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ルッツもエミと一緒にいたい

 レーニとのお話の後、僕はルッツとリタと食事を摂ってから庭に出て魔術の制御を練習する事にした。レーニは僕と同じように食事は要らないようで、ただ僕と違って魔力の供給が必要だそうな。僕の方は魂を蔵しているから魔力を生み出せるらしい。魔物の一種であり生ける屍と称されるアンデッドの中でも、魂を持つグールやリッチという種は魔力を持ち、魔術や魔法を扱えるという事もついでに聞いた。もしかして僕って自動人形よりもそのグールやリッチに近かったりして。


 自分以上の不思議な存在には出来れば会いたくはないものだね、本当に。


「ほれ、しっかり働かんかい」

「おかしい。何で僕はこんな事をしているんだ」


 庭に出ようとした僕はルッツに捕まり、魔術を用いた庭いじりをさせられている。


 庭の一画の土を【土解】で砕き、【風吹】で土を巻き上げて空気を含ませる。そしたら【水別】の要領で軟らかくした土を固めないようにまとめて、それを持ち上げて畝を形作ったらお仕事は終わりだ――と、ルッツは簡単に言う。


 実際にルッツは長さ五メートル程の畝の一列を作ってみせてくれたけど、見事な手際だった。ルッツが魔術回路の刻まれたメダルを発動させると、踏み固められていた土が沸騰した水面のように揺れ動き、あっという間に土が解れた。その次の瞬間には手頃な大きさの土塊が出来上がっていて、ルッツはそれを積み木のように積み上げると魔術を解いて畝に仕上げてしまったのだ。


 掛かった時間は三分もないだろう。インスタントラーメンを準備する暇すらない。


「まだ後二列は作ってもらうぞ。そこ、ちゃんと土を解せ」

「ルッツはレーニの下へ戻ってもいいんですよ? やり方は分かってますし、終わったらちゃんと言いに行きますから」

「雑な仕事にならんように監視は必要だろう? それにレーニはお休み中だ」


 魔術というのは精神的に辛い。身体を動かすような、肉体の感覚の延長ではないからだ。魔法ならもう少し楽だったんだろうか。結果を望めばいいのだから楽そうだな。僕の方は経過を調整しつつ結果に辿り着かなければならないから手間である。


「なんで一列ずつやらなきゃいけないんだ……」

「一気にやりたいならやってもいいが、同じ規模で二回はやってもらうぞ? 魔術はしっかりと制御してやらないと、危ない事もあるのだ。しっかりとこのスケールでの魔術制御を出来るようになれ」


 いいように使われている気がしてならない。


 だけれど実際にルッツに指摘されたように、畝を一列作るのに必要な範囲の土を解すのでさえムラが出来ているのだから情けない話だ。余計なところを解さないという事は出来ているから、範囲の指定という点では合格なはず。


 範囲内に均一な効果が発生するように努めて、改めて【土解】を発動させてみる。今度はしっかりと土塊が崩れた。――しかしながら、今度は余計なところまで解れてしまう。


「どうした? そこまで耕して欲しいとは頼んでいなかったと思うが」

「僕からのサービスですよ。そう、サービス」

「ほう、そう言うならもう一列多めに作ってもらおうか」

「……余計な事を口走る自分が憎い」

「サービスの部分は儂が固めてやるから、さっさと土に空気を含ませるんだな。言うまでもないが、辺りに土埃を撒き散らすなよ。そこまで強い風じゃなくていい」


 ルッツが【土固】を発動させると、僕が余計に解した場所だけが元のような固められた地面に戻る。


「僕だって一か月間、魔術を使い続けてきたはずなんだけどなぁ」

「がっはっは、そのお蔭でちゃんと魔術自体は発動出来ているじゃあないか。そう腐るな」


 比較対象が熟練の人形師なのがいけない。そんな事は分かっているけど、あまりの技量の差に肩を落としてしまう。一か月。そう、まだ一か月なのだ。


 気を取り直して【風吹】で砕いた土を軽く巻き上げて、土中に空気を送る。


「おお、上手いじゃないか。いい具合に力が抜けたのが却って良かったのかも知れんな。リタに同じことをやらせた時はそれはもう酷い有様でな……」

「簡単に想像できますね、それ」

「だろう?」


 土に空気を含ませたら後は楽だった。【水別】でまとめる土の大きさは手で抱えられる適当な大きさだから想像しやすいし、そこまで出来たらあとはブロック遊びだ。これが終わった後に三列作ったけど、一番の難関は最初の土を解す範囲の指定だった。


「ところでな、エミ。儂がなぜ上手く魔術を扱えるか分かるか?」


 僕が要望通りに畑を作り終えると、ルッツは土を触りながら訊いてくる。


「年の功でしょう?」

「それも無いとは言わんが、目的に応じた道具を使っているからだな」


 ルッツは手に付いた土を払い落すと、僕の方にメダルを一枚投げて寄越した。


「それは【土解】のメダルだ。ちょっと空いてる所に使ってみるといい」

「はあ、分かりました」


 僕が空いた土地を意識しながら魔力を込めて魔術回路を発動させる。すると僕が苦労して耕した土地と同じ面積の土が解れた。


「もう一回だ」

「了解です」


 また別の場所に意識を向け、魔術を発動させる。すると先ほどと寸分違わぬ面積の土が解れる。まるで大地に判子を押しているかのようだ。


「……魔術の制御なんて技能、必要あるんですかね」

「そのメダルにも融通が利かないという欠点がある。それに比べたら、しっかりと制御さえすれば自在に魔術を操れるというのは大きな利点だとは思わないか?」

「そういう事にして納得しておきます」


 フリーハンドで綺麗な真円が描けたと思ったら、コンパスを使わされたようなものか? 腑に落ちない。とりあえず指先でメダルを弾いてルッツに返しておく。


 コンパスがあるなら、最初からそれを使わせてくれればよかったのに。


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