異世界を舞台とした盤上のゲーム
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果てのない真っ白な空間。
この場所は、人々が日常を送る世界と少しずれた所に存在している。つまりは異空間ということである。
ここには宙に舞う幾千・幾万の鏡があって、その一つ一つが違う映像を映し出している。
映し出されているのは、召喚された各プレイヤーの様子だ。
ある者はモンスターと戦い、ある者は空を飛び、またある者は国を牛耳る。
プレイヤーを映す無数のそれらは宙を行き交い、不規則な軌道を描きつつも、この空間の主人である一人に向かい移動している。
ロキ「ふむふむ。どうやら全員召喚は上手くできたようね。あとは各々が上手くやってくれればいいんだけど」
自慢の赤髪の間からプレイヤーの言動に目を光らせる彼女の名は《ロキ》。
“自称賢神”にして、今回の騒動を引き起こした張本人…否、張本神である。
彼女は不敵に笑って、自身を取り囲むようにして浮かぶ数多の鏡を見渡した。
ロキ「彼らがそこで何をして、どんな影響を世界に及ぼしていくのか…楽しみでならないわ」
彼女はその高揚する気持ちを抑えつつ気味悪く顔を歪めた。
???「まったく…私の世界で異変が起こってると思えば、またあなたですかロキ」
ロキの創り上げた異次元空間に亀裂が生じた。
声はその亀裂の奥からロキの耳に届いたものである。
ロキ「あら…珍しいお客様ですこと。わざわざご足労頂き光栄至極だわ」
???「自分の世界を土足で踏み荒らされているのだから当然でしょう。悪戯好きの《悪神》さま」
ロキ「あらまあ悪神だなんて酷い言われようですこと。まあその言われようも嫌いではありませんが…」
???「神々でも随一の問題児であるあなたが…今回は何を企んでいるのです? 返答次第では私も実力行使といかせて頂きますが」
殺気が黒い煙のように具現化して、ロキを取り囲んだ。
ロキは顔色こそ変えないものの、その只ならぬ殺気には身の危険を感じた。
ロキ「まあ怖い。あなたと私がここで戦ってしまってはこの時空ごと消し飛んでしまうのでしょうね。でもそんなにギスギスしなくても大丈夫ですよぉ。あなたを、あなたの世界をどうにかしようなどとは全く思ってませんから。これはいわばゲームなんです」
???「ゲーム…ですって?」
ロキ「そう…これはあなたの世界を…異世界を盤上としたテーブルゲーム。数多いる駒同士の潰し合いに興じる一種の《遊戯》なんです。おわかり頂けたならその殺意をしまって頂きたいのですが…ダメですか?」
ニコニコと満面の笑みのロキ。
対峙する女神は疑問及び疑念を抱えつつも、殺気を引っ込めた。
???「わからないわね…そんな事をして何が楽しいのか。“本当”は何が目的なの?」
ロキ「目的なんて…いくら私が《賢神》だからって深読みしすぎですよぉ。まあ…強いて言えば、求めるものは《刺激》ですかねぇ」
???「《刺激》? どういう意味なの!?」
ロキ「せっかちですねぇ。気になるなら黙って見物しててくださいよ。幸いこのゲームはまだ始まったばかりです。いずれ来たるクライマックスまで一緒に興じていようではありませんか」
そう言うとロキは、その不気味な本心を笑顔の奥に隠したのだった。




