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page 21

今回は導入なので短めです。

「鉄なら無いぞ、売り切れだ」


森の奥地での狩りからゲーム内時間で数日たったある日。

道具屋のカウンターにて、この店の主人であるドガロから放たれたその一言により俺の心は木っ端微塵にされていた。


ここ最近は支出を抑えながら武器と防具を作っては売り作っては売りを繰り返して、そして今日ようやく必要な量の鉄を買えるだけの資金が貯まり、武器の更新が出来ると浮かれていた所だったのに。

なのにここまで来て売り切れとは。

イッタイドウユウコトナノ……?


「な、なんで売り切れ……?」


「昨日数人組の集団が来て、そいつらが売ってた鉄全部を買い占めていったんだよ」


「なんだそりゃ……、そんなのありかよ…」


上がったテンションを叩き落とされマジに凹む俺。

この手のゲームだと買い占め等によるアイテムの独占は割りとある事だと聞いてはいたが、まさかこんなに早く起こるとは思わなかった。


「買い占めたのってどんな奴等だったんだ……?」


「よく覚えてねぇなぁ…、なんせ来る奴等は毎回違う顔ぶれだし。ただ、買い占めてく奴等の行動から見るに2つのグループがあるみたいだったな」


「2つのグループ?てか、買い占めってこれが初めてじゃないのかよ…」


「まあな。ウチの仕入れは大体2~3日に一回の頻度何だが、ここ2・3回の仕入れはその日になると店を開けた途端、そいつらが店内になだれ込んできて買い占めていくってのが続いてる。んで、なんで2つのグループ分けできてんのかって言えば、そいつらの態度と服装だな。大体いつも生産・戦闘混合組と生産一色組の連中が店内ですれ違う度に互いに睨んだりしてんだよ。とてもじゃないが、あれを仲が良いとは言えんよ」

奴等がいるだけで店の空気が悪くなるんだよな、とドガロは呟いた。


相当露骨にぶつかってるみたいだな、そいつら。

今の話を聞いた限りじゃ、どうもお互いの事はある程度知ってるみたいだけど。


しかし困った事になったな。鉄は欲しいが、手に入れようとするとそいつらと間違いなく鉢合わせする事になる。

どういう奴等か知らんが、ハッキリ言って余り関わり合いになりたくない。

トラブルの匂いがぷんぷんしてくる。


ったく、ようやく金も貯まったっていうのにその直後に買い占めが起こるとは、全くもってついてない。

思わずため息が出そうだ。



「……………ゼン。おまえさんが、どうしても鉄が欲しいってんなら、売ってやらん事もない」


「なに?」


えっ、どゆこと?

さっき品切れって言ってたじゃん。


「まだ在庫があるのか?」


「ない。が、明後日に仕入れがある。その時にお前さんの分を別に取り置きしておいてやっても良い」


マジか。取り置きって、そんな事出来んのか?

それが出来るなら俺としては有り難い事なんだが。


「いいのかよ、そんな事して」


「別にかまわんさ。俺は元々アイツラの事は嫌いだし、そんな奴等のせいでアイテムがお前に回らないってのは、気に入らないからな。ただし条件を2つ付けさせて貰うぜ」


「条件?」


「そうだ。まず一つ目の条件は値段だ。取り置きした鉄は1割程値上げさせてもらう」


「1割!?」


「問題あるか?」


い、1割か~。

う~ん、キビしいと言えばキビしいが、一応ぎりぎりなんとかなるレベルには収まってはいるな。

元々ある程度資金に余裕を持たせていたので、宿代や食費に食い込む事も無いだろう、多分。


「いや、大丈夫だ。次の条件は?」


「2つ目は俺が頼む仕事をこなしてもらう、言っちまえば俺個人からのクエストだな。鉄の取り置きはこのクエストの報酬って事にしとけばお互い面倒も少ないだろう。今依頼書書くから待ってろ」


ドガロはそう言うとカウンターの下から紙を取り出して、それに文字を書き始めた。


「(しかしクエストか。NPCの人格を確認した時からいつか来るとは予想してたけど、随分と唐突だったな)」


まあ、クエスト自体は大したものじゃないだろうな。

報酬も取り置きってだけだし。

俺がそうこう考えている内にドガロが依頼書を書き終わったようだ。


「ほれ、これが今回の依頼だ。説明すんの面倒だから自分で読んでくれ」


そう言って差し出された頼書を手に取る。

すると目の前に画面が出現する。

書かれてるのは………どうやらクエストの内容についてみたいだな。

えっとどれどれ、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


NPC『ドガロ』からクエストが発生しました!!


 クエスト名:

   道具屋の急な頼み事    

 依頼主: 

    ドガロ

 依頼品: 

  ニム草の根 及び イガグルミ

 報酬:

  鉄素材の取り置き

 期日:

  受注から3日後

 クエスト説明:

  エントマの北にある森に自生している

  ニム草の根とイガグルミをある程度の

  数を集めて欲しい。

  それぞれ最低7つ程あればいいが、

  これらは保存がきくのでそれ以上の数

  を採集してきた場合は報酬に幾らかの

  ボーナスも付けよう。

  ただし、ニム草の根は出来るだけ傷を

  つけないように頼む。  

  

 このクエストを受けますか? Yes/No


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


採集クエストみたいだな。

北にある森か………草原を越えた所に小規模な森があるって話が有ったな。多分そこだな。

確かモンスターの強さもそれほどじゃないらしいし、俺一人でもなんとか大丈夫だろう。

出来高でボーナス有りなら鉄の増額分も補填出来るかもしれないし、特に問題も無い。


「どうすんだ、受けるのか?」


「………わかった、この依頼受けさせてもらうよ」


俺がクエストの受諾を伝えると、自動でYesが選択されて画面が切り替わる。

次の画面に書かれていたのはクエスト受諾の文字と再確認の仕方だ。

どうやらメニューからクエスト内容は見れるらしい。


「OK、契約成立だ。ただし期日はきちんと守れよ。でないと他のやつに売っちまうからな」


「了解、気を付けるよ」


俺は笑いながらドガロにそう返した。



こうして、唐突に、何の前触れも無く、俺の初クエストは開始される事となった。


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