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page 44

一か月ぶりの投稿です。

もう少し早くならないものか……。

「ん……」


意識が覚醒していくのと同時に瞼が自然と開かれていく。

そうして目を覚ました俺の目に映ったのは何時もの宿屋の天井、ではなく見慣れない布らしき物とその角を作っている棒。


「あれ?ここって……………あ、テントか」


体を起こして自分の周囲を確認、そしてここが宿屋のある町ではなく町から離れた場所である事を思い出す。今自分がいるのがテントの中であるということも。


「今は………7時半か。2人はもう起きてるみたいだな」


テントの中は朝であるにも関わらずかなり暗い。が、入口から漏れる朝日のお蔭で既に俺以外は誰もいない事は確認が出来た。

どうやら少しばかり寝過ぎてしまったようだな。


「それにしても、革で作ってるって言ったって少し暗過ぎるなぁ。やっぱ少し厚かったか?」


寝ぼけているのか、未だに覚醒し切らない頭にそんな今はどうでもいい事が思い浮かんでくる。

イカンイカン、今日からいよいよ新しいエリアに突入するというのに気が抜け過ぎているな。

とにかく眠気に負けて二度寝に入る前に、とっとと日光でも浴びて目を覚まさなければ。

そうして俺は一先ずテントから抜け出る。


「おっ、やっと起きてきたな」

「おはようゼン。その様子を見る限りじゃ、昨夜はよく眠れた見たいだね」


テント出た所でヤシャとマルクが声をかけてくる。

2人とも自分の武器の手入れをしている。

ヤシャが微妙に眠そうあくびをしながら目をこすっているが、それはおそらく最後の夜番をこなしたのがヤシャだったからだろう。


「ふぁ~、おはよう2人とも。それと………」


ヤシャ達に返事を返しながら、視線の向きを変える。

新たに向けた視線の先には、昨日までいなかった筈の新たな旅の道ずれとなった、


「そっちの2人もおはようさん、よく眠れたか?」


2人の少年少女、それに加えて通常よりも大きな灰狼の姿があった。


「「お、おはようございます!!」」


声をかけられた二人はまだ緊張気味なのか、少々強張った返事が返ってきた。

体格からしておおよそ中学生くらいであろう二人のそんな様子を見ながら目一杯体を伸ばして纏わりつく眠気をふるい落としていく。


「今日も、いい天気だな」


雲一つ見られない空を見上げながら、そんな事をつぶやいた。




さて、昨日までいなかった筈のこの二人と一匹。

そんな突然現れた彼等がなぜここにいて、さらになぜ俺たちと一緒に行動しているのか?

その理由を説明するには、やはりまず昨日あった出来事から話さねばならないだろう。


ーーー俺達が彼等と偶然にも遭遇したのは昨日、俺が魔導書の作成の後ぐらいまでに遡る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


魔導書の作成の実験をひとまず終えた俺は本来与えられた役目である火の番へと戻る。

だがどうも作業に集中しすぎていた為か時間の感覚がつかめていなかったので、まず現在の時刻を確認する為にメニューを開いた。

するといつの間にか、もうそろそろ松明がきれるような頃にまで時間が進んできていた。

周りの松明を見ても感覚的ではあるが、確かに最初と比べて火が小さくなっている気もする。


「おお、こりゃマズイな」


俺は松明の交換の為に立ち上がり、台の一つに近付く。

今周囲に設置している松明にどれほどの効果があるのか、正直な所俺もよくはわかっていない。

何せ今まで町以外で睡眠を取ること自体、無かった訳だしな。

もしかしたらこれには何の効果も無くて、ただバカみたいにアイテムを消費するだけの行為である可能性だってある。しかしそれでも火を灯すのはこれを怠っていたら寝込みをモンスターに襲われて全滅しました、なんて事態だけは避けておきたいからだ。


それに付け加えるならば、やはり周囲が明るく照らしてある状態というのはそれだけでかなりホッとするからだろう。

普段は気が付く事も無かったが、俺自身実際こういう状況に置かれてみて改めて明かりの持つ意味というものが実感できている気がする。


(まあなんにせよ、今現在モンスターは寄りついて来ないんだしある程度の効果はあったと思っていいのかね?)


内心でそんな事を考えつつも台を一つずつ廻り、新しい薪をそれぞれに補充していく。

夜は日中に比べてモンスターの出現率が高くなる時間帯だが今の所モンスターの気配は無い。

まだ日が暮れてから数時間程度なので何とも言い難いが、出来れば松明の効果であって欲しいところだ。




俺の感知範囲に新たな気配が入り込んで来たのは、丁度そんな時であった。


(っ、まさか襲撃!?安全圏だと油断し過ぎたか?)


身体中に緊張が奔り、心中を占めていた突然の驚きが警戒心へと瞬く間に変化していく。

その気配を感じ取った俺は一瞬の空白の後、近づいて来る者の正体を探るべく感知した方角へと意識を集中させる。

感知出来た気配の数は三つ、だが進行スピードは実にゆっくりとしたもので特に急いでいる様子はない。

この動きからして恐らく歩きながら此方に向かって来ているようだな。

詳しい位置はわからないが、どうも道に沿って進んでいるらしい。

周囲に怪しい気配は感じられないし、今進んでいる奴らも隠密を使っている訳でもないようだ。

さらに気になる点もある。


「この気配の感じ、プレイヤーとモンスターが一緒に居るのか」


三つの気配の内、二つは確実にプレイヤーだが一つがモンスターだった。

最初は気のせいかとも思ったがどうやら間違いでは無いようで、三つの気配は固まって進んでいる。


この組み合わせが出来ている理由として考えられるのは二つ。

一つはモンスターと戦闘中である場合だが、これでは今現在の固まって一緒に歩くなんて状況にはならない筈。なのでこの可能性は除外してもいいだろう。

となると自然ともう一つの理由が当てはまる事になる。


「やっぱ、[テイム]持ちだよな〜。あの状況はどう考えても」


そのもう一つの理由は【テイム】を所持しているプレイヤーがいる場合だ。

【テイム】は文字通りモンスターの使役が可能となるスキルだ。

2人いるプレイヤーのどちらかでもこのスキルを持っているならばモンスターと一緒に行動することも可能だろう。


しかし【テイム】持ちとは珍しいな、確かあのスキルってモンスター捕獲の成功率がかなり低いのがサービス開始前から判明してたから取得した奴もそんなにいないって聞いてたのに。

それに俺の記憶が正しければ、確か【テイム】は生産系に属するスキルの筈だ。

いくら同行者がいると言っても生産者がこんな町から離れすぎた所に、しかもこの時間にいるなんてのは些か不自然だ。今から町に戻ろうとしてもここからじゃ到着するよりも朝日が昇る方が早いだろうに。

なにか理由が………?


「って、いつまでも考えてる場合か。と、取り敢えず寝てる二人を起こして来ないと」


現状、生産者を連れている相手の集団が俺達を狙っているとは考えにくいが、不審な奴らがこんな時間に近付いてるのは確かなのだ。

それに対応するのが俺一人ではいざという時に心もとない事この上ない。

寝ている二人には悪いが今回は無理にでも起きてもらおう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そうしてテントで安眠中の二人を起こしてきたわけなんだが、


「「……………」」


二人とも超眠そうである。瞼が今にも閉じてしまいそうだ。

一応自分で立っているものの、頭が微妙に傾いてるし。

しかしヤシャはともかく真面目そうなマルクのこんな表情を拝む事になろうとは。

中途半端な睡眠が返って拙かったか?


「ふ、二人とも大丈夫か?ちゃんと起きてるよな?」

「ああ……、うん………」

「安心しろ……わが軍はあと十年はzzz」

「寝んなヤシャ!?ほらマルクも寝ぼけてないでお願いだから!!?」

「「グー…」」

「うぉーい!!?」


体を揺すりながら二人に呼びかけるも芳しい返事は返ってこない。

そんな事やってる間にも相手集団が着実に近づいて来てるというのに、恐ろしいまでのこのグダグダな体たらくの俺達である。

気配との間の距離も、実はもうそろそろ視認できそうなくらいにまで狭まってきている。

………もうここまできたら今更どうしようもない。

2人がこんな状態だ、相手がどんな目的であれ敵意を持っていない事を祈るしかない。


俺がそう覚悟を決めた矢先、前方からガサガサと草をかき分けるような音が。


「っ」


手にしていた金槌を握り直しながら気配達が出てくるのを待つ。

音は時と共に、次第に大きさと近さを増していき相手の接近を伝えてくる。

そして一際大きな音と共に、とうとう三つの影が俺達の前に飛び出してきた。

火の明かりに照らされてあきらかになったその姿は、


「………」

「あ………」

「グルルル…」


中学生くらいの男女のペアとそれに従う一匹の灰狼グレイウルフだった。

男の子の方は構えてはいないものの槍を両手に保持しており、女の子は片手にナイフ?らしきものを持っているがこちらも構えてはいない。

敵意といった類のものは今の所感じられないな。なんか茫然としてるし。

ただ彼らの足元にいる灰狼は唸り声を響かせ、明らかにこちらを威嚇していた。


「「「……………」」」

「ガルルル……」


俺と彼等。どちらも驚いたように互いを見ながら何も喋ろうとしない。

そんな空間にただ一つ、灰狼の声だけが響きながら時間が過ぎて行く。

…………って黙っててどうすんだよ俺。


「……えーと、その、こんな時間にどうしたんだ?」

「ーーーあっ、す、すいません!こんな時間に突然」

「ご、ごめんなさい……」


俺の声に反応してか、二人からハッと慌てるような返事が返ってきた。

そんな相手が動揺している姿を見たせいか、思わず先程よりも警戒心を下がっていた俺は構えた武器を下ろしながら慌てた様子の2人に対して、さらに話をつづける。


「いや、そんなに謝らなくてもいいんだがな。………こんな時間にこっちに来たってことは、俺達になにか用があったんだろ?」

「……は、はい。そうなんです。あ、俺はシルトっていいます。こっちはナオ」

「な、ナオっていいます。この子は相棒のガーちゃんです。ガーちゃんも挨拶して」

「グルゥ……」


シルトとナオ。

そう言って二人はお供の一匹と共に名乗りながら俺達に向かってペコリと頭を下げた。




終わり方が中途半端過ぎる……。

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