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page 1



AROの開始当日、俺は開始5分前の9時55分の時点で全ての準備を終えて最後の確認を行っていた。接続と先日とってきた自分の身体データの入ったチップを入れてあるかを確認した後、メットを装着してベッドに横たわりその電源を入れる。

するとメットに着いているバイザーの隅に現在の時刻である9時59分40秒が表示され、機械的な男性の声が聞こえてくる。



ーーVRメットの装着、及び身体データを確認しました。サービス開始まで残り20秒です。少々お待ちくださいーー



俺は少々の緊張を感じながら、その時を待った。

そしてついに…



ーーシステムの接続を確認。問題がなければスタートを宣言してくださいーー



「スタート」



ーー宣言を確認しました。ダイブ、スタートしますーー



そんな音声を最後に、俺の意識は暗転していった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ここは……」


気が付くと、俺は暗い部屋にいた。

壁はかろうじて見えていたが、天井はどんなに目を凝らしても全く見えなかった。たぶん、存在しないのだろう。

と、そんな風に上を見上げていると何かが落ちてくるのが見えた。


それは、一冊の本だった。

どんどん下に降りてくるそれは、地面に近付くにつれて落ちるのをやめてフワフワ浮かびながら俺の前に止まった。


「なんだこれ?かなり古びてるみたいだけど…」


そう言いながらその本に触ろうとすると、突然声が響いてきた。


ーーここは問いの間 貴様自身を示す場所ーー


ーーまず、貴様の名を示せーー


その渋い男の声に最初は少々ビビっていた俺だったが、その質問を聞いてこれがキャラの設定の場だと気が付いた。


「俺の名前はゼン」


ーーゼン それが貴様の名かーー


そうだ、と答えると本の表紙によくわからない文字が刻まれる。終わると同時にページが捲れだし、ある白紙のページで止まった。


ーーでは次に 貴様が欲しいものを8つ示せーー



その声と同時に本の横に文字が浮いている様に見えるスクロール画面らしきものが出てきた。内容からするとスキル選択らしい。


「しかし案内の声なのになんでこんな説明不足で、しかも偉そうなんだよ…」

なんて事をブツブツ呟きながら、どんどんスキルを選択していく。

選択したスキルの文字が次々に本に吸い込まれ、全て本に入るとまたページが捲れだした。



ーーでは次に これが貴様自身で相違ないかーー



声がするとスクロール画面が出現して、村人っぽい服を着た俺の姿が表示された。その横には変更と完了の文字が浮いている。俺は変更の文字を選択。



ーーでは 貴様の正しい姿を示せーー



新たに現れた画面を操作、髪の色を灰色に、肌の色を浅黒くする。そして完了を選択。



ーーこれが貴様の正しい姿かーー



画面に何も出ていないため「そうだ」と声に出して伝える。とたんに画面から俺の姿が消え、画面から光が出て本に吸い込まれた。 光を吸い込んだ本は表紙をパタンと閉じた。



ーー最後に問う 貴様の示したものに誤りはあるかーー



ない、と返答。



ーーこれで問いは終わりだ 貴様の今は記録されたーー



声が途切れると本が強い光放ち始め、しかしすぐに収まった。反射的に翳していた手を下ろすとそこに本は既に無く、替わりに両開きの扉が存在していた。



ーーその扉の向こうに貴様の望む新しい『世界』がある 扉をあけるがいいーー



その言葉を最後に声が途切れる。俺は扉の前に立ち扉に手をかけた。扉を開けて外に出ようとしさ瞬間ーー



ーー貴様の旅路に神々の祝福が在らん事を祈っているぞーー



ーふと、そんな声を聞いた気がした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




外に出てみるとそこには大量の人がいた。


「うげ、さすがに初日だとスゴいな」


こうなるだろうと予測出来ても実際に目の当たりにするとかなりキツイ光景である。

このまま眺めていたら酔ってきそうだ。


(とっとと2人と合流して、違う所にいこう…)


そう思いまず秀樹に連絡しようとした矢先、頭の中で音が鳴り出した。どうやら誰かが連絡してきているらしい。 まあ今現在、俺の連絡先を知っている奴はここに2人しかいないのだが。

音声でメニュー画面を呼び出すと、画面に体力を示すHP(ヒットポイント)、魔力量を示すMP(マジックポイント)、スタミナを示すSP(スタミナポイント)、体の水分量を示すのWP(ウォーターポイント)が表示される。

そのままメニュー画面を操作して通信画面を表示する。

発信者はキーラス、感じからして秀樹の方だろう。

ボイスチャットを開く。


「もしもし、秀樹か?」

『おー繋がった。 誠今どこにいる?』

「今さっき広場に出た」

『其処だと人混みスゲーから場所変えて集まろうぜ』

「そうだな。何処行けばいい?」

『じゃあ、街の北にある教会に集合で。メニューで街のマップ見れば場所はわかると思う』

「わかった。姉ちゃんは?」

『こっちから連絡いれとく。 んじゃまた後でな』

「ああ」


秀樹とのチャットを閉じる。


「さて、目的地も決まったし、さっさとこの人混みから脱出しますかね」


俺はそう言いながら、広場から移動を開始した。






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