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page 23

また短めです。

俺は最初の町であるエントマ、その中央広場にあるベンチの一つに腰掛けて深い溜め息をついていた。


正体不明のモンスターによってこのゲームが始まってから初めての死を迎えた俺は、視界が暗転した次の瞬間、エントマの町の中心の広場にいた。

分かりやすく言うなら、俺がこのAROで初めて降り立った場所、と言った所だ。

このゲームでプレイヤーが死亡した場合、最後に登録した町の中の特定の場所、もしくは自分のホームに戻される。

俺は自分から登録した事はないが、最初は全てのプレイヤーがここに登録されているので、俺もそれに違わずここに戻されたのだろう。


「しかし、それにしてもさっきの奴はヤバかったなぁ…。あの森であんなの出るなんて聞いてねーよ」


思わずそんな愚痴みたいな台詞が口をついて出てくるが、それは仕方ない。何せ何も出来ないまま一方的にやられたのだ、ボヤくぐらい許されるだろう。


俺は今回クエストをこなすにあたって情報集めは十分に行ったつもりだったが、調べた情報にあんなモンスターが出るなんてのは無かった筈だ。

そもそもあんな強いモンスターの情報なんて見た事が無い。あれだけインパクトのある外見だ、見かけたら何かしらの情報が出回っていると思うのだが………俺の見落としか?


まあいい、奴についての考察は後にしよう。今度ログアウトした時にでも調べればいいだけの話だ。

今はそれよりも気になる事が俺にはある。


それに気付いたのは、死亡した時に受けるペナルティを確認しようとメニューを開いた時だった。

ペナルティの内容は一定時間の能力半減とスキルレベルの減少、死亡時に所持していた装備品以外のアイテムの半分のランダム消失である。

現在のアイテムを確認したところ、やはり今日集めたアイテムもかなり減っていたがそれでも其々14前後の数が残っていた。

代わりに買っておいた食料やポーション類などがほぼ全滅状態だったが、これらには金をかけてないので特に問題無い。


俺が気になる事とは死亡直後の俺に変な状態異常がついていた事だ。

普通なら、死亡した時点でプレイヤーの状態は元に戻るのだが、今の俺は【呪い】の状態異常が付与された状態なのだ。

この【呪い】はプレイヤーのステータスのいくつかをランダムで減少させる状態異常で、今の俺の場合はHP最大値、魔法防御の2つが減少している。

これもあのモンスターのせいなんだろうな、たぶん。


まあ何はともあれ、目標数をクリアして無事(?)エントマに帰還出来た訳である。

道中の色々で思う所もあるが、アイテムをドガロに届ければ今回のクエストは一応無事完了となる。こちらを先に片付けてしまおう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「いらっしゃ、っておうゼンか。頼んだ物は採ってきたのか?」


店の中に入るとカウンターのドガロが直ぐ様声をかけてきた。

てかなんかいつもより明るいなドガロの奴、いつもはもっと面倒くさそうに店番してる癖に。

珍しく声なんかかけるから店内にいる人達がびっくりしてるじゃないか。


「ちゃんと採ってきたよ。しかし今日なんか元気そうだな」


そう言いながらイベントリから今日集めたアイテムをドガロに渡す。


「………確認した、ちゃんと数は揃ってるようだな。いやなに、ちょっとあってな。そういうお前さんは……なんか具合悪そうだな、顔色悪いぞ」


具合悪そう?ってそうか、


「今ちょっと呪われてんだよ、変なモンスターにやられてさ」


「呪われた?一体どんな奴に?」


俺はドガロに森で遭遇した奇妙なモンスターについて話してみた。

ドガロは目を閉じて考え込みながら俺の話を聞いている。


「って感じなんだけど、なんか心当りあるか?」


「………いや、特に思い当たるモンスターはいないな。そもそもこの町の周辺はこの大陸の中じゃ穏やかで、呪いをかけるような強いモンスターは出ない筈だぞ。お前が今日行った森だってそうだ」


う~ん、ドガロも知らないのか。ホント何なんだろねあのモンスター。


「まああのモンスターについては後で調べるからいいや。それよりクエスト報酬なんだけど」


「ん?ああ、昨日も言ったがアレを渡せるのは明日店を開いてからだな。だが来るなら一応客の居ない時間帯の方がいいな。その方が俺も楽だ」


「わかった、あとボーナスについては」


「わかってる、忘れとらんよ。そうだな、この量ならこの3つから選んでくれ」


ドガロはそう言って何か書かれた紙を差し出してきた。

手に取るとクエスト受諾の時と同様に目の前に画面が表示される。


 この3つの内1つを選択してください。


 ・余剰採集分を鉄購入時に割り引く

 ・道具屋商品2割引き券×10

 ・絵本「せかいのはじまり その2」

                   』


「(おおっ、まさか絵本がここで出るとは。でもなんでドガロが絵本なんて持ってんだ?」


最初の2つはともかく、最後の絵本は意外だったな。まさかこの厳ついおっさんから絵本が出てくるとは思わなかった。しかも探してた絵本の続編だ。

なんでドガロが持ってるのかは疑問だが、こいつは運がいい。

金額的には上2つの方がいいんだろうが、折角だし今回は本にしとこう。

内容も気になっていたしな。


「じゃあこの絵本をしとくよ」


「絵本だな。OK、こいつも次来た時に一緒に渡せるように準備しておこう」


「一応昼前には来るつもりだから、それまでにちゃんと用意しといてくれよ」


そう言って俺はドガロの店を後にした。

なんか他のプレイヤーからの視線を少々感じたが、余り気にしないようにしとこう。


さて、この後はどうするか。

死に戻りのペナルティの事もあるが、今かかっている呪いの状態異常は一日経たないと治らないから今日は外には出らんないし。

俺には解除できる道具も魔法も無いからな。自然に治るのを待つしかない。


「外に出らんないなら………取り敢えず調べものでもするか」


そう思い立った俺は図書館へと足を向けた。

俺が読める範囲で見つかるといいんだがな。

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