持ったスマホを天に向け大きく息を吸い込み始めた。
彼女と同じプレイヤーだからこそわかる。
彼女は今、恥ずかしさを押し殺し自分の感情を殺し大技を出そうとしているのだと。
どんな技を繰り出すのかと体を起こしたその瞬間、
『98…99…100%!!鑑定完了、急いでこの場から離れてください!!巻き込まれますよ!!』
今までで一番の鬼気迫る声で俺にそう訴えてきた。
そんな声も出るのかと驚いてしまうほどだ。
「離れるって…充分離れてるじゃ」
『いいから早く!!』
【ブラッディ・バースト】
スマホさんの声が俺の鼓膜内に響き渡りその直後、技名がその後を追うように俺の鼓膜に突き刺さる。
ズドォォォォボガアアアアアアン!!!!
聞いたこともない巨大な爆発音、何かとてつもないものが迫ってくる…と、そう気づいた時には遅い。
凄まじい衝撃波、爆風と粉塵に俺の体は宙を舞い、なす術なく吹き飛ばされた。