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やっと更新できた…!
昼食を取った後、俺は食器の片付けて終えてすぐにAROへログインした。
目を覚まして体を起こす。
まわりを見ると、まだ見慣れない宿屋の部屋が目に写る。あまり、物のない殺風景な部屋だ。
まずメニュー画面を開き、ゲーム内時間を見る。
「朝の五時半か、少し早すぎたな……」
昨日の広場の騒ぎを見るにこの時間だとプレイヤー達は皆寝ているだろう。NPCの店も早くとも7時まで開かないらしいし。
かといってまだ暗い外に狩りに行くのも危険だ。
さて、どうするか。
そう考えているとふと部屋に設置されている作業台が目に入った。
「そう言えば、スキル取ったのにまだ何も作ってないな」
どうせ他に出来る事もないし、自分の装備ぐらい自分で作るか。素材も幾らかはある訳だし。
今ボックスに入ってる素材は二種類の木材、黒蜘蛛の甲殻、蜘蛛の糸、灰狼の毛皮、灰狼の牙の計六種類。種類は少ないが数はかなりある。
薬草類は誰も【薬学】を持っていないため、全て売った。素材は加工しなければ使用出来ないので、持ってても意味がない。
今ある素材で作れるのは…………防具とアクセサリー位か。
鉄がない現状、武器の作成は無理だ。流石に木材だけでは金槌は作れない、作れても精々初期装備の木槌くらいだ。
鉱山もまだ見つかってないから、NPCの店から高い鉄を買う以外入手方法がない。が、今の俺にそんな金があるはずもない。
……まあ、ない物の事を考えても仕方がない。作れる物はあるんだし、そっちに取り掛かろう。いつまでも村人の服でいるのも嫌だし。
作る物が決まったので、ボックスから森に入る前に買った初心者用裁縫セットと素材アイテムを取り出す。
そのまま作業台の椅子に座って一呼吸、作成を開始した。
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数時間後、
「ふう、とりあえず今はこれ位が限界か」
そう言って俺は肩の力を抜いた。
俺が作った装備は全部で三種類だ。
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灰狼皮の軽鎧
DEF +12
品質 4
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黒蜘蛛の籠手
DEF +8
品質 3
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灰狼牙の首飾り
DEF +1
品質 7
敵への攻撃ダメージに+補整(極小)
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それぞれ複数作っているが、補整効果がついたのはこの首飾り一つだけだった。
品質が首飾りだけ高いのは、きっと他二つは毛皮を使っていて素材が足りなくて首飾りより作った数が少なかったからだ。
それに首飾りは他二つより後に作ったので、スキルが上がっていたのもあるだろう。
グゥ~~。
集中が途切れた途端、疲労感と空腹感が襲ってきた。それを知らせるかのように鳴る腹の虫。
「腹の虫なんて久しぶりに聞いたな、今何時なんだ?」
メニューを開けて時間を見るとすでにあと少しで10時といった時間になっていた。
SP、WPのゲージも4割を切っていた。道理で腹も減るわけである。
「作業も一通り終わったし、半端な時間だけど朝飯を食いに行くか」
このあとの事は食べながら考えよう、等と考えながら俺は部屋から出発した。
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適当に食事を済ませた俺は、余った防具を売るべく昨日エミリスに案内された道具屋に来ていた。
扉を開けて店内に入る。
中途半端な時間のためか店の中には誰もおらず、カウンターに店主の親父が一人で座っている。
俺がカウンターに近寄ると、
「いらっしゃい、何がほしいんだ坊主」
と、店主が目の前の俺に注文を聞いてきた。
「ああいや、まずはアイテムの買い取りをしてほしいんだが。できるかな?」
「物によるな、とりあえず見せてみろ」
言われるままに売りたいアイテムを並べていく。
そのアイテムをみて店主はため息をついた。
「ハァ~。坊主、防具を道具屋に持って来てどうすんだ。こうゆうのは武器屋か防具屋に持っていけよ」
「え、あるの?」
その言葉に俺は軽く驚いた。この町にそんな店があるのか。
驚いた俺の顔を見て更にため息をつく親父。
「あるに決まってんだろ…。確かにこの町はそんなに大きい訳じゃないが、回りにモンスターが出る以上そういう店があるのは当たり前だろうが」
「………そりゃそうか」
全く持って親父の言う通りだ。反論の余地がない。
「大体おめぇさん鍛冶職人のはしくれだろうが。何で武器屋も防具屋もしらねぇんだ、あぁ?」
「………仰る通りです。無知ですみません」
………何で俺NPCのはずの親父に怒られてんだろう。
てかこの親父ホントにNPCか?中に誰かいたりしないだろうな?
「…親父さん、なんか前来た時と反応が違うな。昨日の朝来た時はもっと事務的な感じだったのに」
「そりゃそうだ、おめぇさんが来たっていう朝の時間帯は客入りが多いからな。一人一人の相手なんてしてられねぇ。比べて今は客の少ない時間帯だからな」
それにな、と店主の親父は続ける。
「俺は最近外からやって来た奴らの事が気に入らねぇ。失礼だし態度も冷たい感じだ。客商売だから商品は売りはするが、こっちから話すなんて気にはならねぇや」
「……成る程」
つまりこういう事だろう。
今までのプレイヤー、主にβテスター達は店主の親父さんを只のNPCとしか見てこなかったわけだ。
それこそ、駅の改札で切符を買うみたいな態度だったのだろう。
まあそれもしょうがない事なんだろう。
ファンタジー系は初めてな俺だが、他のVRゲームならやった事は何度もある。
それでも、目の前の親父さんみたいなのは初めての経験だ。大抵のNPCは事務的で、ある一定のパターンしか持っていないのが普通だ。
それに加えて普段の親父さんはいつものNPCそのものだ。これでは違いがわかりようはずもない。
「おめぇさんにもいい機会だから言っとくが、相手に対する態度には気をつけろよ。知らぬ間に恨みを買ったりするからな」
「了解、肝に命じておくよ」
親父さんの言葉にそう返す。
そんな俺に親父さんは笑いながらこんな事を言ってきた。
「まあこれも何かの縁ってやつだな。坊主、おめぇさんの名前は?」
「ゼン。俺の名前はゼンって言うんだ」
「ゼンってのか。俺はドガロ、道具屋のドガロだ。いつまでの付き合いになるかわかんねぇが、これからよろしくな、ゼン!!」
「ああ、こちらこそよろしくドガロ」
こうして俺と、道具屋の親父さんことドガロは知り合いなる事となった。
………ちなみにドガロが何故俺が鍛冶職人だとわかったのかと言うと、ドガロ曰く
「そんな変な武器装備してんのは一部の鍛冶職人ぐらいなもの」
と言うことらしい。
…………早く稼いでさっさと武器の更新したいな。
更新遅れてすみません。