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前編

「……なぜ、貴女はいつもいつもこんなところで眠っているのですか」


呆れたような声音に閉じていた瞼を開けば、黒髪の美男子がこちらを見下ろしていた。

名をアークリバーと言う。

秀麗な相貌に乗った、きりりとした眉が僅かに歪んでいる。

繊細な顔に似つかわしい体躯は成人男子にしては細身だけれど、年齢の割りに小柄な私からすれば十分に立派な体格をしている。

実際、見た目とは異なり以外に筋肉質だということを知っていた。


「疲れて動けなくなった」


そう言えば、ここは貴女が育った田舎とは違うんですよ。と、私の故郷なんて知りもしないだろうに、苦笑しながら事も無げに抱き上げてくれる。

ふわりと体が浮いたことを実感していると、少し離れたところで上がる小さな悲鳴。

ここにも、こいつの信奉者が居るのかと勝手に関心していれば、そんなことには全く興味を示さない男が、

「襲われたらどうするんです」と苦いものを噛み潰したような、奇妙な顔をした。

こんなところで誰に襲われるというんだ、と半分眠りに落ちながら言えば、貴女は自分のことを分かっていないと実に不満そうな声が落ちてくる。


分かってる、分かってる。

自分のことは誰よりも一番、自分自身が分かっている。そういう意味でおざなりに返事をすれば、遠慮なく吐き出される深い深いため息。

その呼気に、長い黒髪がふわりと揺れた。

どんな状況でも美しい顔だと寝ぼけ眼で見上げれば「何見てるんですか」と心底、嫌そうな顔をする。

「お前は、いいな……」

そう返事をしたのが現実なのか夢の中なのかよく分からないまま、まどろむように呟けば、「羨ましいのはこちらですよ」と非難めいた声が続く。

返事をしようと思ったのだが、半分だけ開いた唇は言葉にならない声を漏らすだけだ。


「寝言ですか」


本当に、羨ましい。という声を遠くのほうで聞きながら、完全に闇に落ちた。




次に目が覚めたのは、アークリバーの研究室とは名ばかりのほとんど物置と化した雑多な部屋だった。

乱雑に積み重ねられた本という本の隙間に顔を出しているソファに寝かされている。

さっきまで、魔術学院の中庭でごろ寝していたことを考えれば、室内だという点でランクアップしているかもしれない。

しかし、相変わらず、片付けられない男だなと苦笑が漏れた。


「起きたんですか?飲み物でもいかがです?」


研究室の奥にある物置に机を置いて、そこで仕事をしている男が顔を出す。

なぜ本当の研究室で仕事をしないのかと問えば、そこに居たら、すぐに見つかってしまうから。とのこと。

どうやら信奉者がここまで突撃してくることもあるようだ。

確かに、奥の物置は彼の魔術によって扉が見えないようになっているから、研究室を訪れた人間には一見、彼が不在のように思えるだろう。


「お前が出す飲み物が、本当に飲めるものであるならいただこうか」


私がそう言えば、実に不満そうに鼻を鳴らして、物置の隣にある簡素な給湯室に入っていく。

何日も泊り込むこが多い、研究員の部屋にはだいたい簡易キッチンやトイレバスルームなどが備え付けてある。どこの部屋もだいたい同じようなものらしい。

カチカチと火をつける音が聞こえたのでお湯でも沸かしているのだろう。

魔術でやればあっという間に沸かせるというのに、彼はいつだって手間をかけるほうを好む。

そのほうが愛着が湧くからだそうだけれど、日常生活の全てにおいてそちらを選ぶものだから、何をするのにも時間がかかる。

彼が変わり者と呼ばれる所以は、主にして、ここにあると言っていいだろう。


「……それで?今日はまた、なぜここに?」


手ぶらで出てきた男、アークが首を傾いだ。

何をやってもいちいち絵になる男だ。そのままの姿勢で、絵のモデルでもやればそれなりの金銭が稼げるに違いない。


「院長に呼ばれた」

「で?」

「院長室に行ったけどいなかったから、家に帰ろうと思ったんだけど、せっかくだからお前の顔でも見て行こうかと思って」

「ええ、それで?」

「授業中だろうと思って、中庭で休憩していたら急激に眠たくなっちゃって」

「それで、あんなところで寝ていたわけですか」

「うん」


何で貴女は毎回毎回、と言いかけたところで給湯室から、ピーッとお湯が沸いたことを知らせる音が響いた。

お小言から逃れることができると、その喜色が顔に浮いていたのだろう。アークは律儀に舌打ちしてから再び給湯室に消えた。

カチャカチャと陶器のぶつかる音を聞きながら、彼の繊細だけれど男性らしい節くれだった指が、お茶を入れる動作をしているところを想像した。

その際立って整った外見からすると、何でも器用にそつなくこなしそうだが、この物という物が乱雑に置かれた部屋からも分かるように彼は案外不器用なのである。

そこが彼の可愛いところでもあるのだが、大抵の場合、そこは欠点に数えられるだろう。


『長寿の秘訣』『不老長寿の秘薬』『長寿の為の魔力操作』『不死の魔法陣』

到底、名のある学者が書いたとは思えないタイトルの書物が並ぶ本棚を眺めていると、ふんわりと漂ってくる茶葉の香り。

お茶の葉は、私が購入したものを瓶に入れて並べている。

その色とりどりのガラス瓶はアークが自分で用意したものだ。

彼が到底好みそうではない色あいに首を傾げていると「それは貴女のものですから」と照れくさそうな顔うする。

つまり、私のものだからこそ、あえて可愛らしいものを選んだということだ。


出会った頃のアークは、お茶を入れるどころか、お湯を沸かすということも知らなかった。

それを考えれば、何となく微笑ましい気分になるのも仕方ないことだろう。

笑いながら、起き上がっていた体を再びソファに沈める。

思ったよりも勢いがついて、ソファの隅に重ねられていた蔵書を蹴り落としてしまった。

そもそも何でこんな不安定なところに本を重ねるという不思議なことをするのだろうと、落ちていく本をぼんやりと眺める。

本棚に並んでいるものとは違い、こちらはきちんとした書物のようで一見しただけでは理解できないような小難しいタイトルが付けられている。


「……その本は、王宮から借り出したものなんですけどね」


お盆に並べたカップを、ソファの前のローテーブルに置いた。

そのテーブルの端にも何だか分からない本が重ねられている。


「お前は本当に、研究が好きだねぇ」


起き上がることもせずに、床に腰を下ろすアークを見ていれば、


「好きではありませんよ、ただ、必要だからそうしているだけで」と、こちらも見ずに返事をする。

私の足元に位置するところで腰を落ち着けた彼は、背中を向けているのでその表情までは確認することができない。だが、どこか疲れているような声音だった。


「……最近、変な女生徒に付き纏われていて、」


私の心情を察したのかアークがぽつりと話し出す。


「貴方を孤独から救ってあげるとか、貴方の心の傷を治すことができるのは自分しかいないとか、貴方がどんな風に育ってきたのか知っているとか、娼館で、どんな目にあったのか、分かってる、とか」


言葉の最後が、どこか頼りなく、幼さを帯びた声音になる。

己の過去を思い出しているのだろうか。


「……ふうん、それは難儀なことだねぇ」


せっかく入れてくれたお茶に手をつけることもなく、あくびをしながら相槌を打てば、勢い良く振り返ったアークと視線がぶつかった。

黒い双眸が不安げに揺れている。


「こ、怖くて……」


薄い唇が紡いだ本音に、思わず眉が寄る。

こんな心もとない顔を、親代わりである私に見せるなんて、よっぽど精神的にきているに違いない。

子供というのは、成長すればするほど強がるものだから。


「お前は、孤独なのか?」


問えば、数秒、逡巡した様子を見せてから首を振る。


「お前は、心に傷を負っているのか?」


問いを重ねれば、アークは再び、少しの間沈黙してから首を振った。

考えてから結論を出しているあたり、闇雲に返事をしているわけでもなさそうだ。


「アーク、お前がどう思っているかは知らないが。

人間というのは孤独なものだよ。そして、誰だって何かしらの傷を負っているものだ」


寝転がったまま肩肘をついて、そこに頭を乗せているという、いまいち緊張感に欠ける格好だが、これが私が私たる所以なのである。


「それを誰かに救ってもらいたいと思うのは悪いことではないよ。お前がそうして欲しいと思うのなら、手を伸ばせば良い」


私は反対しないよ、そう言えば、おもむろに立ち上がったアークが私の顔の前で膝を付いた。


「……貴女は?」

「何?」

「貴女は、救ってくれないのですか」


疑問文のような、もしくは断言のような、聞いているようで責めているような声に首を傾ぐ。


「私は既に、お前を救ってやっただろう」


指を伸ばせば、青年は僅かに目を瞠った。

美しい双眸。黒い眼差し。黒い睫。私が焦がれて止まない色が、そこにある。


「だから、お前は何も恐れることはないんだよ。

お前が望むなら、私はお前を何度でも救うし、何度でも助ける」


「お前は、孤独でいて良い。心に傷を負っていても良いんだ。苦しければ手を伸ばせ。

私はここに居るんだから」


形の良い耳に触れてから、肉付きの悪い頬に指を滑らせる。

心地良さそうに私の手に頭を預けたアークは、子供のようにこくりと肯いた。


お前が、その女生徒を恐れる理由が少し分かる気がするよ。と笑えば、アークはぎゅっと目を閉じて、

「まるで、私には誰も助けてくれる人がいないような言い方をするから……」と声を震わせる。


「今でも、貴女のことを、夢か幻のように感じることがあるんです」と呟いた。


その気持ちも、よく分かる。そう言おうとして口を閉じた。

そんなことを言っても、どうしようもないのだとよく分かっていたから。




*

*


私がこの世界に落とされたのは、随分と前のことになる。


年の頃は、14だったと思う。

何年前とか、どのくらい前とか、いつのことだったかは正確に思い出せない。

召喚されたのか、それとも、ただ落ちてきたのか、それさえもよく分からないのだ。

気づいたときには、どこぞの王国の、どこぞの王族に捕らわれていた。

ここまでは、よくある異世界トリップのテンプレだと言っていいだろう。

乙女ゲーム展開であれば、選択しだいでは、私にも幸福な結末が待っていたかもしれない。

しかし、現実ではそう簡単に事は運ばなかった。


この世界に住む人間よりも魔力が多いという、たったそれだけの理由で、私はなぜか戦地で戦うことになっていた。

言葉もよく分からず、生活様式も違う。目に映る風景が何もかも、生まれ育ってきた環境とは異なっている。顔立ちも体格も違う人間に囲まれて、恐慌状態に陥っていた私は成す術も無く戦場に送り出された。

私はつまり、兵士の一人として戦場に派兵されたのだ。

そこであったことは、思い出したくないし語りたくもない。

ただ、最悪だったとだけ言っておこう。

そして、一体どれだけの間戦っていたのか、私はいつの前にか英雄と呼ばれるまでになっていた。

そうなってしまえば、蔑ろにされることはなく、むしろ大事にされた。私が望む大抵のことは受け入れてもらえた。

囲われているのだということは分かっていたが、私はまだ子供と言って良い年齢で、日常生活を送るのには誰かの庇護が必要だった。異世界に落ちてから数年が経過していたが、その頃もまだ、ろくに抵抗する術を知らなかったのだ。

結局のところ、私は、何かと引き換えに自分の身を差し出していたと言っていい。

私は強かったけれど、それと同時に、酷く弱かった。

誰かに指示されなければ、ろくに呼吸もできなかったのだ。


何も知らない場所で、誰も知らない場所で、私は既に壊れかけていたのだと思う。


戦うしか価値がない、と言われればそうするしかなかった。

それこそ、数えることさえも忘れるほどに何度も戦場へ赴いた。何度も、何度も。

選択肢など、初めから無かったのだ。

そして、ただ只管に戦いに身を投じ、


―――――ある日突然、投獄された。

今度はいつの間にか、私は、戦犯と呼ばれる者になっていたのだ。


お前の国は滅びたのだと言われても何の感慨も浮かばなかった。

私の国ではないし、祖国でもない。ただ、そうか。とだけ思った。

戦勝国からすれば、私は間違いなく戦争犯罪人であり、罪を負うべき人間であった。

魔力封じの道具をいくつも付けられて、暗い牢屋に閉じ込められることになってもただ受け入れるしかない。ちらりと逃げ出すことを考えたけれど、逃げ出したところで、生きていけるとは到底思えなかった。

私は、どこの国にも属していない。それどころかこの世界の人間でさえない。


そういった意味で言えば、私は、どこにも存在しないはずの人間だった。


あの牢屋での出来事も口にはしたくはないが、戦場での最悪を凌駕するほどの最悪だった。

さすがに日本の刑務所を想像していたわけではないけれど、それに準じるくらいの場所なのだろうと軽く考えていた私は、やっぱり無知だったのだと思う。

最悪を上回る最悪があるのだと、そのとき初めて知った。

どれだけ捕らわれていたかは分からないが、数年か、いや、もしかしたら数十年かもしれないし数ヶ月かもしれない。日数を数えるなんて無意味なことはしなかったからよく分からない。

魔力を封じられてしまった私には、ただ死を待つより他なかった。

何度か、私の知り合いだという人間が会いに来たが、顔も覚えていないし交わした言葉も思い出せない。

とにかく、そうやって監獄で過ごしていたある日、


―――――今度は恩赦だと言って解放された。

晴れて自由の身となったわけだ。


私を牢屋から出した看守は、私のことをよく知らないのか、こんなものをつけて良く平気でいられたなと体中の魔道具を取り外してくれた。

投獄されて良かったと思えるのは、その間に、この世界で生きる覚悟ができたことくらいか。

そのおかげで、牢屋から出た私は魔術で何でもできる状態で、国一つ滅ぼすくらい何の造作もないほどだった。だけど、そんな面倒なことをするなら、世界一周でもしたほうがまだ有意義だと思い直し、旅に出ることに決めた。

このあたりでも色々あったのだが、さして語るべきことでもないので割愛する。


そして、私は、とある森のとある場所でアークリバーを発見するのだ。




「で、君が彼を育てたわけだね?」

「うん」


もぐもぐと切り分けてもらった果実を口に含みながら肯けば、学院長は年齢不詳の顔に苦笑を浮かべた。

そろそろ家に帰ろうかとアークリバーの研究室を出たところで、たまたま通りかかった彼に捕まり、そのまま院長室に連れ込まれたのだ。

エルフの血が混じっていると噂されるその男は、磨き抜いた金細工のような髪を長く伸ばしている。

人間であれば既にご老体と呼ばれる年齢らしいのだが、顔には皺一つない。

煌びやかな院長室を背景にしていると、童話に出てくる王子様のようにも見える。

アークリバーの部屋のものよりもずっと高価そうな革張りのソファに半身を預けて天井を仰げば、無数のクリスタルが下がった重厚なシャンデリアが迫ってくるようだ。

院長が手ずから剥いてくれる果物も、一般市民にはなかなか手が出せない代物である。


「何があったか知らないけど、置き去りにされた馬車の中に繋がれてた」

「……まぁ。だいたい想像はつくけどねぇ」


山賊か盗賊か、そういった類の輩に襲われたのだろう。

実際、積まれていたはずの荷物は何一つ残っていなかった。

少年一人を除いては。


「人間って言うのは簡単には売れないものなんだよ。人攫いから買おうものなら、後々厄介なことになりかねない。だから大抵の購入者が、正規のルートで手に入れる」


正規って言っても、やっぱり裏取引ではあるけれど。と院長は気だるげに首を傾ぐ。


「しかも、彼は黒髪、黒目。魔力過多だってことが一見して分かるからね。扱いを間違えば、魔力が暴走して十中八九巻き込まれる。置き去りにして正解だね」

「……そうなんだ」

「そうなんだよ。君は、平気だったみたいだけどね」

「正しい扱いをしたってことじゃないか?」

「……まぁ、そういうことにしてあげても良いけど」


学院長は意味ありげににやりと笑った。


「しかし、君が異世界からの落ち人とはねぇ。あれはただの伝説かと思っていたけど」


対面のソファがあるというのに、なぜか隣に座っている院長がおもむろに私の顎を掴んだ。

唇に吸い込まれるところだった水分の多い果実が応接台にべちゃりと落ちる。


「私が真実を語っているとは限らないだろ」


ふんと鼻を鳴らしながら院長の細い指から逃れると、今度は私の白い髪に触れてきた。

「何なんだ、お前は」そう言いながら、虫を払うような仕草で大仰なほどに頭を振って見せる。


「不思議な色の髪だとは思っていたけれど、君が異世界から来たのであれば納得できるな」


ふむふむと一人で肯いている院長には悪いけれど、私の髪は元々、黒かった。

日本人であるから当然、そうなのだ。

しかし、この世界に落ちてきて数日後にはこうなっていた。

精神的なものなのか、あるいは、肉体そのものが作りかえられてしまったのか、原因は分からない。

ただ、あるときふと鏡を見たら、髪から色が抜け落ちていたというわけだ。

ついでに言えば、目の色も変わった。昔は濃い茶色だったように思うが、今は、灰色だ。


「魔力の多い人間は、大抵の場合、外見から判断できる。総じて、髪や目の色が濃いからね。真紅や真緑、ダークブルーなんて色もそうだね。はっきりとした色を持つ人間ほど魔力は多い。だけど、君の髪は白で、瞳も灰色。濃いとは言えないな」

「……」

「けど、それも異世界の人間だからと言えば、納得できる」

「……突然変異ということも考えられるだろう。お前は、そんなにあっさりと他人を信じて良いのか」


尚も指を伸ばしてくる院長から逃れるようにして半身を捩る。


「君だから信じているんだよ」


ふふふ、といっそ可憐だと言って良い笑みを浮かべる院長に、寒気が走った。


「理由のない信頼ほど疑わしいものはない」


ソファから立ち上がって皮の剥かれていない果物をいくつかバックの中に放り込む。


「誰かを信頼するのに、理由がいるのかい?」


不思議そうな顔をしている院長を一瞥してから、大きく頷いた。


「いる」

「ふむ……それは、見解の相違ってやつだね」

「そうだな」


そんなに詰め込んだら果実が潰れちゃうよ、という院長の言葉を無視して詰められるだけ詰め込んだ。


「それで、アークリバーは何を不安がっているんだい?」

「自分の生い立ちを、赤の他人が知っていたら誰だって不安に思うだろう」

「ふーむ、そういうものかい?」


エルフの血が混じっているのか何なのか、院長は普通の人間とは感覚が違うようだ。


「アークについては、あの森で拾われる前のことを知っているのは私だけなんだ。誰に聞いたのか知らないが、その女生徒がアークのことを知っているというのなら、話をしてみたい」

「……話、かい?」

「ああ」

「本当に、話だけ?」

「ああ」

「本当の、本当に?」

「ああ。……しつこいな。時と場合によっては手か足か、魔術が出るかもしれないが」

「……やっぱりぃ。駄目だよ、ダメダメ、会わせない」

「何で」

「君が、何もかも面倒になって、魔術で彼女を消し炭にしようとする姿が思い浮かぶから」

「……なるほど」


言いえて妙である。


「良いこと思いついた、みたいな顔しないでよぉ」

僕には一応、生徒を守る義務があるんだからと、結局、「駄目」を連発する学院長に追い出されるようにして部屋を出た。






























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