明日で最後の笑顔
勢いだけで書いておりますので、少しおかしいかなと思う点ばかりですがどうぞよろしくお願いします。
次の日の午後の授業中、俺はずっとそわそわしていた。傍から見ていた友達が口を揃えて何でそんなに落ち着きがないのかと何度も聞かれたのを覚えている。
午後の授業も終わり、放課後のサッカーの誘いも断り、普段なら一緒に帰るはずの友達も置きざりにして帰り道を走った。
時間の約束を特にしたわけではない。なので俺には早く行かないと帰ってしまうのではないかという焦りがずっと一日中頭の中を駆けずり回っていたのだ。授業のことなんか頭に入るわけがない。
学校から家までは三キロの道のりだ。小学校三年の俺が歩いて帰るのにも一時間かかる。普段走り回っているので体力には自信があったが、すぐに息があがってしまう。疲れたら歩き、そして走り、また歩き、いつもの木の棒ポイントで生えている枯れ木を一本折った。そして思い出したようにもう一本折って空き地へと向かった。
彼女は今日もいた。空き地の隅の土管の上に座って赤い花を眺めていた。
「待たせたな!」
自分なりには格好良く参上したつもりだったのだが、必死こいて走ってきて鼻水は垂れ流したまま息をゼーハーと吐きつつ両手に長い木の棒を持って駆け寄ってきたやつに対して彼女、佐藤望愛はギョッとした顔をしたがすぐに俺だとわかると昨日と同じように胸に手を当てるポーズで一呼吸する仕草を見せた。
「もう、遅いわよ純一。帰ろうとした」
「い、いや、だ、て、昨日より、ガハッ、早い、ハァ」
「あーもう汚い」
と彼女は持っていたハンカチで俺の鼻水を拭おうと手を伸ばしてきた。反射的に体を反らしたが反対の手で顔を抑えられ、ハンカチを鼻に抑えられ身動きが取れなくなった。そして拭き終わると彼女はまたニコッと笑った。俺はまたすぐに顔が赤くなるのを感じた。
「こ、これやるよ!」
「なにこれ?」
息が整ってから俺はおもむろに右手に持っていた木の棒を差し出した。彼女は最初珍しそうに見つめていたがおずおずと手に取った。
「木の棒?」
「ああ、まあな」
何が「ああ、まあな」なのかは未だに自分自身でもわからないが俺が左手から利き手の右手に木の棒を持ちかえ、目の前で上から下に振りかざすのを見て彼女はまたニコッと笑った。
「ありがとう。こんなの初めてもらった!」
「そ、そうか」
彼女が俺の真似をして木の棒を上から下へ振り下ろすのを見て俺も嬉しくなり、土管を叩いたり柵を叩いたりした。
「なあ、あっちいこうぜ」
と彼女を空き地から連れ出そうとしたのだが、途端彼女は顔を曇らせた。
「だめ。お母さんが遠くに行っちゃだめって」
「大丈夫だって。俺がいるじゃん」
俺は自信満々に木の棒を地面に叩きつけて折って見せると彼女はうんうんと頷いた。
「そうだよね!」
二人で走り回った。彼女には田舎のものは珍しいのかずっと目を輝かせていた。気が付くと日も傾きかけ、空で鳥が鳴いているのに気付いて彼女が帰らないといけないと言うので空き地まで送った。空き地に着くと彼女はまた赤い花の元へ走って行った。
「なあ、その花のどこがいいんだ?」
「だって可愛いでしょ? それにたった一人でこんなところに」
赤い花は今日も咲いていた。空き地の隅でその赤色は佇んでいた。
「それじゃあ帰るね。今日はありがと。明後日には帰っちゃうから、遊べるのは明日で最後になっちゃうけど」
「え?」
俺は何を言われたのか分からなかった。いきなり明後日でさようならと言われてもその事実をすぐに飲み込むことなどできなかった。
「じゃあね」
彼女はニコッと笑って手を振って帰っていった。俺は手を振りかえすこともできないまま、彼女が走り去るのを黙って見送ることしかできなかった。帰る道をとぼとぼと歩いて帰った。彼女の笑顔を思い浮かべる度になぜか泣きそうになった。
明日で最後。東京へ帰ってしまう彼女に何かできないかと俺は考えていた。
最後までお読みいただき感謝を。それほど長くは続かないつもりです。
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