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更新が遅れてすみませんでした。
なぜか筆が止まってしまい、全く進みませんでした。
次回から戻していくつもりです。
町を出発した俺達は順調に歩を進め、現在森の中を進行していた。
途中グレイウルフに何度か襲われたが、マルクの弓矢による射撃で一方的に攻撃して撃破、特に問題も無く処理出来た。
ブラックスパイダーにも遭遇したが、奴等はグレイウルフよりも感知範囲が狭い様らしく此方が先に気付けたので戦闘は避ける事が出来た。
森に入ってしばらくした頃、先頭を歩いていたマルクが突然足を止め、メニューを開いて何かを確認し始める。
「どうしたんだ?」
「ちょっと現在位置の確認を。っと、どうやら目的地に着いたみたいだね」
「分かるのか?メニューには町以外の地図は表示されないはずだけど」
「確かに地図は無いけど今いる場所の名前は出るんだよ。見てみなよ」
マルクに促され、メニューを呼び出して地図の項目を開く。
案の定、画面は真っ黒になっていたが隅に横書きで『深緑の森(深部)』と表示されていた。
どうやらメニューにフィールドマップが表示される事は無いが、今自分のいるフィールド名は出る様だな。
フィールド名が分かるだけでも大分有難い。
これなら間違えて危険なエリアに入っても、そこから出る手懸かりくらいにはなりそうだな。
「フロアが変わると外観が少し変化するから、気が付いたら確認しておくといいよ。あと今から森の奥に入る訳だけど、誰を先頭にして進む?」
そうだな……。
ここに来るまでのヤシャの話だと、ヤシャの戦闘系スキルは剣と水魔法で盗賊とかは持ってないんだったな。
「なあ、ヤシャの魔法の感知範囲ってどれくらいなんだ?あれも遠距離攻撃だから弓みたいに特別広かったりするのか?」
弓のスキルは他の武器と違ってかなり広い感知範囲が備わっている。
マルクが以前俺との距離をギリギリに保ちながら追尾出来たのもその広い感知範囲のお陰だと本人からも聞いた。
「いや、他の武器系と対して変わらないな。ハッキリ言って敵の感知には期待出来ないぞ」
「僕は一応近接用に剣スキルも取ってるけど、どうしても弓が優先になっちゃってね。あまり使って無いんだよ」
ヤシャに続いてマルクがそう言った。
つまりヤシャは敵の捜索が出来ず、マルクは近接には不安がある。
という事は俺が先頭になるのか。
まあ現状俺に出来る事といったら敵に近づいて木槌で殴るぐらいしか無いし、丁度いいか。
盗賊持ちだから察知範囲もそれなりにあるし、敵に察知される前に気付けるから探索もしやすいだろう。
それぞれの意見を纏めた結果、先頭から俺、ヤシャ、マルクの順で進む事となった。
先程よりも少々薄暗くなった森の中を列を組んで進んで行く。
俺は獲物の気配を探りつつ、列の先頭を歩く。
今俺達が歩いているのは森の外側から続いている道だが、それも奥に進むに連れて幅もやや細くなってきていた。
基本、このゲームのフィールドには制限というものがないため、道になっていない所でもあっさり通れてしまう。
しかし、地図を持っていない今の俺達がそれをやってしまうと簡単に道に迷ってしまうのだ。
それでも西の草原や森の外側の場所ならある程度、遠くまで見えるのでなんとか道に戻れるのだが今俺達がいる場所は木々の密度が高くて余り見通しがいいとは言えない。
その上、この森自体もかなりの広さがあるらしい。
つまり、森の奥で一度道を見失うと、あっさり遭難出来てしまう仕様なのだ。
最初の町近くの森でこの広さがあるのは嬉しいが、実際に遭難するのは勘弁したい。
とはいっても今歩いている細くなった道も戦闘するには十分な幅はある上、モンスターも向こうから頻繁に出てくるらしいので、今の段階で態々道から外れる必要もないのだが。
因みにこの情報の元はマルクだ。
どうもβテスト時に地図無しで突っ込んで遭難、森をさんざんさ迷い歩いた挙げ句、最後には飢えて町に死に戻った経験があるという話だ。
俺への尾行といい、マルクには意外に無茶をする所があるらしい。
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森の奥地に入ってから十分前後経過した頃、
「っと、二人共ストップ。見つけたぞ」
俺はそう言って足を止めた。
頭の中で感じるのは馴染んできたモンスターの気配。
俺が探知した気配の数は4つ、どれも同じ方向からだ。
森に入る前にマルクが言っていた様に群れなのかもしれないが、そのグループには俺にとって不思議な点が一つあった。
「なあマルク、違うモンスター同士で群れを組む事ってあるのか?」
「何で今そんな事を?」
「いや、モンスターが複数いるみたいなんだけどな、一匹気配のデカさが違う感じがする奴がいるんだよ」
俺の言葉を聞いたマルクは訝しげな表情をしながら此方に近付いてきた。
マルクは俺の前に立つと気配のする方に視線を向ける。
「………ダメだ、ここからじゃまだ目視出来ない。もう少し近づかないと。でも、コイツってもしかして……」
気配のする方向を見つめながらマルクはそう言った。
確かマルクは【遠視】スキルを持っていたはずだが、それでもこの森では見えないのか。
しかし、マルクは何か知っているようだが。
「どうしたマルク、何か心当たりでもあるのか?」
会話を聞いていたヤシャが考え込んでいるマルクにそう声を掛けた。
その問いかけにマルクは顔を上げて返事をした。
「ん?ああいや、ちょっとね。思い当たる事があるんだけど確信が無くて。取り敢えず近くに行って相手を確認しようか」
「……そうだな、二人と違って俺にはまだ敵の気配も感じられんしな」
「じゃあここからは隠密を使って行こうか。あと直ぐ目視できる様に僕が先頭になるよ。代わりにゼンが後ろを頼む」
マルクと俺が列の順番を入れ替え、その状態から俺達3人は隠密を発動しようと集中する。
「……いくよ」
マルクの言葉で隠密を開始する。
フワッと体が軽くなる感覚、それと同時に今まで感じていた二人の気配が変化する。
以前俺を尾行していた時のマルクと同じ感覚だな。
さっきよりも気配がやや小さいというか薄い感じだ。
ただ以前とは少し違い、マルクの気配は以前よりもハッキリと感じられる。
それがただ近くにいるからなのか、俺のスキルが上昇したお蔭なのかはわからないが。
どちらにしても、お互いの姿を見ても隠密が解けて無い事から、マルクの考えは正しかった様だ。
俺は二人の様子を伺ってみた。
ヤシャは変化した俺達の気配に少し戸惑っている様で少しソワソワしている。
マルクも戸惑いが顔に出ているがヤシャ程ではなく、どちらかというと、その様子はホッとしていると言った方が正しい。
そんな様子のマルクが口を開いた。
「………どうやら成功したみたいだね。失敗しなくて良かったよ」
「しかし話には聞いてたけど、実際やってみると気味が悪いな。目の前に居るのに気配がさっきよりもかなり薄いっていうかなんていうか、相手が透けてる様に感じるな」
ヤシャのその意見には俺も同感だな。
何せ目の前に人がいるのに気配が感じにくいっていう現実にはない変な感覚だからな。
ただ付け加えるなら姿が見えない方が格段に薄気味悪いって事か。
姿形が見えない癖に気配の薄いナニかが確実に自分の後をついて来てるのがハッキリ分かる。
あれはホントに幽霊が後ろにいるって言われても否定できないレベルの気味の悪さだったな。
マルクが気にしそうだから口には出さんが。
「そういや二人共隠密ってどれくらい上げてるんだ?言うのがいやなら別に言わなくていいんだけど」
「僕は別に構わないよ。僕は今は28、因みに前に会った時は20ぐらいだった」
「俺は今19だな。ゼンは?」
「俺は23。でもやっぱりヤシャよりマルクの方が高いのか」
マルクはヤシャと比べて気配が薄いからそうじゃないかと思ったが、どうやら当たりだったようだな。
二人にこの事を話すと驚いていた。
二人からすると俺ともう一人の気配は同じくらいに感じるらしい。
まあ、二人と違って俺からすると比較対象のレベルの差が大きいからな。比べて分かりやすいのは当然だろう。
何はともあれ、隠密の同時発動の検証もそこそこに俺達は探知したモンスターのいる方角へと向かった。




