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page 37

「知ってるって、装飾武器が出回ってるって事か?」


ヤシャから出てきた台詞に、俺は少しばかり驚いてしまったが余り動揺はしなかった。

そもそもこのゲームにいる大体の生産者は戦闘を行っている俺とは違い、ゲーム内で過ごす時間を大きく使って生産活動を行っている。

当然生産補助のスキルだって取っているだろうし、俺よりもスキルのレベルだって高くなっている筈だ。


ただ先程ヤシャがコレに『似ている』という表現を使った事が少々気になった。

いったいどんな物を見たんだろうか?


「俺が見たのは知り合いの生産者が作った物で、それにこの狼の顔と似たような飾りが付いてたんだ。そいつが作ってたのは弓じゃなくて剣だったけどな」


「剣か、……その剣と魂弓でなんか違いってあるか?見た目だけでもいいんだが」


「う~ん違いねぇ。顔の形が少し違うのと顔にある石が無かったのと、あとはこの弓みたく武器自体が変化したりはして無かったな。性能は武器が違うから一概には言えないけど、剣としては結構高めだったぜ」


武器の変化は無しか、それに魂石を使ってる訳でもない。

変化や魂石についてはまだそこまでいってないってだけかもしれないが、ヤシャの様子を見る限りじゃ装飾ではないみたいだな。何か別のスキルか?

ヤシャには装飾した武器を見せた事もあるし、もしかしたらその武器の製作者から何か聞いてるかもしれない。

ま、聞いてるにしろそうでないにしろこれ以上聞くのはアウトだな、どうせ聞いてもヤシャは教えてはくれないだろうし。


こういう隠してあるスキルの情報は掲示板でも未だに余り書き込まれてはいない。

そういうスキルがあるよ、位は書かれているが入手方法については今の所書き込んでる人はいないだろう。

少し前までは詳しい情報を要求する人もいたがその度に他の人に結構叩かれていたおかげか、現在はそれもかなり沈静化している。

いつかはどんどん広まっていく事ではあるが、やはりこの類の情報は生産者としての優位性に関わってくるので公開要求には他の生産者達もどうしても過敏になるのだろう。

俺としても『あるのは書いてるんだから、後の事は自分でなんとかするべき』だと思っているので今の掲示板の空気は好ましい物だ。それがこのゲームの楽しみの一つだと思うしね。


「そいつはまだそれを外に出す気はないらしいから、市場に出回るのはまだまだ先になるだろうな」


「一度実際に見てみたかったけどそれなら仕方ないか」


「下手に周りに見せると勘ぐってきたり粘着したりして来るのがたまにいるからな。ゼンも気をつけろよ」





「ほら二人とも、話すのもいいけどさっさと進まないと時間ばっかり過ぎてくよ!!」


マルクの声が聞こえる。

前を見るとマルクが先に進んでいる、どうやら話している間に歩くスピードが落ちていたらしい。

ヤシャにはまだ聞きたい事があったんだが、マルクを待たせるのも悪いしな。

ま、急ぎでも無いしこの話の続きはまた後にしても大丈夫だろ。

それよりも今は先を急ぎましょうかね。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ハッ!!」


気合一閃、ヤシャの手によって一体の大きなトカゲがズシャッ!!という音を立てて切り裂かれた。

体から力が抜け、その場に崩れ落ちる。

倒れたトカゲは最後に弱弱しく一鳴きすると今度こそ動かなくなった。

だがヤシャはそれを見ることなく体制を整え直すとそのまま次の敵に突っ込んでは斬りつけていく。

そこには数体のトカゲが待ち構えていたがヤシャにはまるで止まる気配がない。

このままではヤシャは一対多での戦闘となり、不利となってしまう。

だが---、


ドスッドスッ!!

その音と同時に一体の頭部に二本の矢が生えた。


そのヤシャの後方からモンスター目掛けてマルクの放った矢が飛んでいく。

矢は風を切り、ヤシャが斬りつけている相手とは違うモンスターに次々に命中、その度にモンスターの体に刺さる矢の数を増やし続ける。

当然攻撃されたトカゲ達は近くのヤシャではなく自分を攻撃したマルクへと進路を変更、攻撃を加える為にその見た目に反した速さで接近してきた。その数は三体。

だがその間にもマルクの攻撃は続き、順調にトカゲ達の体に矢を突き立てていく。

モンスター達もそれにもひるまず近づいてきたが、思いの他高い矢の攻撃力にとうとう耐え切れずに二体ほどが地面に伏してしまった。

残った最後の一体はさらに接近、自らの攻撃範囲にマルクを捉えようとする。

すると突然、マルクからの攻撃が止まり


ドゴォォッ!!!


横からの突然の攻撃、その衝撃で体が横に吹っ飛んでしまった。

近づくまでにダメージを受けていたトカゲにその攻撃に耐え切るだけのHPは残っておらず、最後の一匹もマルクに辿り着く事無く倒れ伏した。


攻撃を加えた俺はトカゲが動かないのを確認した後、ヤシャの方に顔を向ける。

回りのモンスターは皆地面に体を転がしており、動いている個体は確認出来なかった。

ヤシャ本人は剣を鞘に納めながらこちらに寄って来ている。

見た感じダメージを受けた様子もない、どうやら向こうも無事終わったようだ。


こうして池に来てから11回目の戦闘が終了、俺たちは報酬である素材の剥ぎ取りに取り掛かった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


剥ぎ取りを終えた俺たちは、辿り着いた『静寂の池』の回りを適当にぶらつきながら進んでいた。

ここの周辺は先ほど遭遇したトカゲ、グリーンリザードのような爬虫類系やスライムのようなモンスターが多く出現するフィールドだ。

そのせいかここに来てからその系統の素材が大量である。

これは戻った時のアイテム製作が捗りそうだ。

特にスライムから取れるアイテムは欲しいと思っていたのでラッキーである。

三人での探索は収集も一人の時と比べて楽に行えるから固定パーティーを組んだのはやはり正解だった。

アイテム採取の時してた周囲の警戒もしてくれるから集中できるしな。


「どうだマルク、ここまでの魂弓を使った感じは」


歩きながら弓を渡したマルクに感想を聞いてみた。

後で聞いた方がいいのかもしれないが、作った者としてはどうしても気になってしまう。


「かなりいいんじゃないかな。SEのおかげで元々高めの攻撃力が数値以上に増えてるし、取り回しも見た目程悪くない。正直思った以上に使えてるよ」


おお、中々の高評価だな。

俺も剣も使うマルクが装備するには取り回しがきついと思って少し不安だったんだが、案外大丈夫そうだな。

性能についてはそんなに心配してなかったな、SEもあったし。


あとこのSEはヘルプによるとソウルエフェクトの略らしい。

というかヘルプに出す前に発見した時にまず画面として表示してくれ。わかり辛いよ。

あ、そういえば


「二人とも戦闘スキルってどれくらいレベル上がったんだ?そろそろ進化させられるんじゃないか」


そんなことを二人に聞いた。

戦闘系の武器スキルはLv40到達するとさらに細かい分類に分岐していく。

二人の武器の場合だと剣は長剣と短剣、弓なら長弓と短弓となる。

ちなみにこの情報は次の町発見のメールが配布された後に公式ページにて公開された物で、この二つ以外にも最初に取得できる武器の分岐先についても明かされていた。

これも特殊な奴は隠されてんだろうなぁ。

………あと金槌の分岐は出てなかった、てかそもそも進化先自体が書かれて無かった。

これは隠されているだけか元々そんな物は存在しないのかは不明である。


「ん?あ、ああスキルの話ね。俺は長剣にするつもりだよ。どう進めるかは考えてないけど」


「僕は長弓かな。剣スキルはもう少し上げる必要があるけど、まずは小剣にしようかなって考えてる。あくまで接近戦用だし弓と交互に使うことを思うとね」


ん~、成程そうなるかー。

二人とも選択先があっていいなぁ。

俺の金槌なんて…………やめよう、これ以上はただ落ち込むだけだ。

とりあえず話を変えるとしよう。そうだな、たとえばーーー


「どうしたんだヤシャ。さっきから何気にしてんだよ」


どうもどこか挙動不審なヤシャの事とか。

さっきから黙ってちらちらとどこかに視線を送っていたから気にはなっていたのだ。


「いや、なんていうかさ。俺の気の所為かもしれないんだけどさ」


「?」


ヤシャがガリガリと頭を掻きながら、小さな声でこう言った。




「…………………俺達、今だれかに尾行されてないか?」







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