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リセマラして頑張る異世界奮闘記  作者: フルーツポンチ侍
1/12

リセマラ

「うーん…ああ、もう朝か…」



夜中のゲーム三昧の影響か、その日の起床は正午過ぎだった。


まあそれはいつもの事だから驚くことはない。


何時に起きても“特に用事もする事も無い”から焦る必要もない。


布団からゆっくりと起き上がり、カーテンを開ける。



「うわッ眩しい! 天気は今日も晴天か…こりゃ五日連続で真夏日だなw」


目が開けられないほどの閃光が陰気な俺の部屋に射し込んで、部屋の足の踏み場もないほどの悲惨な状況を照らしあげる。


カップ麺の空に食べかけの袋菓子、転がる酒のカンに無造作に脱ぎ捨てられた衣類…この絶景(絶望的な景色)を前にしては我ながらに呆れてしまう。


同年代カースト最底辺の現状が目の前のこの光景であることは間違いないだろう。



「そろそろ掃除もしないとな。でも、ここまでくるとどれから手をつけたら良いものやら…」


………………………。


「面倒臭いから掃除はまた今度にしよう」




さて、今日も俺の怠惰な一日が始まるわけなんだが…自分で怠惰なんて言い切るのもどうかとも思うが………まあいいか。


気だるさでため息を吐いた俺は、窓越しに何気なく外を見る。



「おお…寝起き早々に“虹”みっけ!! 日頃引きこもってるから虹なんて見るのは何年振りだ!? 今日はなんだか良いことがありそうな予感」



窓越しに見えた綺麗な虹…


虹を見るとなんだかラッキーな気持ちになるのはみんな共通の事だと思う。


俺もとってもラッキーな気分だ。


今はしゃいで声に出した通り、なんだか今日はいつもと違う凄いことが起こりそうな気がしてならない。


と、なんの根拠もない若干の期待を胸に、今日も俺の“怠惰”な一日が始まった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


特にする事も無いので、ソファーに寝そべってどうでもいい考え事をする。



ひたすらに時間を浪費するだけの毎日に充実感さえ覚えて来た今日この頃。


汗を流し勤勉に毎日の仕事を頑張る社会人の皆様はいかがお過ごしでしょうか?



季節は夏…



外には生物が死滅してしまいそうなほどの灼熱の殺人太陽光が燦々と降り注いでいるようですね。


紫外線はハゲを進行させると言いますからご注意を…


そして、今日の気温は35℃を超えると聞きます。


外回りで営業をされる方、クーラーもついていない社畜な会社に勤める方、俺はそんな方々の健康を心より願っております。


ちなみに、“ニート”で“引きこもり”なわたくし…伊月光(イツキヒカル)は、クーラーのガンガンに効いたこの部屋でゴロゴロできている今がとても幸せです♡



ほら、本当にどうでもいい考え事だっただろ(笑)



「さーて…今日もどれだけ怠惰な一日を過ごそうか」



………ブブゥッ!!



日頃鳴る事の一切無い、俺のスマホからバイブ音が響き渡った。



「ひゃっ!?」



驚きのあまり自分の声帯からとんでもない声音が飛び出してしまった。


スマホのバイブ音で何をそんなに、と思うかもしれないがこれには理由がある。



理由…それは引きこもりニートの俺にとって、スマホは片手サイズで持ち歩き便利なパソコンというような存在と化しているからだ。


メールのやり取りはもちろん誰かに電話をかける事もない (メールをする相手も電話をする友達もいないため…)。


なので、携帯としての役割なんて最近いつ果たしたか…と考え込んでしまうほどなのだ。


久々に聞いたスマホのバイブ音にびっくりして、変な声音をだしてしまったのも…まあしょうがないだろう。



「びっくりしたぁ、何だよまったく…メール?? 友達なんて一人もいないし親にも変更したメアドを教えてないはずなんだけど………」


………………………グスン(T ^ T)。



自分で言っておいて若干悲しくなってしまった。



スマホ画面上に表示された通知をタッチすると一つのメールに画面が切り替わった。




ーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー




差出人:異界の賢神


宛先:○○○○○○○@i.softbank…


ーーーーーーーーーーーーーーー


新作アプリリリース!!



タイトル:『Another~ありふれた異世界召喚』



チュートリアル無し!!


ボタン一つで超高速リセマラが可能!!



星3☆以上のキャラ確定キャンペーン中!!


星3☆200種類

星4☆50種類

星5☆25種類

星6☆10種類



《リセマラオススメキャラ》


☆☆強さと格好良さが魅力☆☆


“騎士王”


レア度☆☆☆☆☆


=戦闘能力 =

体力 680

攻撃力 750

防御力 720

素早さ 850

魔力 700

賢さ 800


※上記の能力値はレベルMAX時表記です。


=特殊能力=


【魔力探知Lv.2】


【剣技Lv.3】


【カリスマLv.4】



☆☆富と権力が欲しいなら☆☆


“大国の王”


レア度:☆☆☆☆☆


=戦闘能力=

体力 50

攻撃力 50

防御力 50

素早さ 50

魔力 50

賢さ 999



=特殊能力=


【財力 Lv.MAX】


【権力 Lv.MAX】


【堅実 Lv.4】


【カリスマ性 Lv.3】



☆☆最強を目指すなら☆☆


“魔王”


レア度☆☆☆☆☆☆


=戦闘能力 =

体力 ???

攻撃力 999

防御力 ???

素早さ ???

魔力 999

賢さ ???



=特殊能力=


【魔力探知 Lv.5】


【??? Lv.5】


【??? Lv.5】


【悪運 Lv.4】


【#竜殺し__ドラゴンキラー__#】


【破滅 Lv.4】





さあ、今すぐ初めて最強の転生者を目指そう!!



リンクは下



↓↓↓

ここをタッチ




ーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー



スクロールして確認すると、それは絵に描いたように怪しい内容だった。



「何これ怖い…まず差出人が自分で自分の事を“賢神”とか言っちゃってる時点でまともじゃない希ガス」



早々に閉じようとも思ったが、なんだかこのアプリがとても気になってしまい思い止まってしまった。


そして、画面をスクロールしてまた一番上から読み直す。



「アナザー…“ありふれた異世界召喚”…………異世界召喚の時点でありふれた事ではないと思うのだが?」



タイトルにダメ出しをしている最中も何故かこのアプリについて気になって仕方がない。



↓↓↓

ここをタッチ



それをタッチすべきかしないべきなのか、脳内で悶々と葛藤する自分がいる事にまず驚きだ。



こんなのタッチしていいわけがない。


タッチしてもアプリに飛ばない可能性だってあるし詐欺メールだったらどうするよ。



「うんそうだよ…確かにそうだ」



自問自答を繰り返し、その都度コクコクと頷く。



「ふん…誰がこんなのに引っかかるかよ。確かに気になるアプリではあるが…俺は騙されないぞ!!」



“期間限定”、“今だけ特典”、といった企業商法の誘惑に勝利した俺は、意気揚々とそのメールを閉じてホーム画面に戻った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ホーム画面上の変化に気づいたのはメールを閉じてからすぐの事だった。


一つのアプリがダウンロード中の表示をされているのだ。



「………いやまさかね。まさかとは思うけどそれはないでしょ~」


まさかと思いアプリのタイトルを確認すると、メールで見たあのタイトル…


『Another~ありふれた異世界召喚~』


間違いなくそれだった。


どうやら、俺がメールを開いた時点で自動ダウンロードが開始されていたらしい。


最近の技術とは凄いものだな…


てか、じゃああの“ここをタッチ”の表記はなんだったんだよ!!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



しばらくしてそのアプリのダウンロードは終わった。


俺の携帯に請求の知らせやスパムメールなどは今のところ届いていない。


どうやら本当に、健全なただのアプリだったようだ。


いや、強制的にダウンロードさせてる時点で健全ではないか…


ひとまず胸をなでおろした俺は、早速ダウンロードが完了した新作アプリを起動したのだった。



~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~



アプリを起動するといきなりガチャの画面になった。



「おお!! 本当にチュートリアルも無しなんだな!! これはリセマラも楽でいいや」



画面上でタップの文字が動いている。


早速それをタップして、俺はこのアプリでの記念すべき1回目のガチャを引いた。


画面いっぱいにガチャ演出の光が広がる。


龍人? 獣人? 魔人? どんなキャラが出るのやら…


オススメに出てたレアキャラがいきなり出たりなんかして!!


どんなキャラが出るのかと楽しみにして、なおかつ期待に胸を膨らませ画面を見つめる。


そのうちに演出の光は薄れてゆき、キャラクターの全容が確認できた。


記念すべき最初のキャラは…




スライム


レア度:☆☆☆


体力 20

攻撃力 21

防御力 18

素早さ 23

魔力 10

賢さ 2


【打撃威力半減Lv.1】


【変形Lv.1】



なんとも言えないキャラが出てきた。


このアプリの前情報がないのではっきりとは言えないが、スライムなのでおそらく雑魚キャラだろう。


レア度も星3なのでやはり強くはないのだろう。



「しょっぱい結果だなw まあいきなり星5とか星6が出ても面白くないからまあいいか」


引き終わると同時に画面下に、『リセマラ終了』と『再度挑戦』のタッチ項目が二つ表示された。



「まあ…当然『再度挑戦』だわな」



再度挑戦をタップすると、先ほどと同じ光の演出が始まった。



「ええマジで!? これでリセマラ2回目かよ!? マジで早いな!! これならリセマラ“10000回”ぐらいできそうだぜww」



テンションが上がりはしゃいでいると2体目のキャラクターが姿をあらわす。




騎士長


レア度:☆☆☆☆


体力 50

攻撃力 72

防御力 56

素早さ 54

魔力 40

賢さ 55


【剣技 Lv.2】


【カリスマ性 Lv.1】


【腕力強化 Lv.1】



今度のキャラは人間だった。


そしてレア度のとこには先ほどのスライムよりも一つ多い四つの星が付いている。


つまり先ほどのスライムよりはレアキャラだという事だろう。


ステータスも全体的にスライムよりも高い。


どうやらレア度と強さは比例しているらしい。


確かこのゲームの最高レア度は星6だったっけ?


星6はさぞやチート能力に違いない。


どうせリセマラするなら最高レア度で始めたいよな…当たるかな?


まあ100回もすりゃ当たるだろ。



「よっしゃやったるわい!! 目指せチートキャラゲットや!!」



エセ関西弁を披露して勢いよく“再度挑戦”をタップ、俺は最高レアキャラゲットへのリセマラを始めた。



ーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーー



この時の俺は、レアキャラなんて何回かしたら出るものだと安易に考えていた。


冗談で言った10000回という数字を軽く超える回数のリセマラが待っているとも知らず…


そして、俺自身が本当に異世界召喚されるなんて事など当然知る由もなく………




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